数藤鉄臣

数藤鉄臣：内務官僚から仏門へ

数藤鉄臣（すどう かねおみ）は、1896年（明治29年）9月8日に生まれ、1994年（平成6年）3月26日に没した、日本の内務・警察官僚です。旧姓は村上といい、官選県知事や海軍司政長官を歴任しました。彼の生涯は、激動の時代を背景に、多様な経験と変化に富んでいます。

生い立ちと学歴

島根県を本籍とする旧松江藩士の家に、村上寿夫の二男として岡山県で生まれました。松江市北堀尋常小学校、松江中学校を経て海軍兵学校を志望しますが、試験前の水泳で外耳炎となり、身体検査で不合格となります。その後、1915年2月に第一高等学校の教授である数藤斧三郎の養子となり、数藤姓を名乗るようになりました。第一高等学校第一部甲類を卒業後、1920年10月に高等試験行政科試験に合格し、1921年4月に東京帝国大学法学部法律学科（英法）を卒業しました。

内務省でのキャリア

1921年7月に内務省に入省し、内務属として警保局図書課に配属されました。その後、和歌山県理事官・内務部社会課長兼商工課長、福岡県警視・警察部特別高等警察課長、警視庁警視・総監官房特別高等警察課長、同兼外事課長などを歴任し、警察官僚としてのキャリアを積みました。1926年11月には欧米各国への出張を命ぜられ、1927年3月に日本を離れ、1928年3月に帰国。さらに、同年9月にはロンドン駐在を命ぜられ、1930年3月に帰国しました。この間、思想問題担当の準備のため、第三インターナショナルやイギリス議会制度の研究を行いました。

地方官としての活動

1931年12月には徳島県書記官・警察部長に就任し、1932年6月には福岡県書記官・警察部長へと転任しました。福岡在任中には、二日市町（現筑紫野市）の正行寺の竹原嶺音住職の法話を聞き、入信しました。1936年4月には山梨県書記官・総務部長に転任し、その後も内務書記官・地方局監査課長、警保局警務課長、兼警察講習所教授、内務事務官兼内務書記官・大臣官房文書課長、企画院事務官・内閣情報部情報官、内務書記官兼内務大臣秘書官・大臣官房人事課長、傷兵保護院計画局長、軍事保護院援護局長などを歴任しました。

戦時下の活動

1941年1月7日には岐阜県知事に就任し、戦時体制の整備に尽力しました。1942年5月23日には、郷里の先輩である海軍民政部総監・岡田文秀の要請を受け、海軍司政長官に任じられセレベス民政部長官に就任しました。1943年7月1日には埼玉県知事に転任し、戦時体制の強化に尽力しました。1944年8月1日には軍事保護院副総裁に転じ、終戦を迎えました。

戦後と晩年

1946年1月25日には依願免本官となり退官しましたが、同年8月には公職追放となり、1951年8月に追放解除となりました。1951年9月には危篤の竹原嶺音を見舞った際に、「戦争を敗北に導いた責任者の一員として懺悔し、国家を精神的に救うために仏門に入り、一生を捧げよ」との竹原の言葉に従い、正行寺責任役員として生涯を終えました。

親族

義父に生物学者の岸上鎌吉がいます。

数藤鉄臣は、激動の時代を生き、多様な役割を担った人物でした。内務官僚、地方官、そして仏門へと、その人生は変化に富んでいます。彼の生涯は、日本の近現代史を理解する上で重要な手がかりとなるでしょう。

もう一度検索