宍戸隆家

宍戸隆家とは

宍戸隆家（ししど たかいえ）は、戦国時代から安土桃山時代にかけての武将であり、安芸国（現在の広島県）の国人領主である安芸宍戸氏の当主です。五龍城を本拠とし、毛利元就の次女である五龍局を妻に迎えたことで、毛利氏の一門として活躍しました。当時の文書では、「宍戸」は「完戸」や「鹿戸」と表記されることもありました。

生涯

幼少期

隆家は、父・宍戸元家が亡くなった後の1518年に誕生しました。幼名は「海賊」と名付けられ、母方の山内家で養育されました。その後、祖父である宍戸元源に引き取られ、宍戸家に戻りました。元服の際には、大内義隆から偏諱を受けて「隆家」と名乗るようになりました。

安芸・備後での戦い

宍戸氏は、もともと毛利氏と争う関係にありましたが、1534年に毛利元就が五龍城を訪問した際、隆家と元就の娘・五龍局との婚約が決まりました。正確な婚姻時期は不明ですが、吉田郡山城の戦い後の1530年代前半と考えられています。

1540年、尼子氏が安芸国に侵攻した際には、宍戸元源は五龍城に籠城し、隆家は吉田郡山城に入城して毛利氏への忠誠を示しました。翌年には、佐東銀山城の戦いで武功を挙げ、その後も、大内氏による出雲侵攻や、神辺合戦などに従軍し、毛利氏のために戦いました。

1551年の大寧寺の変後、毛利氏は平賀氏を追放し、隆家も槌山城の戦いに参加しました。その後、備後高杉城攻めや、山内氏の毛利氏への帰順などにも関与しました。

防芸引分から防長経略

1554年の折敷畑の戦いでは、陶氏の軍勢と戦い、矢野城攻めにも参加しました。厳島の戦いでは吉田郡山城の守備を任されましたが、その後の防長経略では、鞍掛山城の戦いで武功を挙げました。石見銀山奪回戦や須々万沼城への攻撃にも参加しました。

毛利元就は、三子教訓状の中で宍戸氏を毛利一門として扱うよう述べており、また、隆家を含む安芸国人領主が傘連判状を作成したことで、宍戸氏が毛利氏の傘下に入ったと評価されています。

山陰攻略

1561年、福屋隆兼が離反した際には、石見国に出陣し、中之村城の戦いで多くの犠牲者を出しながらも攻略しました。その後、毛利輝元と南の大方との婚約が成立し、吉川元春の嫡男である吉川元長と次女が結婚するなど、毛利氏との関係をさらに深めました。伊予出兵では河野氏を支援しました。

白鹿城攻めでは、隆家は兵站線の確保に尽力し、尼子氏の兵糧輸送を遮断しました。尼子再興軍との戦いでは、毛利輝元に従い出雲へ出陣し、元就の死後は弔い合戦として伯耆国に出陣しました。

毛利輝元時代

1574年、備中兵乱が始まると、国吉城攻めに参加し、多くの敵兵を討ち取りました。1578年の播磨上月城の戦いでは、毛利軍の先鋒として出陣し、上月城を陥落させました。この戦い後、上月城兵の助命を保証する起請文に連署しました。

1580年には、山内氏との関係を改めて誓う起請文を送りました。備中高松城の戦いでは、独自の軍勢を率いて参戦し、毛利氏の中で自立性を保っていました。しかし、政治的には毛利氏の領国運営には関与しませんでした。1584年には、山内広通を人質として迎えました。

晩年

1591年、毛利輝元が広島城に入城すると、隆家も広島城内に屋敷を構えました。1593年に76歳で死去し、嫡孫の宍戸元続が後を継ぎました。宍戸氏は、毛利氏との縁戚関係から、江戸時代には萩藩の一門筆頭として重んじられました。

墓所

隆家の墓所は、菩提寺として建立した天叟寺跡にあります。墓石は宝篋印塔で、江戸時代には荒廃しましたが、後に整備されました。また、墓所の近くには、火葬地の伝承地もあります。

逸話

後世の系図では、家臣の讒言により叔父の宍戸隆忠を殺害したとされています。隆忠の祟りによって眼病を患い、謝罪することで治癒したとの伝承も残っています。隆忠の死については確かな史料で確認できませんが、隆忠と思われる人物を祀る神社が存在することから、非業の死を遂げたことは事実であると考えられています。

まとめ

宍戸隆家は、戦国時代から安土桃山時代にかけて、毛利氏の一門として活躍した武将です。数々の戦いで武功を挙げ、毛利氏の勢力拡大に貢献しました。また、政治的な側面では、毛利氏の領国運営に直接関わることはありませんでしたが、その武勇と忠義は後世にまで語り継がれています。




参考文献

防長新聞社山口支社編 編『近世防長諸家系図綜覧』三坂圭治監修、防長新聞社、1966年3月。
復刻版 田村哲夫編修 編「一門三丘宍戸家」『近世防長諸家系図綜覧』三坂圭治監修（復刻版）、マツノ書店、1980年11月。
三卿伝編纂所編、渡辺世祐監修『毛利輝元卿伝』マツノ書店、1982年1月。
三卿伝編纂所編、渡辺世祐監修『毛利元就卿伝』マツノ書店、1984年11月。
光成準治『毛利輝元 西国の儀任せ置かるの由候』ミネルヴァ書房〈ミネルヴァ日本評伝選〉、2016年5月。
宮本義己「足利将軍義輝の芸・豊和平調停」 木下昌規編『シリーズ・室町幕府の研究 第四巻 足利義輝』戎光祥出版、2018年。
安芸高田市歴史民俗博物館『宍戸隆家生誕500年記念 安芸宍戸氏～毛利一族、四本目の矢～』、2018年11月。
秋山伸隆「戦国期の宍戸氏と毛利氏」『宍戸隆家生誕500年記念 安芸宍戸氏～毛利一族、四本目の矢～』収録、2018年11月。
舘鼻誠「石塔から読み解く理窓院と安芸宍戸家―芸北における花崗岩および石灰岩石塔の検討―」『日本体育大学紀要』第49号、2020年。
光成準治「宍戸元源・隆家―毛利氏を支える四本目の矢」光成準治編『戦国武将列伝9 中国編』収録、戎光祥出版、2023年9月。

関連作品

『毛利元就』（1997年、NHK大河ドラマ、演：加勢大周）

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