徳楽寺 (伊賀市)

徳楽寺について

徳楽寺（とくらくじ）は三重県伊賀市にある真言宗御室派の仏教寺院で、山号を塩岡山（しおおかざん）、院号を薬師院（やくしいん）と呼びます。寺の本尊は薬師如来であり、この像は秘仏として大切にされ、33年ごとにその姿が公開されます。建立以来、長い歴史を持つこの寺院は、地域の信仰の中心的な存在となっています。

歴史

徳楽寺の創建に関する伝承によれば、保延6年（1140年）頃、藤原氏が京都東山に講善院を設立し、新居荘の田20町歩を寺社領とした際、今の場所に薬師院と呼ばれる堂が建てられたとされています。その後、室町時代（1390年～）の舜栄法印が現在の徳楽寺として開山したといいます。

近世の歴史に目を向けると、天正9年（1581年）には第二次天正伊賀の乱が発生し、織田信長の軍により寺の堂宇が焼かれました。この際、本尊の薬師如来は空へ飛び去ったという伝説が残されています。しかし、その後村人たちが東高倉の川辺で、流れの中に沈んでいた薬師如来を発見したと言われ、この場所は現在も「塩渕」と呼ばれるようになりました。その後、信者たちは薬師如来に塩断ちを願うことで、奉納される塩が白い丘のように積み上がったと伝えられています。この出来事が、寺院の山号「塩岡山」の由来となりました。

文化財

徳楽寺は文化財としても注目されています。平成元年（1989年）には、三重県の指定有形文化財として「絹本著色如来荒神曼荼羅図」が指定されました。この美しい絵画は、室町初期（1336年～）に制作されたとされ、如来荒神を中心に不動明王や愛染明王が描かれている珍しい作品です。また、伊賀市指定の有形文化財には、「木造黒漆厨子」があり、これは室町期の製作と考えられ、扉の内側には室町期らしい極彩色の四天王の姿が描かれています。

年中行事

徳楽寺では、年間を通じて様々な行事が行われています。1月1日の年越詣と修正会をはじめ、1月21日の初大師や鏡開き、2月3日の節分会など、地域の人々が参加する大切な行事が多数あります。また、8月には施餓鬼法要や地蔵盆、10月中旬には心経講（無縁仏供養）が行われ、仏教の教えを広める重要な役割も果たしています。

周辺の名所とアクセス

徳楽寺周辺には、多くの文化的名所があります。上野城や正福寺、佛土寺、高倉神社などがあり、信仰と歴史を感じることができます。アクセスは、JR伊賀上野駅から西へ徒歩約20分、伊賀鉄道新居駅からは徒歩約15分であるため、訪問もしやすい立地です。名阪国道上野インターチェンジからは国道422号を北上し、その後県道680号を西へ進むことで到達できます。

このように、徳楽寺は地域の精神的支柱として、長い歴史と文化、信仰行事に支えられた寺院です。

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