忍海漢人

忍海漢人について

忍海漢人（おしみのあやひと）は、大和時代に朝鮮半島から日本に渡来した渡来人集団の一つです。彼らは特に鍛冶技術に優れ、現在の奈良県葛城市に集落を形成しました。忍海という名前は、彼らの集落があった地名に由来しています。

起源

忍海漢人の起源は、『日本書紀』に記載されている神功皇后の時代に遡ります。この記録によると、新羅から日本に送られた者が、新羅王からの策略に従い神功皇后に虚言を呈し、帰国することになりました。葛城襲津彦は新羅の使者を攻撃し、多くの捕虜を取って帰国しました。これが、後の忍海漢人を含む集団の祖先とされています。

葛城襲津彦の地元であった奈良の葛城地域では、古代の水祭りの遺跡や武器工房、渡来人の居住跡が発見されており、葛城氏の権力と渡来系集団の関係が示されています。特に、忍海、佐廉、高宮、桑原という地区に住んでいた人々が、忍海漢人の根源とされています。

東漢氏への編入

雄略天皇の統治下では、中央集権化が進み、その影響で渡来人たちは地元の豪族に仕え、最終的には東漢氏や秦氏などに組み込まれて朝廷に仕えることとなりました。忍海漢人たちも台頭した葛城氏の衰退と共に、東漢氏に編入される運命を辿ります。

『新撰姓氏録』によれば、阿知使主が日本に渡来した後、応神天皇にアイディアを提言し、才芸に優れた人々を呼び寄せることを提案したため、忍海漢人たちも帰化しました。このようにして彼らは、日本の歴史において重要な役割を果たしていくことになります。

鍛冶技術者集団としての活動

元興寺の建設

元興寺（飛鳥寺）の建設が587年に始まった際に、忍海漢人たちがその鍛冶技術を用いて建設の一端を担ったことが記録されています。「意奴弥首辰星」と呼ばれる人物がその中心人物であり、鍛冶を担当し、忍海の技術者としての影響力を示しています。

新羅征討計画

聖徳太子の実弟である来目皇子による新羅征討計画（602年-603年）では、忍海漢人が兵器製造のために肥前国に派遣されました。この計画によって名付けられた地名・漢部（あやべ）は、現在でも神社や地名に残っています。忍海漢人が選ばれた理由は、彼らが韓国において既に鍛冶技術を持っていたためと考えられています。

三田首五瀬

文武天皇の時代には、黄金が対馬で採掘されていたことが『続日本紀』に記述されています。大和国の忍海郡から派遣された雑戸の三田首五瀬によって黄金が精錬されましたが、後にこれは五瀬の詐欺であったと判明します。このエピソードは、忍海漢人の活動の多様性とその信頼性にも疑問を投げかけるものです。

結論

忍海漢人は、大和時代の日本において鍛冶技術を持つ重要な渡来人集団であり、多くの歴史的出来事に関与しました。彼らの影響は、技術面だけでなく、文化や政治の中でも重要であり、近代までの日本の社会に深く根付いています。

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