手塚光照

手塚光照（てづか みつてる）

手塚光照は、享和元年（1801年）に生まれ、文久2年5月21日（1862年6月18日）に没した、幕末の医師であり蘭学者です。彼は、漫画家・手塚治虫の高祖父にあたり、手塚家では世襲の通称として「良仙」を名乗っていました。父である手塚光行（良仙）も、その子・良庵（後の良仙）も同様に「良仙」を名乗っています。

手塚家の系譜

手塚家の先祖は、平安時代末期の信濃国の国人、手塚光盛（太郎）に遡ります。光盛は木曾義仲に従い、寿永2年（1183年）の篠原の戦いで斎藤実盛を討ち取って名を挙げましたが、翌年の粟津の戦いで義仲と共に源義経によって討たれました。その子孫は故郷にひっそりと暮らしていたとされています。

江戸時代前期には、手塚吉兵衛が常陸国に移り、その子・盛行が蘭医として家業を始めました。その後、盛行の子・盛方、盛方の子・東益と続きましたが、東益には男子がいなかったため、婿養子として良意が後を継ぎました。良意もまた男子がなく、武蔵国大里郡代村出身の光行（良仙）を婿養子に迎えました。そして、光行の子が光照です。

光照の生涯

光照は江戸で蘭方医として活躍し、常陸府中藩医として江戸小石川三百坂に住んでいました。彼は大槻俊斎の才能を認め、長崎留学を支援し、後に娘婿として迎えます。また、蘭学修行のため息子・良庵を緒方洪庵の適塾に入門させています。

勤王画家として知られる菊池容斎が描いた『前賢故実』の校正者の一人として、良仙の名が記されています。人物略伝部分の文字校正を担当したと考えられますが、容斎の画稿には人体骨格や筋肉の写生もあることから、解剖学的な立場から容斎の人物画について助言を与えていた可能性も指摘されています。

手塚治虫との関わり

手塚治虫は、光照の子である良庵を主人公の一人とした漫画『陽だまりの樹』を執筆しています。この作品では、光照も主要人物として登場し、作者である治虫の自画像そっくりの姿で描かれています。作中では、光照は既に良仙を名乗っており、後に良庵が良仙の名を継承しています。

家族・親族

手塚光照の家族・親族は以下の通りです。

六世祖父: 吉兵衛
五世祖父: 盛行
高祖父: 盛方
曾祖父: 東益
祖父: 良意
父: 良仙（光行）
妻: 太田氏（本名不詳、兄は光行の弟子である西条藩医・太田良海）
長男: 良仙（良庵）（1826年 - 1877年、医師、蘭学者）
孫: 太郎（1862年 - 1932年、司法官）
曾孫: 粲（1900年 - 1986年、写真家）
玄孫: 治（治虫）（1928年 - 1989年、漫画家）
来孫: 眞（1961年 - 、映像クリエイター）
来孫: るみ子（1964年 - 、プランニングプロデューサー）
長女: 海香（夫は大槻俊斎）
次男: 鮭延良節（医師、加賀藩医・鮭延家へ養子入り、妻は俊斎の妹）
次女: 秀（夫は手塚家婿養子の手塚良斎（内村政富）、種痘所設立者の一人）
三女: （夫は伊東玄晁、種痘所設立者の一人）
四女: （夫は植村千代助）

演じた俳優

手塚光照を演じた俳優は以下の通りです。

奥村公延（「陽だまりの樹」舞台・1992年）
坂上二郎（「陽だまりの樹」舞台・1995年、1998年）
永井一郎（「陽だまりの樹」テレビアニメシリーズ・2000年）
大竹宏（「陽だまりの樹　第一楽章」舞台・2002年）
石倉三郎（「陽だまりの樹」舞台・2013年）
笹野高史（「陽だまりの樹」テレビシリーズ・2013年）
* 浅川聡（「陽だまりの樹」舞台・2014年）

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