無門関

無門関

『無門関』は、中国南宋時代の禅僧、無門慧開（1183年-1260年）によって編纂された禅宗の重要な著作です。この書は、禅の修行者が真理に到達するための道標となる公案（禅問答）を集めたもので、禅宗の核心を理解する上で欠かせない文献とされています。

概要

『無門関』は、無門慧開が選んだ48の公案（古則）で構成されています。各公案には、無門自身の批評である「評唱」と、その公案の宗旨を込めた漢詩である「頌」が付されています。これらの組み合わせによって、各公案が多角的に解釈され、読者に深い思索を促す構成となっています。

この書は中国ではあまり重要視されなかったとされ、伝本が途絶えたと考えられていますが、日本では、無門慧開に直接師事した無本覚心が持ち帰った巻本が伝えられています。江戸時代には広く読まれ、禅の修行者だけでなく一般の人々にも影響を与えました。現在流布しているのは、広園寺蔵版に習庵序、表文、禅箴、黄龍三關、孟珙跋、安晩跋を加え、さらに1則を追加した49則からなるものです。これは無門の弟子である宗紹によって編纂されたとされています。

無門がなぜ48則としたのかは明確ではありませんが、第一則の「趙州狗子」は、無門が師から与えられた「犬に仏性はあるか」という公案で、彼が長年その答えを見つけられずにいたところ、ある日、斎鼓の音を聞いて悟りを得たという逸話が残っています。
また、本書には「羊頭を懸けて狗肉を売る」という言葉も登場しており、これは表面と実質が異なることを指すたとえとして知られています。

構成内容

以下は、『無門関』に収録されている各則の題名です。

禅宗無門関（序文）
1 趙州狗子
2 百丈野狐
3 倶胝堅指
4 胡子無鬚
5 香厳上樹
6 世尊拈花
7 趙州洗鉢
8 奚仲造車
9 大通智勝
10 清税孤貧
11 州勘庵主
12 巌喚主人
13 徳山托鉢
14 南泉斬猫
15 洞山三頓
16 鐘聲七條
17 国師三喚
18 洞山三斤
19 平常是道
20 大力量人
21 雲門屎橛
22 迦葉刹竿
23 不思善悪
24 離却語言
25 三座説法
26 二僧巻簾
27 不是心仏
28 久嚮竜潭
29 非風非幡
30 即心即仏
31 趙州勘婆
32 外道問仏
33 非心非仏
34 智不是道
35 倩女離魂
36 路逢達道
37 庭前栢樹
38 牛過窓櫺
39 雲門話堕
40 趯倒浄瓶
41 達磨安心
42 女子出定
43 首山竹箆
44 芭蕉拄杖
45 他是阿誰
46 竿頭進歩
47 兜率三関
48 乾峰一路

各則には、公案の内容を要約した短い頌がついており、それぞれが禅の深い境地を示唆しています。

文献

『無門関』は多くの注釈書や解説書が存在します。

『無門関』（古田紹欽訳注、角川文庫）
『無門関』（西村恵信訳注、岩波文庫）
『無門関を読む』（秋月龍珉、講談社学術文庫）
『無門関提唱』（山本玄峰、大法輪閣）
『無門関提唱』（山川宗玄、春秋社）

これらの書籍は、『無門関』をより深く理解するための助けとなるでしょう。

関連事項

『無門関』は禅宗の重要な文献であり、以下の書籍とも関連があります。

碧巌録
従容録
臨済録
* 景徳伝灯録

これらの文献も併せて学ぶことで、禅の思想をより深く理解することができます。

『無門関』は、禅の真髄に触れるための重要な手がかりとなるでしょう。その難解さの中に、禅の奥深い魅力が隠されています。

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