東佐多町

東佐多町（ひがしさたちょう）

鹿児島市北部に位置する東佐多町は、その歴史と自然が調和した美しい町です。かつては薩摩国鹿児島郡吉田郷に属し、江戸時代にはこの地域の行政の中心地として栄えました。この地は、縄文時代から人々の生活の舞台となっており、古代からの歴史を今に伝える貴重な場所でもあります。

地理

東佐多町は、鹿児島市北部の吉田地域に位置し、北には標高150mほどの丘陵地帯が広がっています。町の中心部には思川が流れ、姶良市との境界には本名川が流れています。この地形が、肥沃な土地を育み、農業が盛んな地域となっています。周辺には、姶良市蒲生町下久徳や平松、西佐多町、本城町などが隣接しており、交通の要所でもあります。

町内を南北に走る鹿児島県道25号鹿児島蒲生線と、東西に走る鹿児島県道57号麓重富停車場線が交差し、南端には九州自動車道が通っています。近くの姶良インターチェンジを利用すれば、県内外へのアクセスも容易です。古くは西佐多浦（現在の西佐多町）と共に吉田の中心として栄え、東麓、東下、城内、五反田などの集落が点在する農業地域です。

歴史

先史時代

東佐多町の地では、1968年から1969年にかけて九州自動車道建設に伴う埋蔵文化財調査が行われ、小山遺跡が発見されました。この遺跡からは、縄文時代早期から前期にかけての土器が多数出土し、後期から晩期には石器も発見されました。特に、最下層からは縄文時代早期の吉田式土器、その上層からは塞ノ神式土器などが出土しており、この地が古くから人々の生活の場であったことを物語っています。小山遺跡は、谷底平野に位置する紡錘形の盆地にあり、このような閉鎖的で孤立した山間の盆地にある遺跡は非常に珍しいとされています。

中世の佐多之浦

中世には、佐多之浦村に松尾城（吉田城とも呼ばれる）が築かれました。この城は、応永年間（1394年 - 1428年）に吉田氏によって築かれたと伝えられていますが、文明17年（1485年）に吉田氏が島津氏との合戦に敗れ、以降は島津氏の領有となりました。永禄5年（1562年）には、島津歳久が吉田に移封され、天正8年（1511年）に祁答院へ移るまで松尾城を居城としました。その後、吉田全域は薩摩藩島津氏の直轄領となりました。

佐多之浦の分割と近世の東佐多浦村

江戸時代になると、東佐多浦という地名が史料に登場します。この地域は、薩摩国鹿児島郡吉田郷に属していました。村高は、記録によって若干の差異がありますが、おおよそ1100石程度でした。享保12年（1727年）に行われた検地により、佐多之浦村は東佐多浦村と西佐多浦村（現在の西佐多町）に分割されました。さらに、元文3年（1738年）には東佐多浦村の一部が触田村（現在の姶良市平松の一部）となりました。東佐多浦村には、外城制による地頭仮屋が置かれ、その周辺には麓集落が形成されました。また、野町と呼ばれる商業地も発展し、寛政年間には17戸の家があったとされています。寛政6年（1794年）の東佐多浦村の人口は149人でした。

1884年（明治17年）には、吉田郷の戸長役場が東佐多浦の地頭館跡に設置されました。同年の鹿児島県地誌によると、東佐多浦村で商売を営む者は12戸でした。

町村制施行以後

1889年（明治22年）の町村制施行に伴い、東佐多浦村、西佐多浦村、本城村、本名村、宮之浦村の区域が合併し、鹿児島郡吉田村が誕生しました。この際、東佐多浦村は吉田村の大字「東佐多浦」となりました。また、町村制施行と同時に東佐多浦にあった戸長役場は村役場となり、大字本城（現在の本城町）に移転しました。

1963年（昭和38年）には、東佐多浦に鹿児島県立蒲生高等学校吉田分校が移転し（1981年（昭和56年）に募集停止）、1964年（昭和39年）には吉田小学校の解体校舎を改造して吉田幼児学級園（のちのよしだルンビニー幼稚園）が開設されました。1972年（昭和47年）11月1日には、吉田村が町制を施行し吉田町となりました。

2004年（平成16年）11月1日には、吉田町が桜島町、松元町、郡山町、喜入町と共に鹿児島市に編入され、現在の東佐多町が誕生しました。合併にあたっては、旧吉田町の区域の大字を廃止し、新たに町の区域を設定することとなり、旧大字東佐多浦は、新町「東佐多町」となりました。

文化財

東佐多町には、市指定の文化財がいくつかあります。東下の田の神、弘治期の十三仏設斎碑、大永期の勧請石碑、六字名号供養百万遍石塔などがそれにあたり、この地の歴史と文化を物語る貴重な遺産です。

施設

町内には、よしだルンビニー幼稚園などの教育施設のほか、王子神社、鎮守神社、大悟寺といった寺社があります。

交通

東佐多町は、主要な道路が整備されており、交通の便が良い地域です。九州自動車道が町域の南端をかすめ、姶良インターチェンジを利用できます。また、鹿児島県道25号鹿児島蒲生線と鹿児島県道57号麓重富停車場線が町内を走り、周辺地域へのアクセスを支えています。

出身の著名人

東佐多町出身の著名人として、谷口慶吉氏が挙げられます。彼は衆議院議員、農業協同組合指導者、吉田村会議員として活躍しました。

河川

町内には、思川と本名川という二つの主要な河川が流れています。

まとめ

東佐多町は、豊かな自然と歴史が調和した魅力的な町です。古代から現代に至るまでの歴史が、この地に息づいています。その歴史と文化は、これからも大切に受け継がれていくことでしょう。

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