成生 (舞鶴市)

成生（なりう、なりゅう）

京都府舞鶴市、若狭湾に突き出た大浦半島の北端に位置する成生は、ブリの定置網漁で栄えた漁村です。2015年の国勢調査では、20世帯、50人が暮らしています。その歴史、地理、経済、文化について詳しく見ていきましょう。

地理

成生は、大浦半島の北端、成生岬を有する成生半島に位置します。集落は成生谷と呼ばれる平地に形成され、正面には小湾が広がります。湾口には磯島があり、波を遮る役割を果たしています。集落内には、成生漁港から内陸に向かってマンダダニ、ナカスジ、本通り、ムカイスジの4本の路地が伸びています。

集落

成生集落は、緩やかな傾斜地に形成されています。明治末期から大正初期にかけて、ブリ漁の隆盛とともに二階建ての家屋が多く建てられました。ナカスジの突き当りには西徳寺、本通りの突き当りには鳴生神社があります。漁港周辺には、妻入と連棟形式の舟屋が建ち並び、特に連棟形式の舟屋は「シチケンブン」と呼ばれています。

離島

成生周辺には、以下の離島があります。

毛島: 成生岬の東1.5kmに位置する京都府最大の無人島。
風島: 成生集落の北東1kmにある無人島。
磯島: 成生漁港のすぐ沖にある無人島。

気候

成生は典型的な日本海側気候で、秋から春にかけて曇天が続きますが、温暖な海水の影響で気温が極端に下がることはありません。また、集落の西側に成生半島があるため、冬季の季節風も緩和されます。海岸部にはシイの群落があり、ビワやヤマモモも自生し、ウンシュウミカンも栽培されています。

歴史

古代

『丹後風土記残欠』によると、崇神天皇の時代に大将軍日子坐王の鎧兜が鳴り響いたという伝承が、鳴生の地名の由来とされています。応安7年（1374年）には大火で鳴生神社が焼失しましたが、永和5年（1379年）に再建されました。

近世

安土桃山時代から江戸時代初期にかけての検地帳によると、成生村と小成生村を合わせて70戸以上がありました。しかし、慶長年間には大量遭難があり、寛永8年（1631年）には7戸まで減少しました。その後、元禄16年（1703年）には15戸まで増加しました。

江戸時代には、刺網漁業でブリを漁獲し、藩主に献上したり、若狭国で販売していました。ブリの他にも、ソウダガツオ、ボラ、トビウオなどが獲れていました。漁場を独占した7人組と、それ以外の13人組がいました。江戸時代末期には20戸でしたが、その後は戸数を制限する不文律がありました。

近代

1871年（明治4年）に舞鶴県の所属となり、その後豊岡県を経て、1876年（明治9年）に京都府の所属となりました。1889年（明治22年）に東大浦村が発足しましたが、東西の対立から1902年（明治35年）には分村の請願も行われました。1942年（昭和17年）に東大浦村が東舞鶴市に編入されるまで、紛争は続きました。

1892年（明治25年）に大敷網が導入され、ブリの大量漁獲に成功しました。1901年（明治34年）には漁業法が制定され、成生漁業組合が設立されました。1906年（明治39年）には大敷網が導入され、漁業は大きく発展しました。しかし、大敷網をめぐり隣接する田井との間で紛争も発生しました。

ブリ漁で経済が潤い、明治末期から大正初期にかけて各戸が新築されました。丹後で獲れたブリは「丹後ブリ」と呼ばれ、成生と田井は日本海を代表するブリ漁獲村として知られました。

大敷網の漁には多くの漁夫が必要で、冬季には出稼ぎ漁夫が多数訪れました。大正期から昭和戦前期には不漁が続き、昭和期には落網が開発されました。1930年（昭和5年）には養蚕業が打撃を受け、その後ウンシュウミカンが導入されました。1936年（昭和11年）には成生岬に海軍防備隊が設置され、1940年（昭和15年）には共同出荷所桟橋、1941年（昭和16年）には水産倉庫が建てられました。

現代

太平洋戦争後、成生では戸数が増加し、1974年には23戸となりました。1970年時点では、農業は兼業が多く、ウンシュウミカンは「大浦みかん」として出荷されていましたが、ハッサクへの転換が進められました。1970年の国勢調査では、24世帯、112人でした。

2005年には映画『男たちの大和/YAMATO|男たちの大和_YAMATO』、2012年には『ALWAYS 三丁目の夕日'64』のロケ地となりました。

経済

漁業

成生岬の東側は水深が深く、ブリの回遊ルートが形成されており、定置網漁に最適な漁場となっています。漁業協同組合が大型定置網を設置し、個人経営体は小型定置網を設置しています。明治末期には漁業組合が設立され、漁業収入は平等に配分されるようになりました。1992年の漁獲高は1億8212万円でした。

成生漁港は、ブリ、イワシ、アジなどが主な漁獲対象です。

農業

成生集落の北東には畑地が広がっており、地震や津波の際の指定緊急避難場所となっています。農作物はサルやシカなどの被害を受けることがあります。

交通

成生は東舞鶴市街地から離れており、「陸の孤島」と表現されることがあります。かつては海路で物資を運搬していました。現在は、舞鶴市田井から京都府道21号が伸びていますが、成生で行き止まりとなっています。路線バスはなく、最寄りのバス停は田井バス停です。

名所・旧跡

鳴生神社: 大将軍日子坐王を祀る神社で、石灯籠や狛犬には若狭湾の広い交流圏を示す名前が刻まれています。
西徳寺: 臨済宗の寺院で、舞鶴市指定文化財の「仏涅槃図」があります。金閣寺放火事件の犯人の生家でもあります。
成生岬: 海軍防備隊の官舎や防空砲台が設置されていた場所で、巨木のスダジイが舞鶴市指定天然記念物となっています。

参考文献

柿本典昭, 島田正彦, 藤村重美「定置網漁村の経済構造」『人文地理』第26巻第2号、1974年、129-163頁
舞鶴市「舞鶴市史 通史編 ＜下＞」1982年

外部リンク

* 漁村の風景 成生 舞鶴市

成生は、豊かな自然と歴史、そして人々の営みが息づく魅力的な場所です。

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