志田林三郎

志田林三郎：日本の電気工学のパイオニア

志田林三郎（しだ りんざぶろう、1856年2月1日 - 1892年1月4日）は、明治時代に活躍した日本の物理学者、電気工学者です。佐賀県（旧小城郡東多久村）に生まれ、日本の電気工学の黎明期を支え、多大な貢献をしました。

生涯

志田林三郎は、幼少の頃から学問に秀でており、特に数学の才能を発揮しました。1872年、工部省工学寮（現東京大学工学部）に入学し、電信技術を学びました。1879年に首席で卒業し、日本初の工学士の一人となりました。

卒業後、逓信省電信局に勤務。1880年からはスコットランドのグラスゴー大学に留学し、ケルビン卿（ウィリアム・トムソン）の下で物理学や数学を深く学びました。留学中には数々の研究を行い、その才能を開花させました。

帰国後は、工部省電信局で日本の電信技術の発展に尽力する傍ら、工部大学校（後の帝国大学）で教鞭を執り、後進の育成に努めました。電気工学の専門家として、電気、通信、磁気、物理など幅広い分野で研究活動を展開しました。1886年には、隅田川の水面を導体として利用した導電式無線通信実験を行い、これはマルコーニの無線実験よりも9年も前に行われたものであり、その先見性が高く評価されています。1888年には、日本初の工学博士の一人となりました。

電気学会の創設

志田林三郎は、当時物理学や土木工学の一部と考えられていた電気利用技術の将来性に着目していました。電気工学の普及と発展を目指し、1888年5月に電気学会を創設しました。逓信省大臣であった榎本武揚を会長に迎え、電気工学の発展に尽力しました。第1回総会では、無線通信、長距離電送、映像音声記録といった未来技術の可能性について講演し、その後の技術発展を予見していたとして、その先見の明は高く評価されています。

早すぎる死

1891年夏より大磯で療養生活を送っていましたが、1892年に麻布の赤十字病院にて36歳という若さで亡くなりました。彼の死は、米国の『エレクトリカル・エイジ』誌でも報じられ、その功績が称えられました。

家族

妻は陸軍少佐・安満伸愛の娘である富子。長男の志田文雄は、日本電気（NEC）の第3代社長を務めました。

栄誉

1886年（明治19年）7月8日 - 従六位
1889年（明治22年）11月29日 - 大日本帝国憲法発布記念章

志田林三郎は、日本の電気工学の基礎を築き、その発展に大きく貢献した人物として、今もなお多くの人々に敬愛されています。

もう一度検索