曹景宗

曹景宗：南朝を駆け抜けた武将の生涯

曹景宗（そう けいそう、457年 - 508年）は、南朝の宋、斉、梁の時代を生きた武将です。字は子震。新野郡（現在の河南省南陽市）の出身で、父は宋の征虜将軍・徐州刺史であった曹欣之です。弟の曹義宗もまた、梁の武将として名を残しています。

若き日の活躍

幼い頃から騎射に長けていた曹景宗は、鹿狩りにおいて、入り乱れる馬と鹿の中から確実に鹿を射抜くほどの腕前だったと伝えられています。成人前には、父の命で新野から州外へ出た際、数百人の異民族の襲撃を受けましたが、矢を射るたびに敵を倒し、その勇名を轟かせました。また、彼は学問も好み、司馬穰苴や楽毅の列伝を読むたびに、「丈夫たるもの、かくあるべきだ」と感嘆したと言われています。

宋の時代には、父に従って建康へ赴き、奉朝請・員外、尚書左民郎を歴任しましたが、父の死により辞職し、郷里へ戻りました。喪が明けると、雍州刺史の蕭赤斧によって冠軍中兵参軍・天水郡太守に任じられました。

斉での戦功

斉の建国後も、曹景宗は各地で戦功を重ね、游撃将軍に任じられました。497年には、太尉の陳顕達に従い北魏の馬圏を包囲した際、伏兵2千で中山王元英率いる北魏の援軍4万を撃破するという大戦果を挙げました。その後、孝文帝率いる大軍が迫り、陳顕達らは退却を余儀なくされましたが、曹景宗が山道を案内したことで、全軍無事に帰還することができました。蕭衍（後の梁の武帝）が雍州刺史として襄陽に赴任すると、曹景宗は彼と親交を深め、蕭衍もまた曹景宗を厚遇し、冠軍将軍・竟陵郡太守に任じるよう上奏しました。

梁の建国と鍾離の戦い

500年、蕭衍が蕭宝巻（東昏侯）に対して反乱を起こすと、曹景宗もこれに呼応し、軍の先鋒として長江を下り、建康へ迫りました。江寧で敵将の李居士を破り、大航では王珍国の軍を撃破するなど、目覚ましい活躍を見せました。建康が平定されると、散騎常侍・右衛将軍に任じられ、湘西県侯に封じられました。その後、持節・都督郢司二州諸軍事・左将軍・郢州刺史となりました。502年に蕭衍が皇帝として梁を建国すると、平西将軍に進み、竟陵県侯に改封されました。

503年、北魏の大軍が司州に侵攻し、司州刺史の蔡道恭が包囲されると、曹景宗は救援に赴きましたが、遊猟にふけるばかりで敵軍を攻撃せず、司州は陥落してしまいました。この責任を問われ、御史中丞の任昉に弾劾されましたが、武帝は彼の建国における功績を考慮し、不問に処し、護軍将軍として都に召還しました。その後、散騎常侍・右衛将軍に再任されました。

506年、北魏の中山王元英らが鍾離を攻め、徐州刺史の昌義之を包囲すると、曹景宗は豫州刺史の韋叡らを指揮して救援に向かうよう命じられました。しかし、彼は手柄を独占しようと、韋叡らとの合流を待たずに独断で軍を進発させようとしましたが、暴風に阻まれました。翌507年3月、韋叡らと協力して元英の軍を打ち破り、鍾離の救援に成功しました。この功績により、爵位が公に進み、侍中・領軍将軍に任じられ、鼓吹1部を賜りました。

武人としての誇りと晩年

鍾離の戦いの勝利後、都に帰還した曹景宗のために武帝が宴を催した際、沈約は彼に韻字を配しませんでした。しかし、曹景宗は自ら詩を作ることを強く望み、即興で詩を書き上げ、周囲を驚かせました。

曹景宗は自尊心が強く、多くの公卿に礼を尽くしませんでしたが、韋叡に対しては特別に敬意を払っていました。また、財欲が強く、郢州刺史在任時には財貨を集め、豪壮な邸宅を建てたため、民衆からの評判は良くありませんでした。好色であり、数百人もの愛妾を抱え、贅沢をさせていました。武帝との宴席で、酒に酔って皇帝に対する礼節を欠くこともありましたが、武帝は笑って咎めなかったと言われています。

508年、中衛将軍・江州刺史に任じられましたが、同年8月、任地へ向かう途中で亡くなりました。享年52歳。死後、征北将軍・雍州刺史・開府儀同三司を追贈され、壮と諡されました。

曹景宗は、その武勇と功績によって歴史に名を残しましたが、同時に、財欲や驕慢さといった人間的な弱さも持ち合わせていました。その波乱万丈な生涯は、今もなお語り継がれています。

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