慶應稲荷大明神

慶應稲荷大明神について

慶應稲荷大明神は、東京都新宿区信濃町の慶應義塾大学信濃町キャンパス内に鎮座する、学内神社です。この神社は、慶應義塾の守護神として信仰を集めています。

創建の由来

1917年、慶應義塾は医学部を設置し、1920年には北里柴三郎を初代院長として迎え、信濃町の地に慶應義塾大学病院を開院しました。しかし、開院直後から医学部幹部の急逝が相次ぎ、当直職員の夢枕に神獣が現れるなど、不吉な出来事が頻発しました。これらの異変を祟りではないかと疑った塾関係者は、浅草の高名な易者に占いを依頼しました。

その結果、「池（かつて新教育研究棟北側に存在した）の畔に、世に出ることを望む神がいる。祠を建てて祀ることで、凶兆は収まるだろう」というお告げを受けました。実際に池の周辺を掘ると、祠の破片や水盤などが見つかり、神託が真実であることが確信されました。そこで、塾関係者間で社を建てて祟りを鎮めることが決定し、募金活動の結果、1933年に現在の東校舎東側に稲荷神社が建立され、以降、吉兆をもたらすようになったと伝えられています。

沿革

この地は、江戸時代には下総生実藩森川出羽守の下屋敷がありました。社殿の前に置かれている手水鉢には、「嘉永五年(1852年)十二月吉祥日」という刻印があり、これは生実藩屋敷時代に作られたものです。1852年は、生実藩の9代藩主である森川俊民が亡くなり、三男の森川俊位に家督が譲られた年にあたります。もしこの年を建立年とみなした場合、神社の歴史は江戸時代末期まで遡ることになります。

明治維新後の1871年に廃藩置県により生実藩が廃止されると、屋敷跡は国に接収され、陸軍の練兵場となりました。その後、1917年に慶應義塾大学医学部が開設された際、この地は慶應義塾に払い下げられました。太平洋戦争末期の1945年5月25日の東京大空襲では、一帯が焼夷弾の爆撃を受け、社殿も焼失しましたが、戦後の1953年に有志によって再建されました。当時の混乱期には十分な募金が集まらず、職員が購入した鉄パイプで仮の鳥居が作られました。その後、1963年に有志からの寄付により現在の社殿が建てられ、1979年には老朽化した木製の鳥居が現在の金属製の鳥居に建て替えられました。

このように、慶應義塾の教職員たちの献身と熱意によって、現在の社が維持されてきました。

祭礼

創建以来、毎年「初午の祭」が開催されていましたが、かつては近隣住民も参加する大規模なものでした。しかし、その後祭礼の規模は縮小され、現在では年に一度、3月に神主を招いて神事が行われています。

現状（合格祈願の神社として）

慶應義塾大学医学部キャンパス内に位置するという立地から、受験雑誌や受験サイトで紹介されることが多く、受験シーズンには慶應義塾の各学校の志願者だけでなく、医学部や歯学部、薬学部、看護学部の受験生、そして国家試験の受験生などが合格祈願のために多く参拝します。また、入院患者の平癒祈願のために訪れる人もいます。

ただし、この神社は東京都の宗教法人としては登録されていません（2022年現在）。

ロケーション

社殿の脇には紅梅と白梅が植えられており、これらは病院の看護師宿舎「白梅寮」と「紅梅寮」、そして慶應看護同窓会「紅梅會」の名前の由来となりました。2022年現在、白梅は現存していますが、「白梅寮」は2015年末に老朽化のために取り壊されています。一方、紅梅は現存していませんが、「紅梅寮」と「紅梅會」は存続しています。

交通アクセス

最寄りの駅は、JR信濃町駅で、徒歩6分の距離です。駅前には慶應義塾大学病院キャンパスがあります。病院の正門を通り過ぎて北に約200メートル進み、東門から構内に入り、最初の角を右折して約25メートル進んだ場所に神社があります。その他、都営地下鉄大江戸線・国立競技場駅から徒歩8分、東京メトロ丸ノ内線・四谷三丁目駅から徒歩11分でアクセスできます。

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