愛あれば命は永遠に

宝塚歌劇団花組により1985年に上演された「宝塚グランド・ロマン」です。フランスの英雄ナポレオン・ボナパルトと、彼が生涯愛した女性ジョセフィーヌ・ド・ボーアルネ、二人の激しくも波乱に満ちた愛の軌跡を壮大なスケールで描いた作品として知られています。

上演詳細

本公演は、宝塚大劇場にて1985年 3月28日から5月7日まで、続いて東京宝塚劇場にて同年7月4日から7月30日まで上演されました。作品形式は「宝塚グランド・ロマン」。宝塚大劇場公演は全2部35場、東京宝塚劇場公演は全2部33場と、一部構成に違いが見られました。また、それぞれの日程中に新人公演も実施されました。

特筆すべき点

本作は、宝塚歌劇団にとって記念すべき71期生たちが初めて大劇場の舞台を踏んだ「初舞台公演」でした。また、当時花組のトップ娘役として活躍していた若葉ひろみのサヨナラ公演でもあり、宝塚歌劇の歴史においても節目の公演の一つとなりました。

物語のあらすじ

物語は1795年のパリに幕を開けます。オペラ座では、政府軍総司令官バラス将軍をはじめとする社交界の名士たちが集まっていました。その中に、野心的な若き軍人ナポレオン・ボナパルトの姿もありました。ナポレオンは、社交界の華と謳われるジョセフィーヌの魅力に抗えず、瞬く間に心を奪われます。一方、バラス将軍をパトロンとしていたジョセフィーヌにとって、実直で年下のナポレオンからの求愛は当初は重荷に感じられました。しかし、ナポレオンのひたむきな愛と情熱は次第にジョセフィーヌの心にも変化をもたらし、バラスの取り成しもあって、二人は1796年に結ばれます。結婚後、ナポレオンは度重なる遠征で国内外を駆け巡り、その間パリに残されたジョセフィーヌは、イポリット・シャルル大尉との間に噂を立てられます。遠征先でこの事実を知ったナポレオンは、愛する者からの裏切りに苦しみ、激しい愛憎の感情にさいなまれることになります。二人の関係は、時代の激動と個人の感情の葛藤の中で翻弄されていきます。

主な登場人物と配役

物語の中心となる主要な登場人物とその役割は以下の通りです。

ナポレオン・ボナパルト: フランスの若き軍人。類稀なる野心と才能を持ち、後に皇帝の座に就く人物。
ジョセフィーヌ: パリ社交界でその美貌と魅力で人々を惹きつけた女性。後にナポレオンの妻、フランス皇后となる。
イポリット・シャルル大尉: ジョセフィーヌと関係を持つ青年士官。
バラス将軍: ジョセフィーヌのパトロンであり、ナポレオンにとっては上官にあたる人物。

本公演の主な配役

本公演では、当時の花組を代表するスターたちが主要な役を演じました。

ナポレオン・ボナパルト、エロイカ、ブロー：高汐巴
ジョセフィーヌ、ルージュ：若葉ひろみ
イポリット・シャルル大尉、エロイカ、ブラン：大浦みずき
バラス将軍、エロイカ：榛名由梨（専科、特別出演）
他、朝香じゅん、恵さかえ、なかいおり、真汐ちなみ、秋篠みほ、幸和希、瀬川佳英、但馬久美、小柳日鶴、宝純子、真矢みき、水原環、神奈美帆、聖真澄、ひびき美都、月丘千景などが出演しました。

新人公演の主な配役

新人公演は第一部とフィナーレのみ上演されました。後のトップスターたちが主要な役を演じています。

ナポレオン、ブロー：真矢みき
ジョセフィーヌ、ルージュ：梢真奈美
シャルル大尉、ブラン：安寿ミラ
バラス将軍、エロイカ：翼悠貴
他、友麻夏希、友樹こころ、由梨かおる、舵一星、南海里、水原環、大潮ますみ、馮裕華、鮎ゆうき、峰丘奈知、大空希望、三矢直生、愛風ひかる、若草葉子、華陽子などが出演しました。

スタッフ

本作の制作には、宝塚歌劇を長年支えてきたスタッフ陣が携わりました。

作・演出：植田紳爾
作曲・編曲：寺田瀧雄
編曲：入江薫、河崎恒夫、高橋城
音楽指揮：野村陽児、岡田良機（宝塚）、大谷肇（東京）
振付：喜多弘、岡正躬、羽山紀代美、黒瀧月紀夫
装置：渡辺正男
衣装：静間潮太郎
照明：今井直次
小道具：上田特市
効果：川ノ上智洋
音響監督：松永浩志
演技監督：美吉左久子
演出助手：谷正純、日比野桃子
舞台進行：渡辺勝彦、高階弘之
制作：田中拓助
製作担当：横山美次（東京）

主な楽曲

劇中では、作品と同名の主題歌「愛あれば命は永遠に」をはじめとする印象的な楽曲が多数使用されました。

本作は、歴史上の人物のドラマチックな生涯と愛を、宝塚歌劇ならではの豪華絢爛な舞台で描き出し、多くの観客を魅了しました。また、初舞台生たちの出発点や、トップスターの有終の美を飾る場としても記憶に残る一作です。

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