早川博二

早川博二（はやかわ ひろつぐ、1925年1月15日 - 2004年4月15日）は、日本の音楽シーンにおいて多角的な才能を発揮した人物である。トランペット奏者として出発し、やがて作曲家、編曲家としても傑出した能力を示した。特に歌謡曲の分野で広く知られ、また自身の率いる早川博二&モダン・ポップス・オーケストラでは指揮者も務めるなど、その活動範囲は多岐にわたった。

早川博二は作曲家として、多様なジャンルやアーティストに多くの楽曲を提供した。園まりのヒット曲として知られる「夢の散歩道」や「ヴィーナスのたて琴」は、信楽順三の作詞による彼の作曲作品であり、甘く切ないメロディで聴衆を魅了した。また、国際的な評価も高い歌手、菅原洋一のために、はかま満緒作詞の「二つのハンカチ」、駿河あきら作詞の「若い命よいつまでも」といった楽曲を書き下ろしている。男性コーラスグループのザ・キング・トーンズにも多数の楽曲を提供しており、特に彼らの代表曲の一つである「暗い港のブルース」（作詞：なかにし礼）は、早川博二の作曲によるもので、その深い情感あふれるメロディは今も語り継がれている。他にも、ザ・キング・トーンズのために大日方俊子作詞の「家へ帰ろう」「星空のアリア」といった楽曲を作曲した。彼の作曲活動はこれだけに留まらず、異色の社会派コミックソングとして大ヒットした、左卜全とひまわりキティーズが歌唱する「老人と子供のポルカ」や、その流れを汲む若水ヤエ子とひまわりキティーズによる「かあちゃんと子供のアンダンテ・カンタービレ」といった、ポピュラー音楽の枠を超えたユニークな作品も生み出した。さらに、漫画家・はるき悦巳が作詞し、中山千夏が歌った「バケツのおひさんつかまえた」は、惣領泰則との共作ながら、早川博二の作曲家としての懐の深さを示す一例と言えるだろう。これらの作品群は、彼の作曲家としての多様な才能と、時代のニーズに応える柔軟性を示している。

優れた編曲家としても、早川博二は数多くの名曲に貢献した。菅原洋一の代表曲の一つ「今日でお別れ」は、後に再録音されるが、1967年に初めて発表された際の編曲は彼の手によるものであり、その初期のサウンドを形作った。また、ザ・キング・トーンズのヒット曲「グッド・ナイト・ベイビー」（作詞：ひろ・まなみ、作曲：むつ・ひろし）の編曲も担当し、楽曲の世界観をより一層引き立てた。菅原洋一が歌唱した、阿久悠作詞、森田公一作曲の「乳母車」の編曲も手掛けている。さらに、フォークシンガー森田童子が作詞・作曲・歌唱した印象的な楽曲「さよなら ぼくの ともだち」の編曲も彼によるもので、ジャンルを超えた幅広い対応能力を示した。彼の編曲は、原曲の持つ魅力を損なうことなく、新たな響きや深みを与えるものとして評価されている。

歌謡曲やポピュラー音楽での活動と並行して、早川博二は他の音楽分野にも足跡を残している。特に、吹奏楽の分野では、1982年度の全日本吹奏楽コンクールの課題曲として「アイヌの輪舞」を提供しており、吹奏楽界にもその名を知らしめた。また、横浜若葉台団地内にあった横浜市立若葉台西小学校（2007年3月閉校）の校歌も作曲するなど、地域社会に貢献する音楽活動も行った。その他にも、「都こんぶの唄」といった、広く親しまれたコマーシャルソングを手掛けるなど、その活動は多岐にわたった。

トランペット奏者として始まり、作曲家、編曲家、そして指揮者として日本の音楽界に貢献した早川博二は、2004年4月15日に79歳で逝去した。歌謡曲を中心に、吹奏楽や校歌、CMソングに至るまで、幅広いジャンルで質の高い作品を生み出し続けた彼の功績は大きい。彼が手掛けた楽曲は、今もなお多くの人々に歌われ、聴き継がれており、日本のポピュラー音楽史における重要な一頁を飾っている。

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