志貴御縣坐神社

志貴御縣坐神社について

志貴御縣坐神社（しきみあがたにますじんじゃ/しきのみあがたにますじんじゃ）は、奈良県桜井市金屋に位置する神社です。この神社は、古くから朝廷の直轄地であった「県（あがた）」に鎮座する神社の一つであり、式内社（式内大社）として格式の高い神社として知られています。現在は村社となっています。

祭神

現在の祭神は、神社明細帳によると大己貴神です。しかし、『大和志料』では、この地の霊を祭神とし、その他に天津饒速日命とする説も存在します。社名に含まれる「県（あがた）」とは、古代朝廷の直轄地を指し、大和国には高市、葛木、十市、志貴、山辺、曽布の六つの県があり、これらは「六御県（むつのみあがた）」と呼ばれ、各県には御県神社が鎮座していました。当社はそのうちの一つです。

この地域を治めたとされる磯城県主（しきのあがたぬし、のち志貴連）は、『新撰姓氏録』によれば日子湯支命（神饒速日命の孫）の後裔であり、『先代旧事本紀』では建新川命（饒速日命七世孫）または物部印岐美連公（饒速日命七世孫の十市根命の子）の後裔とされています。また、『日本書紀』には、神武天皇東征の際に活躍した弟磯城が磯城県主になったと記されています。磯城県主を事代主神の後裔とする説もあり、太田亮は「磯城彦は即ち三輪氏の他ならず」と指摘しており、この説が正しいとすれば、当社が大己貴神を祭神としていることと関連づけることができます。

磯城県主は、後の大和国城上郡・城下郡付近に勢力を持っていた古代豪族であり、『古事記』や『日本書紀』には、磯城県主葉江らの娘が綏靖天皇から孝霊天皇までの各天皇の皇后になったと記されており、古くからヤマト王権と密接な関係を持っていたことがうかがえます。

歴史

創建時期は不明ですが、天平2年（730年）の『大和国正税帳』には、「志癸御県」の神戸として、城上郡内から租穀1,351束8把が定められ、そのうち祭神料として4束が充てられています。『新抄格勅符抄』大同元年（806年）の牒には、当時の「志貴御県神」に神戸として大和国から12戸が充てられたことが記されています。国史では、天安3年（859年）に「志貴御県神」の神階が従五位下から従五位上に昇叙された記録があります。

延長5年（927年）に成立した『延喜式』神名帳には、大和国城上郡に「志貴御県坐神社 大 月次新嘗」として、式内大社に列し、朝廷の月次祭や新嘗祭で幣帛を賜る神社として記載されています。また、文明6年（1474年）の「宿院会米帳」には「シキノミヤ」の記載が見られます。明治維新後、近代社格制度では村社に列せられました。

神階

天安3年（859年）1月27日には、従五位下から従五位上へと神階が昇叙されました（『日本三代実録』）。この際の表記は「志貴御県神」となっています。

境内

志貴御縣坐神社の付近は、一説によると『古事記』や『日本書紀』に第10代崇神天皇が営んだと記されている磯城瑞籬宮（師木水垣宮）の跡地であるとされ、現在ではその場所に石碑が建てられています。

参考文献

『国史大辞典』吉川弘文館
真弓常忠「磯城県主」、永島福太郎「志貴御県坐神社」
「志貴御県坐神社」『日本歴史地名大系 30 奈良県の地名』平凡社、1981年
「磯城県主」『日本古代氏族人名辞典 普及版』吉川弘文館、2010年

関連項目

倭の六県

外部リンク

志貴御縣坐神社 - 奈良県神社庁
* 志貴御県坐神社 - 國學院大學21世紀COEプログラム「神道・神社史料集成」

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