東本線

タイ東本線

タイ東本線は、タイ国有鉄道が運営する主要な鉄道路線の一つで、首都バンコクのフアランポーン駅を起点とし、タイ東部を経由してバンクロンルク国境駅へと至る全長260.28kmの路線です。この路線は、タイの交通と経済を支える重要な役割を担っており、複数の支線を有しています。

概要

東本線は、1926年 11月8日にフアランポーン駅 - アランヤプラテート駅間が全線開業しました。その後、1989年 7月14日にチャチューンサオ駅 - サッタヒープ駅などの支線が開業しました。かつては主要な旅客輸送手段でしたが、道路網の整備に伴いバスにその役割を譲りつつあります。しかし、貨物輸送においては重要な役割を果たしており、その需要増加に対応するため、路線の複線化や3線化が進められています。

2003年にはフアマーク駅 - チャチューンサオ駅間が3線化され、2012年にはチャチューンサオ駅 - レムチャバン港駅間が複線化されました。さらに2019年4月には、カンボジア国境のポイペトまで再延伸され、国際的な輸送ルートとしての重要性が増しています。

2020年には、貨物輸送専用のバイパス線であるチャチューンサオ - クローンシップカーオ - ケーンコイ間（約106km）の複線化工事が完了し、輸送能力が向上しました。2023年には、フアマーク - レムチャバン間、約120kmの区間にてETCS Level 1が導入され、安全性と効率性が向上しました。また、同年11月にはサッタヒープ支線の末端部に2駅が新設され、旅客輸送区間が約10km延長されました。

路線データ

路線距離
フアランポーン駅 - バンクロンルク国境駅: 260.23 km
チャチューンサオ駅 - サッタヒープ駅: 134.51 km
マッカサン駅 - メナム駅: 16.83 km
フアタケー駅 - ラートクラバンICD駅: 3.53 km
クローンシップカーオ駅 - ケンコーイ駅: 81.29 km
シーラーチャー分岐駅 - レムチャバン港駅: 10.25 km
カオチーチャン駅 - マープタープット駅: 81.29 km
軌間: 1,000 mm
複線区間
フアタケー駅 - ラートクラバンICD駅: 3.53 km (支線として)
チャチューンサオ - レムチャバン港間: 79.86 km
チャチューンサオ - クローンシップカーオ間: 24.61 km
クローンシップカーオ - ケンコーイ間: 81.29 km
ケンコーイ付近の短絡線: 4.0 km
3線区間
フアマーク駅 - チャチューンサオ駅: 45.81 km
電化区間: なし（全線非電化）

開業の歴史

1908年 1月24日: フアランポーン駅 - チャチューンサオ駅 (60.99 km) 開業
1910年2月15日: マッカサン駅 - メナム駅 (16.83 km) 開業
1925年 1月1日: チャチューンサオ駅 - カビンブリー駅 (100.27 km) 開業
1926年 11月8日: カビンブリー駅 - アランヤプラテート駅 (93.24 km) 開業
1989年 7月14日: チャチューンサオ駅 - サッタヒープ駅 (134.51 km) 開業
1992年: シーラーチャー分岐駅 - レムチャバン港駅 (10.25 km) 開業
1995年 8月19日: カオチーチャン分岐駅 - マープタープット駅 (20.48 km) 開業
1995年 8月19日: クローンシップカーオ駅 - ケンコーイ駅 (81.29 km) 開業
1996年 10月4日: ラートクラバンICD駅開業
2003年 9月25日: フアマーク駅 - チャチューンサオ駅複線化
2019年4月22日: アランヤプラテート駅 - カンボジア国境開業

運行旅客列車

フアランポーン駅 - バンクロンルク国境駅: 普通2往復
フアランポーン駅 - カビンブリー駅: 普通2往復
フアランポーン駅 - プラーチーンブリー駅: 普通1往復
フアランポーン駅 - チュックサメット駅: 普通1往復、特急1往復（土日のみ）
フアランポーン駅 - チャチューンサオ分岐駅: 普通5往復

区間

フアランポーン駅 - アランヤプラテート駅 - カンボジア国境

この区間は東本線の基幹路線であり、フアランポーン駅からチャチューンサオ駅の間はバンコク近郊区間として機能しています。チャチューンサオから東部臨港地帯を結ぶサッタヒープ支線が分岐した後、北へ進路を変え、クローンシップカーオ駅で東北線ケンコーイ駅を結ぶ貨物バイパス線が分岐します。その後、プラーチーンブリー県、サケーオ県を経由し、カンボジア国境でロイヤルカンボジア鉄道北線に接続します。

第二次世界大戦中、日本軍によりアランヤプラテート駅からカンボジアのシソポンまでの鉄道が開通しましたが、戦後廃止されました。その後、何度か再開と廃止を繰り返し、最終的に2019年4月22日にアランヤプラテート - ポイペト間が再開通しました。しかし、2020年現在、タイとカンボジアを結ぶ国際列車は運行されていません。

チャチューンサオ駅 - サッタヒープ駅

この区間では、フアランポーン駅 - チュックサメット駅間の旅客列車が1日1往復（週末は2往復）運行されています。

シーラーチャー分岐駅 - レムチャバン港駅

貨物列車のみが運行しており、旅客列車は運行されていません。

カオチーチャン分岐駅 - マープタープット駅

貨物列車のみが運行されており、旅客列車は運行されていません。2022年4月25日からは、マープタープット駅を起点として鉄道輸送によるドリアンの中国輸出プロジェクトが開始されました。

クローンシップカーオ駅 - ケンコーイ駅

貨物列車のみが運行されており、旅客列車は運行されていませんが、特別な事情がある場合には運行されることがあります。2016年2月17日にはチャチューンサオ - ケンコーイ間の複線化工事が着工し、2020年に完成しました。また、2020年にはケンコーイ駅南側に東北本線に繋がる短絡線が開通しました。

マッカサン駅 - メナム駅

貨物列車のみが運行されており、旅客列車は運行されていません。

フアタケー駅 - ラートクラバンICD駅

通関拠点であるラートクラバンICDに直結する支線で、貨物列車のみが運行されています。旅客列車は運行されていません。ラートクラバンICDは、タイ最大の国際貿易港であるレムチャバン港へのアクセスを目的としており、フアタケー駅でスイッチバックを行う必要があります。

参考文献

岡本和之　『タイ鉄道旅行』　（めこん、1993年）ISBN 4-8396-0080-5
杉本聖一　『魅惑のタイ鉄道』　（玉川新聞社、2000年）ISBN 4-924882-29-1
柿崎一郎　『王国の鉄路タイ鉄道の歴史』　（京都大学学術出版会、2010年）ISBN 978-4-87698-848-8
ฝ่ายการเดินรถ การรถไฟแห่งประเทศไทย. บัญชีรายชื่อสถานี/ที่หยุดรถ/ป้ายหยุดรถ/ระยะทาง/ชั้นสถานี/สังกัด. ม.ป.ท. (ไม่ปรากฏสถานที่พิมพ์), 2553
渡邉乙弘　『タイ国鉄4000キロの旅』　（文芸社、2013年）ISBN 978-4-286-13041-5

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