日本の索道

日本の索道について

この文章では、日本における索道、特に「普通索道」（ロープウェイ、ゴンドラリフト）を中心に解説します。索道は、日本の法律上「鉄道事業法」に基づいて運営されていますが、その事業形態は「索道事業」として分類され、一般的には鉄道の一種とは見なされていません。

法規上の分類

日本において、索道は架空の索条（ワイヤーロープ）に搬器（ゴンドラ）を懸垂し、人や貨物を輸送する施設と定義されています。搬器の形状によって、大きく以下の二つに分類されます。

普通索道：扉付きの閉鎖型搬器を使用し、主に人や貨物を輸送する索道（ロープウェイ、ゴンドラリフト）。
特殊索道：外部に開放された座席型の搬器を使用し、人を輸送する索道（リフト）。

さらに、運転方式や索条の数によっても細かく分類されます。これらの要素の組み合わせによって、各索道が区別されています。

交走式：2つの搬器が駅間を交互に往復する方式（ロープウェイ）。
循環式：搬器が駅間を連続的に循環する方式（リフト）。
滑走式：搬器がなく、バーやロープを利用する方式（Tバーリフト、Jバーリフトなど）。
複線式：支索に搬器を懸垂し、曳索と平衡索で運転する方式。
単線式：1本の索条に搬器を懸垂して稼働する方式。
複式単線：単線式の一種で、駅間で索条が複数になる方式。

歴史

黎明期

日本における索道の歴史は古く、山間部の川などで「野猿」や「吊舟」といった原始的なものが利用されていました。機械を動力とする最初の索道は、1870年（明治3年）に鹿児島県佐多岬灯台建設用に設置された貨物索道です。現代的な鋼製索道としては、1890年（明治23年）に足尾銅山で貨物輸送用に採用された単線固定循環式が最初です。この索道は、アメリカから設備を輸入し、アメリカ人技師の指導の下で運用されました。その後、1902年（明治35年）には、足尾銅山の技師であった玉村勇助が独自の「玉村式索道」を考案し、1907年（明治40年）には玉村工務所を設立して国産化に貢献しました。

一方、旅客用としては、1912年（明治45年）に大阪市で開業した新世界初代通天閣とルナパークを結ぶ索道が日本初です。この索道は、イタリアのセレッティ・タンファーニ社が製造・施工し、支索・曳索1本ずつで運行する開放式で、定員は4人でした。1920年代まで運行されました。また、1914年（大正3年）には、東京で開催された大正博覧会で不忍池上空に索道が架設されましたが、博覧会終了とともに撤去されました。

本格的な旅客用索道の登場

1915年（大正4年）に安全索道商会（現・安全索道）が設立され、1921年（大正10年）には奈良市内に試験用の索道を建設し、旅客用索道の研究を開始しました。1927年（昭和2年）には、紀伊自動車が三重県の矢ノ川峠に旅客用索道を開業しました。この索道は、安全索道商会が受注し、全長1,254m、高度差382mで、1本の索条に定員2名の搬器を25個吊り下げる単線循環式でした。これを日本初の旅客用索道とする資料もあります。約10年間運行されましたが、道路の改良によりバス路線が開通したため、1936年に廃止されました。

1928年（昭和3年）には、福岡市の愛宕山に愛宕索道が開業しました。愛宕索道では、支索1本、曳索2本の3線交走式を初めて採用しました。同年には、仙台市で開催された東北産業博覧会でもロープウェイが運行され、京都市の比叡山にも比叡山空中ケーブルが開業しました。1929年（昭和4年）には、奈良県の吉野山に吉野ロープウェイが開業し、その後、神戸市の六甲山、三重県の二見浦、栃木県の日光にも開業しました。

1939年（昭和14年）には、埼玉県の三峰山に秩父鉄道の三峰ロープウェイが開業しました。これは当時、日本国内最大規模の索道でした。しかし、これらのロープウェイの多くは観光や参拝を目的としたものであったため、太平洋戦争の戦局悪化により、一部路線を除いて不要不急の施設とされ、戦前に廃止されました。

戦後の展開

戦後の復興が進み、1950年（昭和25年）頃から観光需要が高まったため、ケーブルカーでは戦時中に撤去された路線が復活する例が多く見られましたが、ロープウェイの復活は1例にとどまりました。しかし、新規開設も行われ、1955年（昭和30年）にはケーブルカーが19路線に対し、ロープウェイ（普通索道）は12路線ありました。1956年（昭和31年）には、山形交通（現・ヤマコー）が蔵王連峰に世界初の3線自動循環式ロープウェイ（蔵王ロープウェイ）を開業しました。同年には、定員30人の大型搬器も登場しました。

日本の普通索道一覧（現行）

現行の日本の普通索道（ロープウェイ、ゴンドラリフト）は、以下のような場所で運行されています。スキー場での利用が多いですが、観光や都市交通としての役割も担っています。

北海道: 札幌、キロロ、ニセコ、ルスツ、富良野など
東北地方: 八甲田、安比高原、蔵王、猪苗代、など
関東地方: 筑波山、鬼怒川温泉、那須、谷川岳、箱根など
中部地方: 弥彦山、湯沢高原、立山、昇仙峡、志賀高原、白馬、岐阜、熱海など
近畿地方: 御在所、比叡山、六甲山、吉野山、など
中国地方: 宮島、千光寺山など
四国地方: 太龍寺、寒霞渓、松山城、など
九州・沖縄地方: 長崎、雲仙、別府など

（詳細な一覧は省略）

休止・廃止された索道

かつて運行されていたものの、現在は休止・廃止されている索道も数多く存在します。

休止中の索道: 雫石スキー場、ニセコ東山スキー場、岩原スキー場、サッポロテイネ、アパリゾート妙高、奥道後ロープウェイなど
廃止された索道: 稚内公園、津別スキー場、会津若松、東京ディズニーランド、秩父鉄道、善光寺、比良ロープウェイ、アサヒテングストン、阿蘇山ロープウェイなど

（詳細な一覧は省略）

その他の情報

建設予定・計画・構想：石狩市、横浜、スキージャム勝山、神戸、福岡、関門海峡など
国内メーカー：日本ケーブル、安全索道、東京索道、LEITNER-POMA JAPANなど

日本の索道は、その歴史の中で技術革新を遂げ、観光や生活の足として重要な役割を果たしてきました。今後も、新たな技術の導入や利用者のニーズに応じた発展が期待されます。

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