暗越奈良街道

暗越奈良街道：生駒山地を越える歴史の道

暗越奈良街道は、大坂（現在の大阪市）から奈良（平城京）へと至る、歴史深い街道です。生駒山地の急峻な暗峠を越えることから、その名が付けられました。奈良街道、伊勢参宮街道の一部を担い、古くから交通の要衝として重要な役割を果たしてきた道です。奈良側では「暗越大坂街道」とも呼ばれています。

街道ルートと歴史

街道は難波を起点に東へ進み、東高野街道と交わる箱殿を経て、生駒山中に分け入ります。標高455メートルの暗峠を越えると大和国へ入り、生駒谷、榁木峠を経て、最終的に奈良へと至ります。

起点の変遷: 古くは玉造または中道村の二軒茶屋が起点でしたが、明治9年（1876年）に高麗橋東詰へ変更されました。
距離: 二軒茶屋から奈良間は、約8里8町（約33キロメートル）でした。
急勾配: 暗峠から生駒谷への区間は、特に急勾配の険しい坂道となっています。
江戸時代の賑わい: 江戸時代には脇往還として整備され、大名の参勤交代路としても利用されました。郡山藩の本陣や旅籠、茶店などが街道沿いに立ち並び、にぎわいをみせていました。
鉄道開通後の変化: 明治23年（1890年）、大阪鉄道（現在のJR大和路線）が開通すると、街道の賑わいは次第に衰えていきました。
古代からの道: 奈良時代には、難波と平城京を最短距離で結ぶ重要な道路として機能し、防人や外国使節も通行しました。『五畿内志』では「南都道」として記されています。
近世: 江戸時代後期には、庶民の伊勢参宮道としても利用されました。
近代: 大正時代には、大阪と奈良を結ぶ鉄道敷設の際、この街道沿いにケーブルカーを設置する案も検討されましたが、最終的には生駒トンネルが建設されました。
現在: 現在では、国道308号および大阪府道・奈良県道702号大阪枚岡奈良線が、この街道をほぼ踏襲しています。1986年には、奈良市三条町から生駒市西畑暗峠までの約13.3キロメートル区間が「日本の道100選」に選定されています。

沿線の見どころ

街道沿線には、歴史的な建造物や自然豊かなスポットが数多く存在します。以下はその一部です。

大阪市: 高麗橋、玉造稲荷神社、深江稲荷神社（笠縫村：菅笠の名産地だった）
東大阪市: 枚岡公園、枚岡神社
生駒市: 暗峠、小瀬保健福祉ゾーン（足湯と温泉スタンドあり）
奈良市: 榁木峠、子供の森（奈良県立矢田自然公園）、村井家住宅、追分梅林、平城京跡（朱雀門・朱雀大路）、垂仁天皇陵

交通アクセス

街道沿線へのアクセスは、Osaka Metroや近鉄線、奈良交通バスなどを利用できます。具体的な駅からの徒歩時間などは、個々のスポットによって異なります。

参考文献

『日本歴史地名大系 奈良県の地名』（平凡社、1981年）
『日本歴史地名大系 大阪府の地名』（平凡社、1986年）
『角川日本地名大辞典 27 大阪府』（角川書店、1990年）
『角川日本地名大辞典 29 奈良県』（角川書店、1990年）
『日本の道100選〈新版〉』（ぎょうせい、2002年）
『歴史の道調査報告書集成2 近畿地方の歴史の道<2>大阪2』（海路書院、2005年）
『街道の日本史33 大坂 摂津・河内・和泉』（吉川弘文館、2006年）

まとめ

暗越奈良街道は、古代から現代まで、人々の生活や歴史に深く関わってきた重要な街道です。その歴史的・文化的価値を理解し、未来へ繋げていくことが重要です。

もう一度検索