戸田忠友

戸田忠友：幕末から大正期を駆け抜けた華族の生涯

戸田忠友は、激動の時代を生きた稀有な人物です。幕末の下野宇都宮藩最後の藩主として政治の中枢に立ち、明治維新後の混乱期を乗り越え、華族として、そして神職として、晩年まで重要な役割を果たしました。その生涯は、単なる貴族の物語ではなく、日本の近代化を彩る歴史の一端を担うドラマと言えるでしょう。

出自と幕末期の活躍

1847年、江戸で生まれた戸田忠友は、宇都宮藩戸田家分家の出身です。幼少期から優れた才能を示し、1862年には徳川家茂の小姓に抜擢されました。その後、従五位下に叙位、安房守に任官するなど、順調に幕臣としての道を歩んでいきます。しかし、運命の歯車は、1865年に大きく動き出します。本家の宇都宮藩主・戸田忠恕が、天狗党の乱鎮圧失敗の責任を問われ強制隠居を余儀なくされたのです。この時、忠友はわずか20歳で家督を相続することになります。

宇都宮藩主となった忠友は、幕府から陸奥棚倉藩への左遷を命じられる危機に瀕しましたが、一門家老の尽力によりこれを免れました。その恩義に応えるかのように、彼は1万石を分与して支藩高徳藩を立藩させ、宇都宮藩の安定に貢献します。さらに、奏者番や寺社奉行を兼任し、幕府政治の中枢でも活躍しました。

戊辰戦争と宇都宮藩

戊辰戦争では官軍に属した忠友ですが、元将軍徳川慶喜の助命嘆願のため上洛を試みました。しかし、大津湊で抑留され、一時隠居を命じられるなど、波乱の連続でした。宇都宮藩は激戦の舞台となり、宇都宮城は落城。この戦いの功績により、忠友は明治2年に賞典禄1万石を下賜されました。

廃藩置県と華族としての歩み

版籍奉還後、宇都宮藩知事となった忠友は、廃藩置県までその職務に尽力しました。その後、華族として新たな人生を歩み始めます。1876年の金禄公債証書発行条例に基づき、家禄と賞典禄と引き換えに多額の金禄公債を受け取りました。東京浅草に居住し、権少教正、少教正、権中教正と神職としての地位も上昇し、学校創設資金の拠出など社会貢献にも積極的に関わります。1884年には華族令により子爵に叙せられ、その後も順調に昇叙を重ねていきます。宇都宮二荒山神社宮司も歴任するなど、宗教面でも大きな影響力を持ちました。

家族と晩年

忠友は、戸田忠至の養女を妻に迎え、複数の側室との間に多くの子供をもうけました。その子供たちは、それぞれ異なる道を歩み、社会に貢献しました。大正13年、78歳で生涯を終えた戸田忠友。その生涯は、激動の時代を生き抜き、政治、宗教、そして華族社会において重要な役割を果たした人物としての証です。彼の功績は、日本の近代化の歴史に刻まれています。

参考文献

石川健次郎「明治前期における華族の銀行投資―第15国立銀行の場合―」『大阪大学経済学』第22号、大阪大学経済学部研究科、1972年
小田部雄次『華族 近代日本貴族の虚像と実像』中央公論新社〈中公新書1836〉、2006年
落合弘樹『秩禄処分 明治維新と武士のリストラ』中央公論新社〈中公新書1511〉、1999年
霞会館華族家系大成編輯委員会『昭和新修華族家系大成 別巻 華族制度資料集』霞会館、1985年
霞会館華族家系大成編輯委員会『平成新修旧華族家系大成 下巻』霞会館、1996年
華族大鑑刊行会『華族大鑑』日本図書センター〈日本人物誌叢書7〉、1990年
* 新田完三『内閣文庫蔵諸侯年表』東京堂出版、1984年

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