日本とイスラエルの関係

日本とイスラエルの関係は、政治、経済、文化など多岐にわたる分野で展開されています。両国間の歴史的な背景や、現代の協力関係、今後の展望について詳しく見ていきましょう。

前史

イスラエル建国以前、ユダヤ人は世界各地に離散（ディアスポラ）していました。日本が開国したことで、両者の接点が生まれました。日露戦争時には、ユダヤ人銀行家ジェイコブ・シフが日本を支援し、その後の日本の発展に大きく貢献しました。しかし、シベリア出兵を機に反ユダヤ主義が日本にも流入し、第二次世界大戦にかけてその影響が広がりました。日本はナチス・ドイツと防共協定を結びましたが、ホロコーストには加担せず、満州国へのユダヤ人難民受け入れを検討した「河豚計画」も存在しました。また、リトアニア駐在の外交官・杉原千畝のように、ユダヤ人亡命を支援した日本人もいました。
樋口季一郎陸軍中将は、満州国境まで逃れてきたユダヤ難民をオトポールから上海租界まで脱出させる「オトポール事件（ヒグチ・ルート）」で知られています。

国交樹立と外交関係

1948年5月14日、古代イスラエルの故地（パレスチナ）にイスラエルが建国されました。第二次世界大戦後、日本は1952年4月28日に主権を回復し、その直後の同年5月15日にイスラエルを承認しました。同日、イスラエルは東京に公使館を開設し、両国間の国交が開始されました。1963年には、両国関係は大使レベルに昇格しました。

日本は、イスラエルと対立するアラブ諸国やパレスチナ自治政府とも良好な関係を維持し、中東戦争などでは中立的な立場を保っています。これは、日本がアラブ諸国から原油・天然ガスを輸入している経済的な理由も背景にあります。しかし、1972年には、パレスチナに同情的な日本人過激派によるテルアビブ空港乱射事件が発生するなど、複雑な側面も抱えています。

両国関係

日本政府は、イスラエルの首都をエルサレムとは認めておらず、テルアビブに公使館を設置しています。両国間では、1993年に租税条約、1995年に科学技術協力協定、2000年に航空協定が締結されました。

2020年10月時点で、イスラエルには1,156名の日本人が在留し、日本には608名のイスラエル人が在住しています。

2006年、日本は中東和平への取り組みとして「平和と繁栄の回廊」構想を発表しました。この構想は、イスラエルとパレスチナ間の経済成長を促進するもので、両国間の紛争解決に向けた経済的アプローチを示唆するものでした。2008年には、日本政府は両者に同構想への取り組みを促し、エリコ近くに農産業施設を建設する準備があることを表明しました。

2011年3月11日に発生した東日本大震災では、イスラエルが外国政府として初めて医療支援チームを派遣しました。医師や看護師からなる医療チームは、宮城県南三陸町で医療活動を行い、復興に大きく貢献しました。また、使用した医療機器は、支援終了後に南三陸町へ寄贈されました。

日本はパレスチナを国家として承認していませんが、2012年11月29日にはパレスチナの国連での地位を「オブザーバー国家」に格上げする決議案に賛成しました。この決議案には、イスラエルやアメリカは反対しました。

2014年5月には、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相が来日し、安倍晋三首相（当時）と会談しました。会談では、安全保障協力や中東和平交渉について意見が交わされました。両首脳は、イスラエルとパレスチナの「二国家共存」による解決で一致し、先進科学技術やサイバーセキュリティ分野での協力推進に関する共同声明を発表しました。これを受け、2015年11月には大阪に西日本イスラエル貿易事務所が開設されました。

2015年1月には、安倍総理夫妻がイスラエルを公式訪問し、ネタニヤフ首相との首脳会談を行いました。安倍総理は、杉原千畝の功績や東日本大震災時のイスラエルからの支援に触れ、中東和平への協力を表明しました。また、イスラエルの入植活動については、国際法違反であるとの懸念を表明しました。

2015年末には、両国間の投資協定交渉が合意に達し、2016年2月1日に署名が行われました。

2017年12月21日、国連総会でエルサレムをイスラエルの首都と認定したアメリカの決定撤回を求める決議が採択された際、日本も賛成に回りました。この背景には、アメリカ国内の意見対立や、中東における日本の立場が考慮されたことが挙げられます。

2023年3月2日には、日本とイスラエルを結ぶ初の定期便となるエル・アル航空の成田-テルアビブ線が就航し、両国間の交流促進に拍車がかかっています。

イスラエルの国際法違反・侵略に対する日本の姿勢

日本政府は、イスラエルによるパレスチナへの入植活動を「二国家解決」を損なうものとして反対しています。また、イスラエルが実効支配するシリアのゴラン高原についても、イスラエルの併合を認めていません。

外交使節

日本とイスラエルは、それぞれ大使館を設置し、外交関係を維持しています。

駐イスラエル日本大使・公使

駐日イスラエル 大使・公使

20世紀以前の大使・公使は「駐日イスラエル大使」を参照

イツハク・リオール（2000～2003年）
エリ・コーヘン（2004～2007年）
ニッシム・ベン＝シトリット（2007～2013年）
ペレグ・パブロ・レヴィ（臨時代理大使、2013年）
ルート・カハノフ（2013～2017年）
イリット・サヴィオン・ヴァイダーゴルン（臨時代理大使、2017～2018年）
ヤッファ・ベンアリ（2018～2021年）
イスラエル・ストゥルロヴ（臨時代理大使、2021年）
ギラッド・コーヘン（2021年～）

外部リンク

駐日イスラエル大使館（日本語）（英語）（ヘブライ語）
日本外務省 - イスラエル（日本語）
在イスラエル日本国大使館（日本語）
JETRO - イスラエル
* JCCME - イスラエル

この文章では、日本とイスラエルの関係について、歴史的な背景から現代の協力関係まで、幅広く詳細に解説しました。両国間の理解を深める上で、この情報が役立つことを願っています。

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