末次政直

末次政直（すえつぐ まさなお）

末次政直は、天文15年（1546年）頃に生まれ、寛永7年（1630年）に亡くなった、江戸時代初期の博多の貿易商人であり、後に長崎代官を務めた人物です。通称の平蔵（初代）の名で広く知られています。妻は飛騨高山藩主の金森可重の娘です。

生涯

平戸出身の博多の豪商、末次興善の次男として生まれた政直は、元亀2年（1571年）に長崎へ移住しました。彼は朱印船貿易を通じて安南（現在のベトナム）やシャム（現在のタイ）などと盛んに貿易を行い、財を成しました。

元和4年（1618年）には、当時の長崎代官であった村山等安を訴え、翌元和5年（1619年）に等安が処刑されると、その後任として長崎代官に就任しました。政直は、「ジョアン」という洗礼名を持つキリシタンでしたが、キリシタン禁教の時代になると棄教し、仏教に転宗しました。その後、長崎奉行の長谷川藤正に協力し、キリシタンの弾圧に積極的に関与しました。彼はキリシタン探索のための目明を各地に派遣し、キリシタンを公職から追放するなど、厳しい弾圧を行いました。寛永3年（1626年）に長崎でキリシタン棄教令が発令された際には、同じく棄教した長崎町年寄の高木作右衛門と共に、長崎奉行の水野守信に協力して、キリシタンの弾圧をさらに激化させました。

しかし、政直の晩年は悲劇的なものでした。彼はタイオワン事件（ノイツ事件）を引き起こしたことが原因で、寛永7年（1630年）に江戸の牢獄に幽閉され、幕府の役人によって斬殺されました。幽閉・斬殺の理由は、幕府の重臣が禁じられていた貿易に手を染めていた事実を知ったためとも言われていますが、その詳細は不明です。

政直の法名は雲証院殿華岳浄皎居士。菩提寺は華嶽山春徳寺です。しかし、延宝4年（1676年）には、4代目の末次茂朝の代に一族の密貿易が発覚し、一族は処罰され、政直の墓石も失われるという末路を辿りました。

なお、政直が名乗った「平蔵」という名は、2代目の代官である末次茂貞、3代目の代官である末次茂房、そして4代目の代官である末次茂朝も襲名しています。

『長崎名勝図絵』には、末次茂房が父である政直の石郭を造ろうとした際、長崎氏の鶴城本丸跡にある竜頭巌と呼ばれる岩の一部を切り出そうとしたところ、岩の間から血が滲み出たと記されています。これは、政直の死に対する人々の複雑な感情を反映しているのかもしれません。

関連作品

海音寺潮五郎 - 『末次平蔵』(文春文庫『豪傑組』収録)

関連項目

平山常陳事件
* ピーテル・ノイツ

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