旧住友銀行東松原支店

旧住友銀行東松原支店は、かつて広島市南区に存在した住友銀行の支店でした。この建物は、大正時代に住友銀行の支店として建設され、後に呉服卸売業を営む「谷口株式会社」の店舗として利用されていました。しかし、広島駅周辺の再開発事業により、惜しまれつつも取り壊されることとなりました。

概要

旧住友銀行東松原支店は、JR広島駅から南へ約200メートルの場所に位置し、猿猴橋東詰、旧西国街道沿いに建っていました。鉄筋コンクリートで補強された煉瓦造りの2階建てで、正面のアーチ状の装飾が特徴的な建物でした。この建物は、広島に残る大正時代のモダン建築であり、被爆建物の一つでもありました。当初の設計は住友合資会社工作部（現在の日建設計）、施工は大林組が担当しました。その後の改修については詳細が不明です。

住友銀行は合併を経て三井住友銀行となりましたが、現在、広島市内に店舗として存在するのは紙屋町の広島支店のみです。この広島支店は、かつて「人影の石」があった旧住銀広島支店の場所です。

歴史

1921年（大正10年）7月、この場所に「住友銀行広島支店東出張所」として建てられました。その後、1929年（昭和4年）に支店に昇格し、「住銀東松原支店」と名称が変更されました。

1945年（昭和20年）8月6日、広島市への原子爆弾投下により被爆しました。爆心地から約1.89キロメートルに位置していたため、爆風により大きく損傷し、西側の鉄扉は大きく湾曲しました。また、熱線により全焼しましたが、倒壊は免れました。当時、東松原支店には18人の従業員が勤務しており、住友銀行全体では広島支店と東松原支店合わせて29人が犠牲となりました。しかし、この支店だけで何人が亡くなったかは不明です。

簡単な修理後、同年8月27日には、爆心地近くで壊滅した住銀広島支店が一時的に移転し、合同で営業を再開しました。当時、周囲は闇市で賑わっていました。

1959年（昭和34年）には、広島駅前に住銀広島駅前支店が開業し、東松原支店は移転しました。その後、繊維問屋の十和（現在のアスティ）がこの建物を取得し、倉庫として利用しました。

1970年（昭和45年）、谷口織物が建物を取得し、正面入り口と中2階を新設し、屋上には住居を増築しました。谷口織物によって、2009年（平成21年）までこの建物は利用されました。

その後、広島市によりこの地区の再開発が行われることになり、建物全体の保存も検討されました。しかし、莫大な補修費用がかかることから、最終的に取り壊しが決定されました。被爆により湾曲した西側の鉄扉のみがモニュメントとして残されることとなりました。このモニュメント保存事業には、広島赤十字・原爆病院窓枠・壁面に次いで、2例目となる助成金が検討されました。2013年（平成25年）に建物は解体され、跡地には再開発ビルであるシティタワー広島とBIG FRONTひろしまが建設され、2016年に完成しました。湾曲した西面の鉄窓は、建物の南側の壁に埋め込まれています。

参考資料

“被爆建物 最後の８・６ 駅前再開発で取り壊しへ”. 中国新聞 (2012年8月5日).

関連項目

旧日本銀行広島支店
旧帝国銀行広島支店（広島アンデルセン）
広島銀行銀山町支店

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