新・栄光なき天才たち

新・栄光なき天才たち

『新・栄光なき天才たち』（しん えいこうなきてんさいたち）は、漫画家・森田信吾が手掛けた作品です。集英社の『週刊ヤングジャンプ』にて1993年から1994年にかけて連載され、単行本は同社のヤングジャンプ・コミックスより全3巻が刊行されました。

本作は、森田信吾の代表作の一つである『栄光なき天才たち』の続編として位置づけられています。

概要

前作に引き続き、歴史の中で正当な評価を受ける機会に恵まれなかった人物や、功績がありながらも十分に光が当たらなかった「天才たち」の人生に焦点を当てるという基本テーマは共通しています。しかし、本作では前作と比較して、より一般的に認知度が高い人物も一部含まれているのが特徴です。科学、スポーツ、芸術、経済、歴史など、様々な分野で非凡な才能を発揮しながらも、時代や環境の制約、不運な出来事などにより、その偉業や存在が埋もれがちだった人々の波乱に満ちた生涯や、知られざるエピソードが描かれています。読者は、これらの人物たちの情熱、苦悩、そして遺した足跡を知ることで、歴史の多角的な視点を得ることができます。

取り上げられた人物・組織

単行本各巻で紹介された人物・組織は以下の通りです。（カッコ内は紹介された人物の分野や特筆すべき点）

単行本 第1巻

トマス・ニューコメン（蒸気機関の実用化に重要な貢献をした発明家）
ジム・ソープ（ネイティブアメリカン出身で、オリンピックの混成競技で金メダルを獲得したアスリート）
三世・沢村田之助（病により手足を失いながらも、義足を使い舞台に立ち続けた伝説的な女形）
アレクサンドル・S・ポポフ（当時のロシアの状況により、その功績が十分に認められなかった無線通信の先駆者）
太田恭三郎（フィリピンのダバオ開拓に尽力し、日本人街の礎を築いた実業家）
ルドルフ・ニールリッヒ（アルペンスキーの世界選手権優勝者となるも、わずか25歳で不慮の事故により亡くなったスキーヤー）
ヤノシュ・ボーヤイ（数学における非ユークリッド幾何学という分野を切り拓いた研究者）

単行本 第2巻

C・R・マッキントッシュ（革新的な建築家であり、デザイナーとしても知られる）
西郷四郎（明治期に活躍した柔道家で、小説『姿三四郎』のモデルとされる）
ワルター・ツァップ（超小型カメラ「ミノックス」を開発した発明家）
高木徳子（日本のオペラやミュージカルの黎明期を支えたが、若くして急逝した歌手、ダンサー）
ブノワ・ルクワイロール（現代のスキューバダイビング用具に不可欠な「レギュレーター」を発明し、ジュール・ベルヌの小説『海底二万里』の着想にも影響を与えた人物）
山中貞雄（名作『人情紙風船』などで知られる戦前の映画監督。今後の活躍が期待されたが、28歳で戦地にて病没した）
テックス・リカード（プロボクシング興行界で「百万ドルの仕掛け人」と称され、トッププロモーターとして名を馳せた人物）

単行本 第3巻

カレル・チャペック（戯曲の中で「ロボット」という言葉を生み出し、世界に広めた作家）
ロベルト・クレメンテ（メジャーリーグにおけるヒスパニック系選手の先駆けであり、その高潔な人格でも尊敬を集めた選手）
若尾逸平（「今太閤」と称されるほど巨万の富を築いた、明治期日本を代表する実業家の一人であり、甲州財閥の中心的存在）
コンラート・ツーゼ（世界で初めてプログラム制御式のコンピュータを開発した科学者）
鈴木三重吉（児童雑誌「赤い鳥」を創刊し、日本の近代児童文学の発展に大きく貢献した人物）
高橋直人（「逆転の貴公子」の異名を持ち、劇的な勝利でファンを魅了したボクサー）
* ワイアット・アープ（アメリカ西部開拓時代において、伝説的な存在となった保安官）

これらの人物たちの物語を通じて、読者は単なる偉人伝とは異なる、人間味あふれるドラマや、歴史の裏側に隠された真実の一端に触れることができます。本作は、様々な分野で活躍した人々の功績を再認識させると同時に、彼らの生きた時代や困難に立ち向かう姿勢から多くの示唆を得られる作品と言えるでしょう。

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