打狗英国領事館文化園区

打狗英国領事館文化園区

台湾高雄市鼓山区に位置する打狗英国領事館文化園区は、旧イギリス領事館とその官邸、そして両者を結ぶ山道を含む歴史的な建造物群です。この地は、台湾に現存する最古の西洋近代建築物として知られ、その歴史的価値と美しい景観から高雄市屈指の観光地となっています。

打狗英国領事館

1858年、清朝とイギリスの間で締結された天津条約により打狗港が開港し、1864年には税関が設置されました。当初、領事業務は廃船を借りて行われていましたが、1865年に領事館に昇格し、旗後（現在の旗津区）にあった華人の住居を仮の領事館として使用。その後、1867年に哨船町（現在の鼓山区哨船頭里）に建てられた赤レンガ造りの西洋建築が領事館として使用されるようになりました。この建物は、その後日本統治時代には水産試験場として、戦後も同様の用途で利用されました。2005年に「高雄州水産試験場（英国領事館）」として古蹟登録され、修復を経て現在の姿に至っています。

麓の領事館は、対外業務を行う公館として、港や税関へのアクセスが良いこの場所が選ばれました。当時のイギリス政府にとって、打狗地区における重要な業務拠点であり、領事裁判権も有していたため、拿捕や牢獄の機能も備えていました。しかし、日本統治時代に大幅な改築が加えられたため、清朝時代の面影はほとんど残っていません。

1868年には、台南の安平港で起きた樟脳貿易を巡る紛争、安平砲撃事件の処理にも関わっています。また、戦後には、海巡署の事務所が置かれていた時期もありましたが、2018年に撤去され、現在は往時の姿を取り戻しています。

打狗英国領事官邸

領事官邸は、西子湾に面する海抜30メートルの高台に位置し、北側を寿山、三方を断崖に囲まれた場所にあります。麓の領事館とは石段で繋がっており、1877年に土地が取得され、1879年に完成しました。総面積は471平方メートル。日本統治時代から1979年までは海洋観測所として使用され、その後、古蹟登録を受けました。

植民地仕様のバロック[[建築]]であり、薔薇と石彫が特徴的です。イギリス人が設計し、英国式の度量衡を用いて建てられました。回廊式のバルコニーや半円状のアーチ構造、各部屋の暖炉などが特徴です。下層は一部が地下室となっており、倉庫や貯蔵室として利用されました。赤レンガは中国のアモイから運ばれ、竹状の排水管は清朝末期の洋館の特徴を示しています。山頂の官邸からは打狗港を一望でき、静粛性も高く、領事館職員の住居や外交使節の迎賓場所として使われました。

1986年からは、高雄史蹟文物陳列館として再開業し、その後修復作業を経て、2004年に再オープンしました。2013年には、ティーサロン「古典玫瑰園（ローズハウス）」が官邸内に開業しています。

登山歩道

官邸と領事館を結ぶ全長約200メートルの階段道です。官邸落成と同時に使用され始め、花崗岩、珊瑚石、赤レンガで造られています。山頂の官邸に至る道は他にもありますが、この歩道のみが園内のものとして扱われています。

沿革

清朝時代:
1858年：天津条約により、打狗港が開港。
1864年：打狗港に税関が設置。
1865年：打狗副領事館が領事館に昇格。天利洋行の洋館を借用。
1876年：イギリス政府が哨船頭碼頭周辺の土地を永久租借。
1877年：哨船頭山上下の関連土地を取得し、官邸建設に着手。
1879年：領事館と官邸が落成。
日本統治時代:
1895年：下関条約により台湾が日本に割譲。
1910年：領事館が閉鎖。
1925年：英国が領事館建物を日本に売却。
1931年：高雄海洋観測所が設置され、官邸を気象台として使用。
1932年：領事館を水産試験場として使用。
第二次世界大戦後:
1949年：建造物の所有権が中華民国へ。
1973年：高雄測候所が移転し、旧領事官邸が放置される。
1976年：水産試験所が移転し、旧領事館を職員宿舍として利用。
1983年：旧領事官邸が古蹟として評価され、修復開始。
1987年：打狗領事官邸が二級古蹟に指定。
2004年：領事官邸が再オープン。
2009年：建物名称の誤りを訂正。
2013年：「打狗英国領事館文化園区」として有料開放。
2019年：国定古蹟に昇格。

周辺

霊興殿（十八王公廟）
雄鎮北門
国立中山大学
打狗港（現高雄港）
西子湾
旗津フェリー鼓山渡輪站

アクセス

高雄捷運: 西子湾駅・哈瑪星駅から徒歩約1.5km
高雄市公車: 99路、99路区、橘1A、橘1B、橘1C、哈瑪星文化公車で「雄鎮北門(打狗英國領事館)」下車
フェリー: 鼓山渡輪站から対岸へ（徒歩約600メートル）


この歴史的な場所は、かつての国際貿易の拠点としての役割から、台湾の歴史を今に伝える観光スポットへと姿を変えています。その建築美と歴史的背景は、訪れる人々に深い感動を与えています。

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