時刻表おくのほそ道

『時刻表おくのほそ道』（じこくひょうおくのほそみち）は、日本の紀行作家、宮脇俊三氏が著した鉄道紀行文でありエッセイ集です。1982年4月に文藝春秋から単行本として刊行されました。

本書では、著者である宮脇氏と、当時の文藝春秋の編集者である名取昭氏（伊予鉄道までの旅を担当）、そして後に編集担当となった明円一郎氏（小湊鉄道・銚子電気鉄道以降の旅を担当）が共に各地の鉄路を巡る旅の模様が描かれています。取り上げられているのはいずれも地方を走るローカル私鉄ですが、単に列車に乗るだけでなく、その駅や沿線の雰囲気、そして目的地となる鉄道路線へたどり着くまでの道のりや周辺の風景なども、細やかな筆致で描写されています。

これらの紀行文は、もともと雑誌『オール讀物』に1981年1月号から合計16回にわたって連載されたものをまとめ直したものです。

以下、本書に収録されている各章で取り上げられている鉄道路線です。

三菱石炭鉱業大夕張線
野上電気鉄道・有田鉄道・紀州鉄道
津軽鉄道
福井鉄道
鹿児島交通
伊予鉄道
小湊鉄道・銚子電気鉄道
鹿島臨海鉄道・鹿島鉄道・日立電鉄
上毛電気鉄道・上信電鉄
新潟交通・蒲原鉄道
一畑電気鉄道
同和鉱業片上鉄道線・別府鉄道
南部縦貫鉄道
岩手開発鉄道・栗原電鉄
下津井電鉄・加悦鉄道
遠州鉄道・岳南鉄道

本書が刊行された後に、ここに登場する多くの鉄道路線がその役目を終え、廃線となりました。具体的には、三菱石炭鉱業大夕張線、野上電気鉄道、有田鉄道、鹿児島交通、鹿島鉄道、日立電鉄、新潟交通、蒲原鉄道、同和鉱業片上鉄道線、別府鉄道、南部縦貫鉄道、栗原電鉄、下津井電鉄、加悦鉄道といった、実に14もの路線が現在では失われています。そのため、『時刻表おくのほそ道』は、かつて日本の各地に確かに存在したローカル線の情景や、そこに流れていた時間、そして著者が実際にその路線の車両に乗車した記録として、鉄道ファンのみならず、鉄道史や地域の歴史を知る上で大変貴重な文学作品となっています。

本文に添えられた挿絵は、旅情を掻き立てる矢吹申彦氏による温かみのある手書きのイラストです。

本書の書誌情報は以下の通りです。

文藝春秋（単行本）: 1982年4月刊行, ISBN 978-4163372402
文春文庫（文庫本）: 1984年1月刊行, ISBN 4167331012, 解説: 福田宏年
* 『宮脇俊三鉄道紀行全集』にも収録されています。

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