本多日生

本多日生

本多日生（ほんだ にっしょう、1867年4月17日 - 1931年3月16日）は、明治から昭和初期にかけて活躍した日本の宗教家、僧侶です。日蓮宗妙満寺派、後の顕本法華宗の管長を務め、法号を聖応院日生と称しました。彼は、近代日本における日蓮仏教の代表的な改革者として、その名を歴史に刻んでいます。

生涯

1867年、播磨国姫路藩（現在の兵庫県姫路市）にて、姫路藩士の次男として生を受けました。幼名は長二といいました。後に母方の菩提寺である妙善寺の本多日境に師事し、本多姓を継ぎました。

小学校を卒業後、妙立寺の池田日昌のもとで得度し、僧侶としての道を歩み始めます。日昌の亡き後は、岡山県津山の本蓮寺で児玉日容に師事し、日什教学を深く学びました。18歳で大阪府堺市の妙満寺住職に任命され、若くしてその才能を発揮します。1887年には上京し、私立哲学館（現在の東洋大学）の第一期生として入学。在学中は井上円了やドイツの哲学者エドゥアルト・フォン・ハルトマンらの著書を通して西洋哲学を広く学び、その思想は日生の生涯にわたって大きな影響を与えました。

1884年以降、明治政府による仏教各宗派の近代化政策が進む中、日生は日蓮宗妙満寺派において革新派として頭角を現しました。1889年、24歳という若さで妙満寺派の教学部長に就任しますが、その革新的な宗制改革は守旧派の反発を招き、1891年には教学部長を罷免されるという憂き目に遭います。さらに、福島県二本松の蓮華寺への左遷命令を拒否したことにより、1892年には僧籍を剥奪されるという厳しい処分を受けました。

しかし、日生は挫けることなく、「顕本法華宗義弘通所」を設立し、独自の布教活動を開始します。宗内での復権運動の高まりを受け、1894年に僧籍を回復すると、日蓮門下の統合を目指す「統一団」を結成し、機関紙「統一」を発刊しました。その後、宗務総監に就任し、日蓮宗妙満寺派を正式に「顕本法華宗」と改称することを実現させ、1905年には39歳で顕本法華宗の管長に就任しました。

管長として21年間、その職務を全うする中で、日生は僧俗一体の布教伝道、社会教化、門下統合の拠点として「天晴会」を組織しました。また、労働争議に対応するための「自慶会」や、共産主義、無政府主義に対抗するための「知法思国会」も設立し、日蓮主義の伝道活動を多岐にわたって展開しました。1922年には、日蓮大聖人への「立正大師号追諡」を実現させ、宗祖を「立正大師」と呼称し続けました。

1926年、管長職を辞し、品川の妙国寺に活動拠点を移しましたが、次第に病状が悪化し、1931年に65歳でその生涯を閉じました。

思想

本多日生の思想は、宗祖日蓮の教えに立ち返り、民俗信仰や権力体制に迎合した亜流儀を排除し、釈尊を中心とした本来の信仰へと統一することを目的としていました。彼は、薬師如来や大黒天、鬼子母神などを本尊とする旧来の信仰や、占いや霊感などの迷信を禁じ、曼荼羅本尊または三宝式のみを本尊とすることを強く求めました。

西洋哲学を学んだ経験から、日生は仏教思想の近代的な体系化を強く意識し、キリスト教を中心とする西洋文化が台頭する中で、仏教の独自性や存在意義を深く考察しました。その結果、日本仏教の諸宗派、特に日蓮仏教における宗派の乱立を解消し、強固な組織体系を構築する必要性を感じていました。

教学においては、日什門流の「経巻相承・直授日蓮」を基軸としつつ、久遠実成の仏陀を教主とし、宗祖の遺文に忠実であることを主張しました。既存の体制に依存することなく、日蓮門下が社会的に活動することを推奨し、自らもその模範を示しました。

著書

日生は多くの著作を残しており、主なものとして以下が挙げられます。

「日蓮教学精要」
「日蓮聖人正伝」
「教義信条の整束」
「法華経の真髄」
「立正大師」
「聖語録」
「日什大正師の略歴及び主張」
明解「法華経要義」

これらの著書を通して、日生の思想や日蓮仏教に対する情熱を窺い知ることができます。

関連人物

日生の活動を支えた人物として、以下のような人々が挙げられます。

田中智学：共に近代日本の日蓮主義を支えた人物
佐藤鉄太郎
小笠原長生
岡田資
妹尾義郎

関連項目

本多日生に関連する項目として、以下のようなものが挙げられます。

日蓮主義
顕本法華宗
日蓮宗什師会
妙満寺
妙国寺
久遠寺

外部リンク

顕本法華宗
本多日生記念財団
顕本法華宗義弘通所

本多日生は、激動の時代の中で、日蓮仏教の近代化と発展に尽力した偉大な宗教家であり、彼の思想と行動は、現代においても大きな影響を与え続けています。

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