曹良臣

曹良臣（そう りょうしん）は、生年不詳ながら1372年に没した、元末から明初にかけて活躍した軍人です。彼の本貫は寿州安豊県にありました。

元王朝末期の混乱期、曹良臣は郷里の人々を集め、自衛のために砦を築きました。その後、朱元璋に応天府で帰順し、江淮行省参政に任じられます。彼は淮東や浙西の攻略戦に参加し、その功績から行省左丞へと昇進しました。さらに、徐達に従って大都を陥落させ、河北一帯を制圧し、沢州、潞州にまで進軍しました。

その後、曹良臣は山西行省平章の任に就き、東へ転じて通州の守備を担当しました。当時、明軍は山西に主力部隊を展開していたため、通州の守備は手薄でした。曹良臣の部隊は1000人にも満たない状況でしたが、元の丞相である也速が1万騎を率いて白河に宿営するという情報が入りました。この状況下で曹良臣は、指揮官である仵勇らを密かに派遣し、運河を進む船に赤い幟を多数立てさせ、大軍を装うという奇策を実行しました。この偽装された船列は30里にも及び、鉦や太鼓の音を鳴り響かせました。この計略に也速は驚き、逃走しました。さらに曹良臣は精鋭騎兵を放ち、100里以上追撃し、敵を撃破しました。

その後、曹良臣は徐達に従い、定西でココ・テムルを撃破する戦功を上げました。1370年（洪武3年）には、その功績が認められ、宣寧侯に封じられ、世襲の権利を与えられました。翌年には、夏に対する征討に参加し、帰州の山寨を攻略し、容美の諸土司を制圧しました。周徳興と合流し、茅岡の覃垕の寨を陥落させ、白塩山から木を切り出して道を開き、紙坊渓に進出して夔州へと向かい、さらに進軍して重慶を攻略しました。

1372年（洪武5年）、曹良臣は李文忠の北伐に従軍し、ヘルレン川に到達し、現地の部族を降伏させました。彼は20日分の兵糧を持って、昼夜を問わず進軍し、トール川に達しました。北元の将軍哈剌章が川を渡って抗戦しましたが、徐々に後退しました。曹良臣らがアルグン川まで追撃したところ、敵の騎兵が蝟集してきました。曹良臣らは奮戦しましたが、この戦いで指揮官である周顕、常栄、張耀とともに戦死しました。彼の死後、安国公の位が追贈され、諡は忠壮とされました。その功績を称え、功臣廟に祀られました。

曹良臣の息子である曹泰が宣寧侯の爵位を継承しましたが、後に藍玉の獄に連座して処刑され、爵位を剥奪されました。

曹良臣は、その卓越した軍事的手腕と知略により、明朝の建国に大きく貢献した人物として、歴史に名を刻んでいます。

参考文献
『明史』巻133 列伝第21

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