東日本大震災による鉄道への影響

2011年3月11日に発生した東日本大震災は、日本の鉄道網に未曾有の被害をもたらしました。地震による直接的な被害に加え、太平洋沿岸部では大津波が鉄道施設を襲い、甚大な被害が発生しました。この震災は、人々の生活や経済活動に大きな影響を与え、鉄道の復旧は被災地の復興において重要な課題となりました。

概要

震災発生直後、JR東日本は新幹線と在来線の全線で運転を見合わせました。首都圏では私鉄や地下鉄も運行を停止し、多くの帰宅困難者が発生しました。その後、一部の路線で運転が再開されましたが、計画停電や燃料不足の影響で運休や減便が続きました。

JR各社と私鉄・第三セクターは、期限切れの乗車券や特急券の払い戻し手数料を無料とする措置を長期にわたり実施しました。また、通常は払い戻しが制限される企画乗車券についても、特例として手数料無料で払い戻しが行われました。

帰宅困難者

震災発生後、交通機関の復旧が見通せない状況下で、政府は職場待機を呼びかけましたが、多くの帰宅困難者が発生しました。東京都や近隣の県は、都庁舎や公共施設を一時的な避難場所として開放し、国も合同庁舎などを提供しました。

各路線の被害と復旧

新幹線

東北新幹線: 仙台駅など5駅が被災し、約1,100箇所が損傷しました。試験走行中の新幹線E2系が脱線する事故も発生しました。全線復旧には時間を要しましたが、段階的に運転が再開され、最終的には同年9月に震災前のダイヤに復帰しました。
上越・長野新幹線: 比較的早い段階で運転を再開しました。
東海道新幹線: 節電のため速度を落として運転されました。
九州新幹線: 震災翌日に全線開業しましたが、式典は中止となりました。

在来線

常磐線: 新地駅や坂元駅が津波で大きな被害を受けました。新地駅では列車が脱線し、大破しました。長期間にわたる復旧工事の結果、2020年3月14日に全線が再開通しました。
仙石線: 津波により列車が脱線する被害が発生しました。乗客は避難しましたが、その後の津波で死傷者が出ました。一部区間は内陸に移設され、2015年 5月30日に全線再開しました。
山田線: 橋梁の流出などにより一部区間が長期運休となりました。宮古駅 - 釜石駅間は三陸鉄道に移管され、2019年3月23日に再開しました。
東北本線: 各区間で被害が発生し、一部区間で運転見合わせとなりましたが、段階的に復旧し、4月21日に全線再開しました。
その他の路線: 大湊線、北上線、花輪線、田沢湖線、八戸線、釜石線、奥羽本線、五能線、米坂線、左沢線、陸羽西線、陸羽東線、石巻線、気仙沼線、仙山線、大船渡線、磐越西線、磐越東線、只見線、水戸線、水郡線、鹿島線、飯山線もそれぞれ被害を受け、復旧に時間を要しました。

JR東日本以外のJR各社

北海道、東海、四国、西日本、九州の各旅客鉄道会社でも、津波警報による運休や、部品供給の問題による間引き運転などが発生しました。

私鉄、第三セクター鉄道、公営鉄道

仙台空港鉄道仙台空港線、仙台市地下鉄南北線、弘南鉄道、青い森鉄道、いわて銀河鉄道、三陸鉄道、山形鉄道、阿武隈急行、真岡鐵道、わたらせ渓谷鐵道、ひたちなか海浜鉄道、鹿島臨海鉄道、山万ユーカリが丘線、首都圏新都市鉄道つくばエクスプレスなどの各路線でも、それぞれ被害が発生し、復旧に時間がかかりました。

震災で廃車された車両

多くの車両が震災で廃車となりました。貨車については、両数が非常に多かったため、詳細なリストは割愛します。

震災の教訓

東日本大震災は、鉄道事業者にとって、自然災害に対する備えの重要性を再認識させる出来事となりました。この経験を教訓に、災害に強い鉄道網の構築に向けた取り組みが進められています。

参考文献

日本鉄道旅行地図帳『東日本大震災の記録』（新潮社）
原武史『震災と鉄道』（朝日新書）
アエラムック『震災と鉄道全記録鉄路よ熱く甦れ』
『甦れ! 東北の鉄道』（トランスワールドジャパン）
『走れ、さんてつ! 三陸鉄道のある風景よ、もう一度!!』（徳間書店）

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