戸田敏子

戸田敏子（とだ としこ）は、1922年5月10日に東京府で生まれ、2015年9月24日に93歳で亡くなった、日本の声楽家です。メゾソプラノ、アルト歌手として、オペラ、コンサート、歌曲など幅広い分野で活躍し、東京藝術大学名誉[[教授]]として後進の育成にも力を注ぎました。

人物と経歴

東京音楽学校（現東京藝術大学）を1943年に首席で卒業しました。在学中からその才能を発揮し、卒業時にはオペラ『白狐』のアリアを歌い、レコード吹込みも行いました。1954年以降、本格的に音楽活動を開始し、オペラ歌手として数々の大作オペラで重要な役割を果たしました。特にワーグナー作品の日本初演には欠かせない存在でした。また、コンサートでは、宗教曲やベートーヴェンの『第九』など、著名なオーケストラや指揮者と共演し、その歌声は多くの人々を魅了しました。歌曲の分野でも、ドイツリートや日本歌曲を得意とし、数多くのリサイタルを開催しました。テレビ出演も多く、大衆的な人気と知名度も有していました。

1976年からは東京藝術大学の教授として、後進の指導に尽力しました。二期会の理事長も務め、亡くなる半年前まで二期会ドイツリート研究会で講師を務めるなど、生涯現役で音楽に情熱を注ぎました。2015年、脳梗塞のため東京都内の病院で息を引き取りました。

オペラ

1954年：ラヴェル『子供と呪文』とんぼ役（柴田敏子名義）
1957-58年：プッチーニ『蝶々夫人』スズキ役
1958年：ドビュッシー『ペレアスとメリザンド』ジュヌヴィエーヴ役
1959年：オネゲル『火刑台上のジャンヌ・ダルク』カテリーヌ役（日本初演）
1959年：ニコライ『ウィンザーの陽気な女房たち』ライヒ夫人役
1960年：ワーグナー『ニュルンベルクのマイスタージンガー』マグダレーネ役（日本初演）
1962年：ブリテン『真夏の夜の夢』オベロン役
1967年：ヘンデル『ジュリアス・シーザー』タイトルロール
1969年：ワーグナー『ラインの黄金』エルダ役（日本初演）
1972年：モーツァルト『フィガロの結婚』マルチェリーナ役
1975年：ヨハン・シュトラウス2世『こうもり』オルロフスキー侯爵役
1976年：ムソルグスキー『ボリス・ゴドゥノフ』クセーニャの乳母役

主なコンサート

1955年：東京大学OB合唱団演奏会で独唱（柴田敏子名義）
1960年：ヘンデル『メサイア』ソロ
1962年：ベートーヴェン『第九』
1962年：立教大学『メサイア』ソロ
1966年：ベルリオーズ『ロメオとジュリエット』ソロ
1967年：モンテヴェルディ『聖母のための夕べの祈り』ソロ
1969年：ベートーヴェン『ミサ・ソレムニス』ソロ
1974年：ベートーヴェン『第九』
1986年：立教大学『メサイア』ソロ

主なリサイタル

1966年：二期会ゴールデンコンサートに出演
1967年：戸田敏子独唱会

音楽教育者として

戸田敏子の門下からは、伊原直子、鮫島有美子、松井康司など、数多くの著名な声楽家が育ちました。彼女の指導は、技術だけでなく、音楽への深い愛情と情熱を伝えるものでした。

家族

兄は外交官・作曲家の戸田邦雄、最初の夫は作曲家・音楽評論家の柴田南雄でした。

受章歴

1993年に勲三等瑞宝章を受章しました。

ディスコグラフィー

世界の音楽 4 ベートーベン 有坂愛彦（ほか）編（小学館 1966）交響曲第9番ニ短調『合唱』第4楽章
CD2枚組 冬のハルツの旅 戸田敏子”歌の心” KING RECORDS
CD 決定版 世界の愛唱歌 オムニバス ビクターエンタテインメント
CD6枚組 世界の愛唱歌ベストコレクション オムニバス ビクターエンタテインメント

掲載記事

芸術新潮6(12)（新潮社 1955-12）
音楽の友23(12)（音楽之友社 1965-12）
音楽の友24(2)（音楽之友社 1966-02）
音楽の友25(3)（音楽之友社 1967-03）
音楽芸術25(9)（音楽之友社 1967-09）
音楽の友26(11)（音楽之友社 1968-10）
音楽の友29(4)（音楽之友社 1971-04）

放送出演

NHKの番組に多数出演し、その歌声を披露しました。出演番組は多岐にわたり、その多くがNHKクロニクルで確認できます。戸田敏子の出演は、音楽番組にとどまらず、教育番組にも及んでいます。

戸田敏子は、その卓越した歌唱力と音楽性で、日本の音楽界に多大な貢献をしました。彼女の功績は、後世に語り継がれるでしょう。

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