日本債券信用銀行

日本債券信用銀行（にっぽんさいけんしんようぎんこう）とは

株式会社日本債券信用銀行（The Nippon Credit Bank, Ltd.）は、かつて存在した日本の長期信用銀行の一つで、債券発行を主な業務としていました。通称は日債銀（にっさいぎん）で、「ワリシン」や「リッシン」といった金融債が広く知られていました。1998年に経営破綻し、一時国有化された後、投資グループに売却され、2001年に現在のあおぞら銀行へと行名を変更しました。

歴史

旧朝鮮銀行の残余資産を基に設立

日本債券信用銀行の前身は、1909年に設立された朝鮮銀行です。朝鮮銀行は、朝鮮半島および関東州における中央銀行としての役割を担っていましたが、第二次世界大戦終結に伴い閉鎖機関となり、その残余資産を基に新たな銀行を設立する動きが起こりました。

1953年、星野喜代治を中心に新会社設立の諮問委員会が設けられ、不動産担保貸付を主とする「不動産銀行」の設立構想が打ち出されました。当初、大蔵省や既存の銀行は新銀行設立に反対しましたが、中小企業向けの長期資金貸付を主要業務とし、不動産を担保とする新銀行設立が、長期信用銀行法に基づき認められることになりました。

この設立には政治的背景も影響しており、設立に尽力した勝田龍夫は、福田赳夫などの政治家や大蔵官僚と親交があり、その人脈が設立を後押ししたとされています。1957年4月1日、株式会社日本不動産銀行が資本金10億円で設立され、星野が初代頭取に就任しました。

高度経済成長期と業務拡大

日本不動産銀行設立は、高度経済成長期と重なり、中小企業などの旺盛な資金需要に応える形で業績を急速に拡大しました。1957年には利付金融債、1958年には割引金融債の発行を開始し、これらは個人や金融機関に広く受け入れられました。1960年代には、中小企業に加え、中堅企業や大企業との取引も拡大し、長期信用銀行としての基盤を確立しました。

不動産金融においては、不動産担保融資だけでなく、「長期信用銀行としての独自性」を発揮する分野として、住宅融資や建設業、不動産業、私鉄業向けの事業金融も積極的に展開しました。1970年代には、外国為替業務やシンジケートローン業務など、国際業務も拡大しました。

石油危機からバブル経済へ

1970年代後半には、不動産不況の影響で多額の不良債権を抱え、経営不安が囁かれるようになりました。また、闇社会との関係や、不正融資に関わる報道も相次ぎ、社会的な信用を失墜させました。

1977年には、創立20周年を機に行名を株式会社日本債券信用銀行に変更し、不動産担保金融から債券発行銀行としての路線転換をアピールしました。1980年代には、金融自由化や国際化に対応するため、組織改革や情報処理体制の構築を進めました。また、公共債の窓口販売やディーリング業務にも積極的に取り組みました。

しかし、バブル経済期には、積極融資路線が拡大し、特に不動産関連やノンバンクへの融資が膨らみました。その結果、バブル崩壊後に巨額の不良債権を抱えることになりました。

バブル崩壊と経営破綻

バブル崩壊後、日本債券信用銀行は、不良債権の処理に苦しみ、粉飾決算や飛ばしといった不正行為も発覚しました。1994年には海外から全面撤退し、系列ノンバンクの破綻処理を進めましたが、経営危機は深刻化する一方でした。1997年には自己資本比率が国内基準を割り込み、経営再建のために公的資金の注入を受けました。

1998年、同じ長期信用銀行の日本長期信用銀行が経営破綻し、国有化されたことを受け、日債銀も破綻処理すべきだとの声が強まりました。同年12月、金融庁の検査で債務超過が認定され、金融再生法により特別公的管理下に置かれ、一時国有化されました。

投資グループへの売却とあおぞら銀行への移行

2000年、ソフトバンク、オリックス、東京海上火災保険などから成る投資グループに売却され、2001年には現在のあおぞら銀行へと行名が変更されました。売却に際しては、巨額の公的資金が投入されました。

責任追及

経営破綻後、旧経営陣に対する責任追及が行われ、粉飾決算に関与したとして逮捕・起訴されましたが、最終的には無罪が確定しました。また、不良債権を発生させたとして、整理回収機構（RCC）が旧経営陣に対して損害賠償を求めた裁判では、一部の経営陣に賠償が命じられました。

年表

1957年：長期信用銀行法に基づき日本不動産銀行として設立。
1977年：株式会社日本債券信用銀行に行名変更。
1998年：経営破綻し、一時国有化。
2001年：あおぞら銀行に行名変更。

イメージキャラクター

草笛光子（1979年 - ）
鶴田真由（1990年 - ）

まとめ

日本債券信用銀行は、高度経済成長期に発展を遂げたものの、バブル経済の崩壊により経営破綻に至りました。その歴史は、日本の金融業界における構造的な問題や、経営者の責任、そして公的資金の投入といった、多くの教訓を示唆しています。現在のあおぞら銀行は、その教訓を活かし、新たな金融機関として成長を続けています。

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