新井忠雄

新井忠雄

新井忠雄（あらい ただお）は、天保6年2月7日（1835年3月5日）に生まれ、明治24年（1891年）2月15日に亡くなった、幕末の武士です。彼は新選組の隊士として知られ、後に御陵衛士としても活動しました。

生涯

生い立ちと新選組入隊

新井忠雄は陸奥国磐城平藩（現在の福島県いわき市）の出身です。母方の新井家を継ぎました。18歳で江戸に出て生活を始め、元治元年（1864年）頃、31歳で新選組に入隊しました。新選組では、諸士調役兼監察、撃剣師範という役職を務めました。

酒豪伝説と三条制札事件

新井忠雄は大酒飲みであったという逸話が残っています。慶応2年（1866年）9月の三条制札事件の際には、大量の酒を飲んだ後、泥酔状態で現場に駆けつけ、戦闘に及んだと伝えられています。この事件での彼の行動は、新選組内でも特異なものであったと考えられます。

御陵衛士への転身

慶応3年（1867年）1月、新井忠雄は伊東甲子太郎と共に九州を遊説し、3月に帰京しました。その後、伊東らと共に新選組を離脱し、御陵衛士を結成しました。御陵衛士は、高台寺の塔頭である月真院を屯所としたため、伊東甲子太郎を筆頭に「高台寺党」とも呼ばれました。

御陵衛士には、伊東甲子太郎、新井忠雄の他に、伊東の実弟である三木三郎、藤堂平助、服部武雄、篠原泰之進、阿部十郎、富山弥兵衛、内海二郎、加納鷲雄、橋本皆助、毛内監物、清原清、佐原太郎、中西昇、斎藤一の16名が参加していました。

油小路事件と戊辰戦争

しかし、御陵衛士は油小路事件によって崩壊し、新井忠雄は薩摩藩邸に逃れて生き残りました。その後、鳥羽・伏見の戦いでは薩摩軍に属して出陣しました。戊辰戦争では、赤報隊（徴兵七番隊）に加わり、軍曹として庄内および新潟で戦いました。

明治維新後

明治維新後、新井忠雄は司法省官吏として明治政府に出仕し、刑部省の官僚となりました。彼は明治24年（1891年）に亡くなりました。享年57歳でした。彼の諡は「一業（かずなり）」です。

人物像

新井忠雄は、新選組時代からその武術の腕前が知られていましたが、大酒飲みという一面も持ち合わせていました。新選組から御陵衛士、戊辰戦争と激動の時代を生き抜き、維新後は官僚としてその能力を発揮しました。彼の波乱に満ちた生涯は、幕末から明治へと移り変わる時代の変化を象徴するかのようです。

参考文献

鈴木亨『再現・新選組―見直される青春譜』三修社、2007年12月1日。ISBN 978-4384041439。
中村彰彦『新選組紀行』PHP研究所、2015年7月3日。ISBN 978-4569763989。
木村幸比古『新選組日記』PHP研究所、2003年6月16日。ISBN 978-4569630083。
歴史群像編集部『全国版幕末維新人物事典』学習研究社、2010年3月3日。ISBN 978-4054044630。

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