朽網氏

朽網氏（くたみし）とは

朽網氏は、豊後国直入郡朽網郷（現在の大分県）を発祥とする日本の氏族です。その出自には複数の説があり、大神氏の流れを汲むもの、大友氏族である古庄氏の流れを汲むもの、そして大友氏一族の入田氏の流れを汲むものなどが存在します。それぞれの系統が独自の歴史を歩んでいます。

大神氏流朽網氏

大神氏から派生したとされる朽網氏は、『大神系図』にそのルーツを見ることができます。系図には「惟基─惟通（六男、朽網六郎）」という記述があり、この惟通が朽網氏の祖であると考えられています。大神氏という名門の血を引くことが、朽網氏の由緒を語る上で重要な要素となっています。

大友氏族古庄氏流朽網氏

この系統の朽網氏は、大友氏との深い関わりを持っています。「大友系図」によれば、齋院次官藤原親能の第三子である親直（筑井左衛門尉とも）の子、古庄重能（重吉）が建久7年（1196年）に大友能直の代官として九州に下向し、朽網郷に土着したのが始まりとされています。重能は藤原秀郷の5代後裔を称し、大友能直の兄弟であるとも伝えられています（能直自身も幼少の頃は古庄能直と名乗っていたという説があります）。また、豊後大野氏の支流であるという説も存在します。この系統の朽網氏は、重能から19代後の朽網親満の代に、永正13年（1516年）に大友氏に反旗を翻し、大友義鑑によって討伐され、一時滅亡しました。

大友氏族入田氏流朽網氏

この系統は、大友氏の一族である入田氏から派生しています。入田鑑康が、大友義鎮（宗麟）の命により朽網氏の名跡を継ぎ、朽網鑑康（宗暦）と名乗りました。鑑康は大友氏の重臣として活躍しましたが、島津氏が北上してきた際に病没しました。鑑康の死後、長男の鎮則は大友義統に討伐され、次男の鑑房は玖珠で浪人として過ごしました。

鑑房は、蒲池鎮漣の娘で、柳川落城後に落ち延びた蒲池徳子を妻に迎えました。二人の間に生まれた宗壽は、筑後国蒲池にある蒲池氏の菩提寺である崇久寺に身を寄せ、そこで3人の子をもうけました。嫡男の鎮武は朽網氏の家督を継いで福岡藩士となり、次男の鎮明は祖母の蒲池氏の名跡を継ぎました。そして、三男の朽網宗常の子である豊卓は、久留米に住んで蒲池豊庵と名乗り、『蒲池物語』を著しました。豊庵の子である洞摩は朽網に復姓し、その子の宗房は久留米藩の郷士となりました。このように、入田氏流の朽網氏は、蒲池氏との縁を通じて、江戸時代にもその血脈を繋いでいったのです。

朽網氏は、その出自や歴史において、大友氏との密接な関係を持つ氏族でした。戦国時代の動乱や江戸時代の社会構造の変化の中で、朽網氏は様々な変遷を経験しました。しかし、それぞれの系統が独自の歴史を刻み、その名を後世に残しています。

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