朝鮮人の人名

朝鮮の人名の構成と特徴

朝鮮の人名は、姓（氏）と名（個人名）から構成されており、これは朝鮮半島に住む人々が共通して持つ特徴です。韓国（大韓民国）では、姓に加えて本貫という出身地を示す要素が重要になります。本項では、韓国を中心に、朝鮮民族の人名について詳しく解説します。

姓氏の成り立ち

姓の種類

韓国には約250の姓があり、そのほとんどは一音節の漢字で表されますが、二音節の複姓も存在します。中国や日本と比較すると姓の種類は少ないですが、金（김）、李（이）、朴（박）の3つの姓が人口の約半分を占めるという偏りがあります。

姓氏の起源と歴史

姓氏は、三国時代（4世紀～7世紀）に中国から導入されたと考えられています。高麗時代には族譜（家系図）が作成され、貴族階級の姓氏制度が確立しました。モンゴル支配下では、支配層がモンゴル式の名前を使用することもありました。

本貫の重要性

同じ姓でも、本貫が異なれば別の血統とみなされます。そのため、同じ姓かつ同じ本貫の男女の結婚は、現在でもタブー視されています。本貫は、姓の発祥の地を示し、例えば、金海金氏は金海市が発祥です。さらに、本貫は「派」（パ）というより細かい区分に分かれることもあります。

姓氏の導入

韓国で姓氏が使われ始めた時期は正確には不明ですが、漢字の導入と同時に始まったと考えられます。支配階級が他の氏族と区別するために、政治的身分を示す標識として姓氏が使われ始めました。

• - 高句麗：始祖である東明聖王（朱蒙）は高（고）姓を名乗り、配下にも姓を下賜しました。
• - 百済：王が下賜した八族姓（沙、燕、刕、解、真、国、木、苩）が権門勢族の姓でした。始祖である温祚王は夫余（부여）氏を名乗りました。
• - 新羅：朴・昔・金の三つの姓が王族の姓でした。儒理王時代には六部村長に姓が下賜されましたが、実際に使われていたかは不明です。

三国統一後も、多くの民衆は姓を持っていませんでした。南北国時代（統一新羅と渤海の並立時代）には、中国との交流が盛んな階層の人々が姓を使い始めました。

姓氏の定着

三国時代の名前は固有語を漢字で表記したものが多く、3音節の姓名とは異なっていました。高麗の太祖王建も当初は姓を持たなかったと考えられています。高麗初期には、姓名の使用は最上層階級に限定されていました。

個人名

個人名の構成

個人名は通常2文字で構成されます。伝統的に、1文字は一族の同世代で共有される行列字音節、もう1文字は個人固有の文字が用いられます。兄弟姉妹では行列字音節を共有しますが、従兄弟同士では共有しないのが一般的です。1文字の名前もありますが、少数派で特別な意味を持つ「ウェ字名」と呼ばれます。

漢字と固有語

個人名は漢字で構成されるのが一般的ですが、北朝鮮では漢字を使用しなくなりました。ただし、漢字の意味は理解されています。近年では、固有語の名前も増えており、ハヌル（空）、アルム（美）、イスル（露）などの名前が人気です。

法的な規定

韓国では、個人名に使える漢字が法律で定められており、許可されていない漢字はハングルで表記しなければなりません。1991年以降、人名用漢字表が拡張され、現在では5,151の漢字が使用可能です。また、名前の長さは5音節以下と定められています。

新生児の名前の統計

2015年の調査では、どのような漢字が使われているかは不問ですが、統計が取られています。

姓と氏の違い

姓は血統を表すものであり、父系血統の標識とされます。子は父親の姓を受け継ぎ、一生変わることがありません。一方、氏は、同一血統の人々が各地に分散した際に、地域ごとにまとまった一派を示す標識でした。韓国の本貫は氏に近い概念です。

「名前」の語源

「名前」を意味する「이름（イルム）」は、「達する」という動詞の名詞形が語源だとされています。

姓名の用法

呼びかけ方

朝鮮の文化では、他人を個人名で呼ぶのは無礼とされており、特に年長者に対しては姓名に「氏」（씨）を付けるのが一般的です。公的な地位にある人物は、地位の名前で呼ばれることが多く、その後に敬称の「様」（님）が付くこともあります。子供や親しい友人同士では、個人名で呼び合うことが一般的です。

伝統的愛称

幼い子供には、長生きを願って幼名（아명）が与えられることがあり、その愛称は侮蔑的な名前や汚い名前が付けられることもありました。結婚すると、女性は幼名を失い、出身地を示す「テッコ」で呼ばれるようになります。また、テクノニミーという、親を子供の名前で呼ぶ習慣も存在します。

朝鮮名と性別

朝鮮の社会は儒教の影響を強く受けており、家父長制的な家族構造が特徴です。男性が優位に立ち、年長者が若者より優位とされています。そのため、女性は「アンサラム（内の人）」や「チプサラム（家の人）」と呼ばれるなど、家庭生活に閉じ込められると考えられていました。

伝統的に、結婚した女性は自身の姓を保ちますが、子供は父親の姓を受け継ぎます。しかし、2008年以降、子供は両親のどちらの姓でも名乗ることが可能になりました。

まとめ

朝鮮の人名は、姓と名の組み合わせで構成され、本貫や家系を重視する文化を反映しています。伝統的な命名慣習が残る一方で、新しい名前の付け方も登場しており、時代とともに変化を続けています。

もう一度検索