戸倉山 (伊那市・駒ヶ根市)

戸倉山（伊那富士、袴腰）

戸倉山は、長野県伊那市と駒ヶ根市にまたがる伊那山地に位置する標高1,681mの山です。地元では古くから信仰の対象とされ、別名「伊那富士」や「袴腰」としても親しまれてきました。かつては「十蔵山」とも呼ばれていました。

概要

戸倉山は伊那山地の北部に位置し、周囲の山々を凌ぐ独立峰のような山容が特徴です。特に、北側から見た姿が富士山に似ていることから「伊那富士」と呼ばれ、郷土富士として愛されています。山頂は東西に分かれた双耳峰となっており、東峰には一等三角点が設置されています。

西峰の頂上には、日本一高所にあるとされる庚申塔があります。東西の峰の間には避難小屋や行者屋敷跡があり、カラマツ、ブナ、ダケカンバなどの自然林が見られます。南西に延びる尾根にはカラマツが植林されており、ミツバツツジなども楽しめます。中腹には「差鴨居のミズナラ」と呼ばれる巨木があり、山中ではヤマツツジ、チゴユリ、ナルコユリ、マイヅルソウ、ギンリョウソウなどの植物も観察できます。また、南西尾根の上部には「金明水」と呼ばれる湧水があり、東屋が設置された広場となっています。

戸倉山は、清水栄一氏によって『信州百名山』の一つに、長野県山岳協会によって『信州ふるさと120山』の一つに選定されています。

歴史・文化

古くから信仰の山として崇められてきた戸倉山には、山頂に「不動明王碑」や「摩利支天碑」、「霊犬碑」などが祀られています。かつては、田畑の肥料や家畜の飼料となる草木を採取する場所としても利用されていました。南西尾根の中腹には、村人が芝刈りに来た際に馬をつなぎ止めたとされる「馬止の松」と呼ばれるアカマツや、「猿の松」、「天狗伝説の岩」など、古くからの言い伝えが残る場所もあります。

周辺の自然

戸倉山の南西下部には、「中山　上の森」と呼ばれる社叢があり、駒ヶ根市の天然記念物に指定されています。社叢内には、幹周5.9mにもなるコナラの巨木や、それを覆うフジのつるなど、豊かな自然が残されています。

山域の東側には中央構造線を挟んで赤石山脈が、西側には伊那谷を挟んで木曽山脈がそびえ立っています。戸倉山から南に延びる尾根は、中沢峠、分杭峠を経て赤石山脈へと続いています。

登山

戸倉山は日帰り登山の対象として親しまれており、山頂からの眺望の良さで知られています。登山道も整備されており、比較的登りやすい山として人気があります。山頂部の鞍部には、戸倉山避難小屋が設置されています。

登山ルート

戸倉山キャンプ場からのルート
上の森ルート
沢ルート
女沢峠ルート
市野瀬ルート

周辺施設

戸倉山避難小屋
* 戸倉山キャンプ場

アクセス

東山麓には国道152号、西山麓には長野県道210号西伊那線が通っています。公共交通機関を利用する場合は、JR飯田線駒ケ根駅からバスなどを利用します。

眺望

山頂からは、仙丈ヶ岳をはじめとする赤石山脈の山々や、木曽山脈、飛騨山脈などを一望できます。

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