斯波義淳

斯波義淳：室町時代の武将、二度の管領就任と数寄者としての一面

斯波義淳（しば よしあつ）は、室町時代中期に活躍した武将であり、守護大名です。斯波氏は足利氏の一門で、中でも高い家格を誇る家柄でした。義淳は、斯波氏（武衛家）の7代当主として、また室町幕府の9代、13代管領として、その名を歴史に刻んでいます。越前・尾張・遠江の守護も務め、政治的な手腕を発揮する一方で、文化や文芸にも深く傾倒した人物でした。

生涯

第一次管領就任

応永4年（1397年）に、管領斯波義重の嫡男として生まれました。11歳の時に元服し、将軍足利義持から偏諱を受け「義淳」と名乗ります。わずか13歳で管領に任じられますが、これは祖父である斯波義将の影響が大きかったと考えられています。しかし、実権は祖父にあり、義淳は名目的な存在でした。祖父の死後、管領職を辞任しています。

武衛家当主として

応永25年（1418年）に父が亡くなると、家督を継ぎ、越前・尾張・遠江の守護となります。以降は武衛家当主として活動し、朝鮮使節の応接や、光範門院の熊野参詣の接待などを行いました。将軍足利義量の死後には、義淳が次期将軍になるという噂も流れました。

義量の後継者を選ぶ際、足利一門から籤引きで選ぶことになり、義淳もその協議に参加します。その結果、足利義教が6代将軍に就任しました。

第二次管領就任

正長2年（1429年）、義淳は再び管領に任じられます。しかし、義淳はこれを固辞。将軍足利義教は、あの手この手で義淳を説得しようと試みますが、義淳の意思は固く、再三にわたり辞退を申し出ます。最終的には、義教自らが斯波邸に乗り込む構えを見せたため、根負けした義淳は管領就任を受諾しました。しかし、将軍との関係は良好とは言えず、政情は不安定でした。

関東使対面問題

永享3年（1431年）には、関東使対面問題を巡り、将軍義教と激しく対立します。鎌倉公方足利持氏と幕府の対立が深まる中、義教は持氏の叔父である足利満直と接近。関東管領上杉憲実と管領義淳は、鎌倉と幕府の和睦を模索しますが、義教は満直との関係を優先し、鎌倉からの使節との対面を拒否しようとします。義淳はこれに強く反対し、最終的には義教を説得して鎌倉使節との対面を実現させました。

管領辞職

関東政策が落ち着くと、義淳は度々管領辞職を申し出るようになります。義教は慰留に努めますが、義淳の意思は固く、永享4年（1432年）に管領を辞職しました。その後は病気がちとなり、後継者問題も発生しましたが、最終的には弟の斯波義郷が家督を継承しました。義淳は永享4年（1432年）12月1日に死去。享年37歳でした。

人物

斯波義淳は、足利一門の中でも高い家格を誇る斯波氏の当主として、その地位にふさわしい教養と品格を備えていました。朝鮮使節からは「将軍に次ぐ地位にある人物」と評され、将軍家の後継者候補として名前が挙がるほどでした。

文化や文芸にも造詣が深く、特に数寄者として知られていました。狩猟を好む一面もありましたが、将軍義教からは度々諌められたようです。都から領国へ下国しようとしたり、管領就任を固辞したりするなど、奇矯な行動も目立ちました。しかし、管領就任の固辞は一貫した意思表示であり、斯波家にとって管領職が負担となっていたことを示唆しています。

義淳の奇矯な行動は、精神的な疾患が原因であるとする説もありますが、河村昭一はこれを批判し、風変わりな側面はあったものの、精神障害によるものとする評価は行き過ぎであるとしています。

関東使節の対面問題では、将軍と対立してまで鎌倉との和睦を優先するなど、政治的な信念を持つ人物でもありました。斯波義淳は、室町時代中期という激動の時代を生き抜いた、複雑な व्यक्तित्वの持ち主だったと言えるでしょう。

官歴

応永14年（1407年）：元服。従五位下治部大輔に任官。
応永16年（1409年）：8月、管領に任ぜられる。
応永17年（1410年）：6月、管領を辞する。
応永25年（1418年）：8月、武衛家家督を継承。越前・尾張・遠江守護に任ぜられる。左兵衛佐に昇る。
永享元年（1429年）：8月24日、管領に再任。
永享4年（1432年）：10月10日、管領を辞する。
* 永享4年（1432年）：10月11日、海東郡（尾張）守護を兼任する。

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