新京成電鉄800形電車

新京成電鉄800形電車

新京成電鉄800形電車は、1971年に登場した新京成電鉄の通勤形電車です。本項では、一時的に北総開発鉄道（現・北総鉄道）へ譲渡された編成についても記述します。

概要

[1971年]]から1975年にかけて、制御電動車(Mc)のモハ800形801 - 818、付随車]のサハ850形、[制御車]のクハ850形851 - 868の合計36両が[[日本車輌製造で製造されました。1971年に落成した1次車は、製造途中に日本車輌東京支店（蕨工場）が閉鎖されたため、鋼体を名古屋の熱田工場へ運び艤装されました。翌1972年に落成した2次車は熱田工場で、3次車以降は豊川蕨工場で製造されました。

新京成電鉄が初めて自社発注した車両は1970年に東急車輛製造で製造されたモハ250形とサハ550形でしたが、これらは京成の旧型車から機器を流用したものであり、実質的な初の自社発注車両はこの800形となります。形式は、京成電鉄と新京成電鉄で空いている番号を選び、「末広がり」の意味を込めて800形とされました。

入線当初は閑散時にモハ - サハ - サハ - モハの4両編成、ラッシュ時にモハ - クハを増結していましたが、利用客の増加に伴い、終日6両編成での運用となりました。京成高砂駅 - 京成津田沼駅間で京成本線を自力回送したこともあります。

後年、中間電動車や付随車への改造、老朽化による廃車が進み、2010年時点では8両編成2本、計16両が在籍していましたが、7月17日のダイヤ改正で残りの2編成も廃車されました。

車体

車体は全長18,000mm（車体長17,500mm）、幅2,744mmの普通鋼製です。側面の窓配置はd1D4D4D2（dは乗務員扉、Dは客用扉、数字は窓の枚数を表す）で、客用扉は小窓の片開き式、客用窓は下段上昇・上段下降の2段式です。客用扉の小窓は京成3100形（初代）の3121-3124編成と同じサイズです（同編成は冷房改造後に大窓に交換）。雨樋の位置を高くした張上げ屋根構造で、屋上にはグローブ式ベンチレーターが設けられています（室内には東芝製の扇風機が設置）。

外観は、当時新京成電鉄の主力であった旧型車に準じたデザインで、全長や前照灯の位置に違いがあるものの、全体的に共通する印象を与えます。

登場時の塗色は、上半分がキャンディピンク、下半分がマルーンのツートンカラーでしたが、1980年からはアイボリーをベースにブラウンの帯が入った現在の標準色に変更されました。

機器類

制御方式: 電動カム軸多段式1C4M抵抗制御（三菱電機製ABFM-124型制御装置）、直並列制御、弱め界磁制御
電動機: 直流直巻電動機、出力120kW、端子電圧750V（三菱電機製MB-3183A型）
駆動方式・歯車比: WN平行カルダン駆動、82:15 (5.47)
ブレーキ: （旧）自動空気ブレーキ → （新）発電ブレーキ併用電磁直通空気ブレーキ（HSC-D形）
台車: [住友金属工業]]製ペデスタル（軸ばね）方式軸箱支持+外吊り方式枕ばね（コイルばね）台車（電動車(M)：FS329S2型、[[付随車]：FS329S1型）
編成: 4両固定（MT比2M2T）+2両固定(MT比1M1T) → 6両固定(MT比4M2T)と8両固定（MT比5M3T）
起動加速度: 2.4km/h/s（当初の3M3T編成）→ 3.0km/h/s（4M2T・5M3T）
保安装置: 新京成電鉄、京成電鉄、北総鉄道、京浜急行電鉄、芝山鉄道、東京都交通局（都営地下鉄）浅草線で使用されている1号型ATS及びC-ATS
冷房装置: 三菱電機製CU-15A型分散式冷房装置（能力10,500kcal/h（44.1kWh））×3基/両（1両31,500kcal/h≒132.3kWh）

更新工事

1985年から1989年にかけて、冷房化改造を含む更新工事が行われました。

冷房装置の搭載: 京成3200形更新車と同様の集約分散式冷房装置CU-15Aを1両あたり3基搭載。グローブ式ベンチレーターを撤去し、室内の扇風機は冷風撹拌のために再利用されました。
貫通扉の廃止: 利用者増加により常時6両編成で運用されるようになったため、更新工事前から両端の電動車の貫通扉は溶接固定され、貫通幌は撤去されました。正面では尾灯の交換や行先表示器の設置も行われました。初期に改造された編成では冷房化後も貫通扉は固定されていなかったものの、ドアノブは残っていました。
乗務員室の改造: 乗務員室機器の配置を8000形と同様に改造し、運転席側の床を助士席側と同じ高さに揃え、乗務員室扉も8000形と同じものに交換。この改造に伴い、貫通扉が固定されました。
中間組み込み車の運転台撤去: 中間組み込み車は運転台を撤去。機器や前照灯、尾灯、仕切戸の撤去のみの軽微なものでした。クハ850形は運転台撤去に伴いサハ850形に形式変更されました。
ブレーキの改造: 自動空気ブレーキからHSC-D形発電ブレーキ併用電磁直通空気ブレーキに改造されました。
編成の8両化: 一部編成で8両化が行われました。編成の組み換えにより、中間車化された車両では運転台が完全に撤去されて客室となりました。8両編成は前面が再度改造され、方向幕の移設、側面方向幕の設置、前照灯・尾灯の移設（京成3200形更新車のような配置）がされました。

北総への譲渡と新京成への復帰

1991年、北総開発鉄道II期線（高砂 - 新鎌ヶ谷間）開業に伴い、北総が新京成線松戸直通列車を運行するために、806編成が北総800形として譲渡されました。しかし翌1992年、新京成⇔北総の相互直通運転が廃止されたため、新京成に買い戻されました。

北総譲渡時代は新京成の社章プレートが撤去されていましたが、新京成復帰時に車番が切り抜き文字からステンレス板へのペイント文字に変更され、社章も復活しました。この編成のみ、ステンレス製の幌枠飾りが光沢仕上げになっています。

出力増強に伴う編成替え

1995年、東葉高速鉄道東葉高速線の開業（1996年4月26日）に先立ち、新京成線のダイヤ改正が行われました。加速度強化と最高速度85km/hに対応するため、MT比向上による出力増強が実施されました。

この改造で、8900形8928編成（2次車）導入によって余剰となった8両編成のうち、制御電動車4両を中間車化し、他の4編成に組み込みました。これにより、編成から外れた付随車8両は廃車・解体されました。中間車化された制御電動車は、運転台部分を切断し、解体される付随車の切妻構体を接合する改造が施されました。

車内塗装

内装はベージュのデコラ張りでしたが、汚れが目立つようになったため、1997年からクリームイエローに塗装されました。806編成から始まり、全編成に施工されました。ただし、客用扉の室内側はステンレス無塗装のままです。

廃車・その他

2004年下期頃から、老朽化に伴い後継のN800形への置き換えが始まり、2005年6月に802編成が廃車されました。2006年12月10日からは、暫定的に6両編成1本（818編成）が京成千葉線との直通運転に使用される予定でしたが、8800形の一部編成を6両化して直通運転に使用する計画に変更されたため、800形の直通運転は中止されました。818編成は、8800形を組み替えた後、2007年1月中旬に廃車されました。

806編成と810編成は、2010年7月17日のダイヤ改正で定期運用から離脱し、翌週の7月24・25日に「さよなら800形イベント」が開催されて営業運転を終了しました。

また、くぬぎ山研修所内には本形式のシミュレータが、中間車化で切断された先頭部（807号車）を活用して設置されており、年に1回の車両基地公開日に一般公開されています。

参考文献

慶應義塾大学鉄道研究会（編）『私鉄電車のアルバム 4 デザイン・技術の革命』交友社、1984年。
成田喜八、諸河久『私鉄の車両12 京成電鉄 新京成電鉄 北総開発鉄道 住宅・都市整備公団』保育社、1986年。ISBN 4-586-53212-2。
根本雪和「私鉄フォーラム第38回 新京成電鉄」『鉄道ダイヤ情報』第73号、弘済出版社、1990年5月、64-75頁。
* MODELERS FILE・新京成800系、「とれいん」No.385 (2007年1月号) p.44-51、プレスアイゼンバーン。

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