東洋活性白土

東洋活性白土：知られざる産業遺産と専用鉄道

東洋活性白土は、かつて新潟県糸魚川市に拠点を置き、活性白土と酸性白土の製造・販売を手がけていた企業です。1925年に創業し、1982年に経営上の問題で解散するまでの間、地域経済に貢献しました。特に、製品輸送に使用していた専用鉄道と蒸気機関車は、産業遺産として鉄道ファンや歴史愛好家の間で知られています。

製品と用途

東洋活性白土が製造していたのは、活性白土と酸性白土という2種類の粘土鉱物です。これらの製品は、主に以下の用途で使用されていました。

活性白土: 石油や潤滑油などの油脂類の精製、脱色、重質油の分解、アセチレンなどの重合反応の触媒
酸性白土: 油脂の精製と脱色、医療用途（胃酸過多症の内服薬、下痢の原因となるバクテリア吸着薬）

活性白土は、酸性白土に硫酸を加えて精製されるもので、酸性白土よりも高い活性度を持ちます。酸性白土は、フラー土とも呼ばれ、日本で発見・製品化されました。

専用鉄道とその役割

東洋活性白土の特徴の一つは、工場と国鉄糸魚川駅を結ぶ専用鉄道を所有していたことです。この専用鉄道は、製品（活性白土）と重油の輸送に利用され、蒸気機関車が牽引する貨物列車が1日に数往復していました。特に、2号蒸気機関車は「くろひめ号」の愛称で親しまれ、日本で最後まで活躍した実用蒸気機関車として知られています。

専用鉄道の軌間は610mmで、総延長は約800mでした。工場内の急カーブでは、作業員が手押しで貨車を動かす必要がありました。製品の積み替えはベルトコンベヤーで行われ、国鉄の貨物列車に積み込まれて各地へ輸送されました。

燃料である重油は、国鉄から到着したタンク貨車から専用鉄道のタンク貨車へ積み替えられ、工場へ運ばれました。硫酸については、当初はタンク貨車輸送でしたが、後にパイプライン輸送に切り替えられました。

蒸気機関車

東洋活性白土では、2機の蒸気機関車が使用されていました。

1号機: 予備機として運用。フランスのドコービル製蒸気機関車を模したデザイン。羅須地人鉄道協会に移管され、動態保存を目指して活動中。
2号機（くろひめ号）: 本務機として活躍。1956年協三工業製。日本最後の実用蒸気機関車。糸魚川市に譲渡され、糸魚川小学校での展示を経て、フォッサマグナミュージアムへ移設、現在は糸魚川ジオステーション ジオパルにて展示。

会社の歴史

1925年、水神白土合資会社として創業し、当初は磨き粉や医薬品の原料を製造していました。その後、石油類の脱色剤としての需要が高まり、1936年に東洋活性白土株式会社に改名し、活性白土の製造を開始しました。第二次世界大戦中には、軍需工場として航空機ガソリンの精製も行いました。

戦後は、製油所の復興とともに需要が回復しましたが、1960年代以降は公害問題の影響で需要が減少。1982年に会社は解散し、工場は閉鎖されました。専用鉄道は廃止され、蒸気機関車は糸魚川市と成田ゆめ牧場に寄贈されました。

解散後

現在、東洋活性白土の工場跡地は、当時の面影を残していません。しかし、専用鉄道の遺構や蒸気機関車は、産業遺産として保存・展示されており、当時の様子を偲ぶことができます。特に、「くろひめ号」は、糸魚川ジオステーション ジオパルで保存されており、多くの鉄道ファンや観光客に親しまれています。また、1号機は羅須地人鉄道協会により動態復元され、イベントで走行しています。

東洋活性白土は、その短い歴史の中で、地域経済に貢献し、日本の産業史に名を刻みました。専用鉄道と蒸気機関車は、その象徴として、後世に語り継がれることでしょう。

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