新居水竹

新居水竹（にい すいちく）

新居水竹は、江戸時代末期に活躍した徳島藩士であり、漢学者・詩人としても名を残しています。文化10年（1813年）に徳島で生まれ、明治3年（1870年）に庚午事変の責任を問われ、切腹という形で生涯を閉じました。

生涯

幼名は与一助。父は徳島藩の料理方を務める新居春洋。水竹は幼少の頃から漢学を学び、詩書に長じていました。その教育には、父の春洋の他、柴野碧海、那波鶴峰、岩本贅庵、鉄復堂といった学者たちが携わりました。

天保9年（1838年）に父が自刃したため、家督を相続。その後、12代藩主・蜂須賀斉昌の侍臣となり、嘉永3年（1850年）には斉昌に従って江戸に赴き、昌平黌などで学んでいます。帰国後は日帳格・庭方といった役職を歴任しました。

安政6年（1859年）には13代藩主・蜂須賀斉裕の中小姓となり、万延元年（1860年）には14代藩主・蜂須賀茂韶の侍講を務めました。文久2年（1862年）から文久3年（1863年）にかけては、藩命により京都に度々入り、時事への対応に奔走。同年閏8月には大小姓となりますが、八月十八日の政変により失脚し、池田村郷学校の教授となりました。

明治維新後、明治元年には池田村郷学校教授の任を解かれ、明治2年正月には徳島の長久館教授となります。同年5月には金陵会議（四国会議）へ藩命により参加。同年8月には長久館学頭に就任しました。

庚午事変と切腹

版籍奉還に伴い、稲田家の分藩運動が起こると、明治3年（1870年）4月、徳島藩士と稲田家臣の説諭のため、小室信夫・立木兼善が来藩。新居水竹は、藩士総代10名を東京の新政府に派遣し歎願する際の監督として、小倉富三郎と共に選ばれました。

上京後、総代たちの間で稲田家処罰の議論が高まり、水竹らは彼らを説得しましたが、抑えることができず、5月6日早朝、大村純安ら8名が洲本などを襲撃する庚午事変を引き起こします。

水竹はその責任を問われ、切腹を命じられました。明治3年9月15日、東京芝白金の徳島藩邸において、原謹吾の介錯、益田武衛の介添えにより切腹。享年58歳でした。この切腹は、日本法制史上、明治以降に切腹が執行された事例の一つとして記録されています。

墓所

遺髪は、小心塾時代の弟子であった近藤廉平（元日清汽船社長、日本郵船会社社長）によって、徳島市の潮見寺に葬られています。

新居水竹の生涯は、幕末という激動の時代における一藩士の苦悩と、時代の流れに翻弄されながらも自らの信念を貫いた姿を伝えています。

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