東濃鉄道駄知線

駄知線

駄知線は、かつて岐阜県土岐市内の土岐市駅から東駄知駅までを結んでいた、東濃鉄道の鉄道路線です。1972年の豪雨災害により運行休止となり、1974年に廃止されました。この路線は、地域産業の発展に貢献しましたが、時代の流れと共にその役割を終えました。

歴史

駄知線の歴史は、大正時代にまで遡ります。地元の窯業経営者である籠橋休兵衛が中心となり、陶磁器の原料や製品を輸送する目的で、駄知鉄道として敷設されました。当初、中央本線のルート選定において、駄知を中心とした陶磁器産地を通るルートへの変更運動が行われましたが、実現には至りませんでした。そのため、駄知町は自ら鉄道を建設することを決意しました。

当初は瑞浪駅への接続が計画されましたが、資金難により断念。下石町などの協力を得て、現在のルートでの建設に至りました。1922年に新土岐津（初代） - 下石間が開業し、その後順次延伸を重ね、1924年には東駄知まで全線開通しました。

水害による路線廃止

1972年7月、集中豪雨により駄知線は大きな被害を受けました。土岐川橋梁が流失し、全線が運休となりました。復旧も検討されましたが、莫大な費用がかかること、モータリゼーションの進展による鉄道部門の経営難などから、復旧は断念されました。そして、1974年10月21日、駄知線は全線廃止となりました。

東濃鉄道は、他にも笠原線を運行していましたが、こちらも後に廃止となり、鉄道事業から撤退しました。しかし、社名を変更せず、バス事業を継続しています。廃線跡は一部が歩行者専用道路として整備され、駅舎はバスロータリーや駐車場として活用されています。

年表

1918年（大正7年）8月7日：駄知軽便鉄道に対し、土岐郡泉町 - 駄知町間の免許が下付
1919年（大正8年）
3月28日：駄知鉄道株式会社設立
4月10日：会社設立登記
1922年（大正11年）
1月11日：駄知鉄道として、新土岐津（初代）・下石間 (4.7km) 開業
10月10日：下石・山神間 (2.8km) 開業
1923年（大正12年）1月22日：山神・駄知間 (1.6km) 開業
1924年（大正13年）9月28日：駄知・東駄知間 (1.3km) 開業により全通
1928年（昭和3年）3月1日：土岐津駅乗り入れに伴い0.2km延伸。新土岐津駅を0.5km駄知寄りに移設
1929年（昭和4年）
1月：ガソリン動力併用認可
4月15日：神明口駅開業
1932年（昭和7年）3月18日：小川町停留場開業
1942年（昭和17年）：駄知・東駄知間旅客営業休止
1944年（昭和19年）
3月1日：笠原鉄道などと合併し、東濃鉄道設立。同社駄知線となる
4月19日：小川町停留場の運輸営業休止を申請（5月10日承認）
1945年（昭和20年）5月23日：新土岐津駅および小川町停留場の運輸営業休止許可を申請
1950年（昭和25年）7月1日：全線電化
1965年（昭和40年）7月1日：土岐津駅を土岐市駅に改称
1972年（昭和47年）7月13日：昭和47年7月豪雨により全線で営業休止
1974年（昭和49年）10月21日：全線廃止

路線データ

路線距離（営業キロ）：10.4km
軌間：1067mm
駅数：7駅
複線区間：なし（全線単線）
電化区間：全線（直流1500V）
下石変電所、水銀整流器（500kW）2台
閉塞方式：タブレット閉塞式（土岐市 - 駄知間）、スタフ閉塞式（駄知 - 東駄知間）

運転

1962年（昭和37年）当時

旅客列車：上下各20本（うち土岐津 - 駄知間上り1本、土岐津 - 下石上下各1本）、他に駄知 - 東駄知に出入庫上下各2本
全線所要時間：約25分
貨物列車：上下各4本

車両

電化前

蒸気機関車

1形 (No.1, 2)：駄知鉄道自社発注の雨宮製作所製の20tのC形蒸気機関車。電化後も予備機関車として使用。
11形 (No.11)：元国鉄2850形蒸気機関車。1923年譲受、1938年譲渡。
3形　(No.3)：元国鉄1225形蒸気機関車。1920年製造、1950年建設省へ譲渡。

客車

ハフ1・2：開業時に鉄道省から購入。1943年後半に車体が新製。1952年廃車。
ハ3・4：1923年に愛知電気鉄道から購入。1939年に廃車し、鹿本鉄道に売却。
ハ5：1927年に揖斐川電気から購入。1952年廃車後、大阪窯業セメントに譲渡。

電化後

電気機関車

ED1000形 (ED1001)：電化時に新造された東芝製の凸形電気機関車。

電車

モハ100形・クハ200形：1950年東芝製の自社発注車と、国鉄払い下げの買収国電。全車高松琴平電気鉄道へ譲渡。
モハ110形・クハ210形：元西武鉄道モハ151形・クハ1151形。2編成が在籍し、それぞれ総武流山電鉄（現・流鉄）と名古屋鉄道へ譲渡。

駅一覧

全駅岐阜県土岐市に所在。

土岐市駅
神明口駅
下石駅
小川町停留場
新土岐津駅
山神駅
駄知駅
東駄知駅

脚注

注釈

出典

参考文献

青木栄一 (1962). “東濃鉄道”. 鉄道ピクトリアル (1962年3月号臨時増刊：私鉄車両めぐり2): pp. 63-70, 108.
青木栄一 (1963). “東濃鉄道（私鉄車両めぐり第2分冊補遺）”. 鉄道ピクトリアル No. 145 (1963年5月号臨時増刊：私鉄車両めぐり4): p. 88.
青木栄一 著「昭和52年5月1日現在における補遺」、鉄道ピクトリアル編集部 編『私鉄車両めぐり特輯』 1巻、鉄道図書刊行会、東京、1977年、補遺5頁頁。
今尾恵介（監修）『日本鉄道旅行地図帳』 7 東海、新潮社、2008年、48頁。
清水武『東濃鉄道』ネコ・パブリッシング、東京〈RM library 72〉、2005年。
鉄道省『昭和12年10月1日現在鉄道停車場一覧』鉄道省（覆刻：鉄道史資料保存会）、東京（覆刻：大阪）、1937年（1986年覆刻）、p. 340頁。

関連項目

* 廃線

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