折敷畑の戦い

折敷畑の戦い

折敷畑の戦い（おしきばたのたたかい）は、戦国時代に毛利元就と陶晴賢の間で行われた合戦の一つで、明石口の戦いとも呼ばれます。この戦いは、後に続く厳島の戦いの前哨戦として位置づけられることもあります。

背景

天文20年（1551年）、大内義隆が重臣・陶晴賢の謀反によって討たれると、大内氏に従属していた毛利氏はその対応を迫られました。毛利元就の長男・毛利隆元は、義隆の仇討ちを主張しましたが、元就は現実的な判断から思いとどまりました。この頃、元就は既に大内氏からの独立を考えていたという意見もありますが、それを裏付ける史料はなく、後世の脚色と考えられています。むしろ、元就は謀反に乗じて安芸国の反陶勢力を掃討し、晴賢に同調することで勢力拡大を図りました。

その後も、毛利氏は大内・陶氏との関係を維持していましたが、勢力拡大とともに晴賢から警戒されるようになります。一方、義隆に恩義を感じていた石見国の吉見正頼は、天文22年（1553年）に晴賢に対して挙兵。これに対し、毛利氏は陶氏から加勢を求められます。元就は陶氏への参陣を考えていたものの、隆元の反対で家中が分裂。最終的に、晴賢が毛利傘下の安芸国人衆に直接出兵を要求したことがきっかけとなり、元就は大内氏からの離反を決意しました。

戦いの経過

旧説

従来、折敷畑の戦いは以下のように語られていました。

天文23年（1554年）5月、毛利軍はわずか一日で4つの城と厳島を制圧。その後、周防国に侵入して陶軍と交戦します。6月5日には、安芸国佐西郡明石に攻め込んできた陶軍を打ち破りました（明石口の戦い）。

9月には能美島の占拠にも成功。毛利軍は桜尾城に本陣を置き、これを見た陶晴賢は毛利討伐を優先させるため、吉見正頼と和睦します。その後、家臣の宮川房長に兵3,000を与えて先行させ、さらに4,000の兵が合流して、合計7,000の軍勢が桜尾城を望む折敷畑山に布陣しました。

毛利軍の宍戸隆家と福原貞俊が宮川勢を偵察した際、敵軍を陶晴賢自身が率いていると誤認したため、元就は奇襲による殲滅を計画したとされています。9月14日夜、毛利軍3,000は桜尾城から出陣し、元就は東方から、吉川元春は北方から、小早川隆景は南方から、そして宍戸・福原勢は西方から夜陰に紛れて進攻しました。

元就は早朝の奇襲を考えていましたが、宮川勢も伏兵を潜ませていたため、蛍の群れの異変に気づいて伏兵を察知したと伝えられています。最終的に、毛利軍の攻撃は9月15日の午前中に行われ、包囲された宮川勢は総崩れとなり、750人が討ち取られ、宮川房長は逃走後に討死もしくは自害しました。

新説

近年では、9月15日に行われたとする説は軍記物の影響が大きく、実際には6月5日に行われたとする説が有力です。県立広島大学の秋山伸隆は、毛利側の感状を分析し、9月15日付の感状が偽文書であると結論づけました。その上で、6月29日付の陶晴賢の感状に「去五日於芸州明石口、宮川甲斐守（房長）同前令討死云々」という記述があることから、宮川房長が戦死したのは6月5日の明石口の戦いであり、この戦いが折敷畑の戦いに相当すると判断しました。

この説によれば、元就が蛍の飛び方を見て敵の動きを読んだというエピソードとも時季が整合します。また、古戦場跡の説明板でも、折敷畑（明石）合戦の日付は6月5日とされています。

ただし、当時から陶軍の本拠となった山の名前をとって折敷畑合戦とも呼ばれていたため、明石口合戦と折敷畑合戦が別の戦いとして語られるようになったと考えられています。

戦後

合戦後、安芸佐伯郡山里の一揆勢が抵抗を始め、毛利軍を悩ませました。山里一揆勢は手強く、拠点の友田高森要害が陥落するまで抵抗は続きました。

同時期には、水軍による攻防も展開されました。毛利側の水軍が陶氏の本拠地である周防富田浦を襲撃する一方で、陶側の水軍も厳島を攻めています。また、陶の調略を受けた呉・能美の警固衆が毛利から離反しましたが、後に毛利と小早川の警固衆が両者を攻撃しています。

元就は安芸国内の反毛利勢力を鎮圧し、安芸一国をほぼ手中に収めました。一方、三本松城に釘付けにされていた陶晴賢も吉見正頼と和睦し、毛利との対決に本腰を入れます。そして、両者の対立は激化し、弘治元年（1555年）に厳島の戦いを迎えることになります。

関連項目

四季が丘 - 広島県廿日市市。毛利方の進軍ルートであり、折敷畑古戦場跡へのアクセスがある。

外部リンク

折敷畑古戦場跡 - はつかいち旅ナビ（はつかいち観光協会）
宮川甲斐守腹切岩 - はつかいち旅ナビ（はつかいち観光協会）
毛利シリーズ・折敷畑山 - Web西日本タイムス1996年7月5日記事（西広島タイムス）

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