松平近説

松平 近説

松平 近説（まつだいら ちかよし）は、江戸時代後期から明治にかけて活躍した大名です。豊後国府内藩の第10代にして最後の藩主であり、親清流大給松平家の14代当主にあたります。幕末には大給姓に改め、「大給近説」と名乗りました。

生涯

近説は、伊勢国桑名藩主である松平定永の十一男として生まれます。天保12年（1841年）7月、先代藩主であった松平近信の死去に伴い、その末期養子として家督を継承することになりました。この時、近説はまだ14歳でした。翌天保13年（1842年）5月には、時の将軍である徳川家慶に謁見し、同年10月には従五位下・左衛門尉に叙任されています。

若くして藩主となったため、当初は先々代の藩主である松平近訓が後見を務めました。約7年後から親政を開始し、藩政においては特に教育の振興に力を注ぎました。藩校として「遊焉館」を、さらに医学館として「稽全館」を設け、藩士の子弟の教育環境整備に努めました。

幕府の役職も歴任し、文久元年（1860年）8月には奏者番に就任します。その後、元治元年（1864年）11月には寺社奉行を兼任しましたが、同年12月には一度この兼任を解かれました。慶応元年（1865年）6月には再び寺社奉行を兼任し、同年11月には御用取次役も兼任するなど、幕府内での地位を高めていきました。慶応3年（1867年）7月には若年寄に昇進し、同年9月には会計奉行も兼任、同年12月には国内事務の担当を命じられるなど、幕府の枢要な役職を担うようになります。

激動の幕末にあって、第二次長州征討においては小倉への出兵も行いました。しかし、大政奉還後、国元である府内藩では、勤王派の中心人物であった増沢近篤（先々代藩主・近訓の長男）が藩主代理として藩論をまとめつつありました。幕府の要職にあった近説は、国元の動きにより、孤立する状況に置かれることになります。

慶応4年（1868年）2月、新政府への対応に迫られる中で若年寄を辞任します。同年3月20日には、旧幕府側の大名が新政府への恭順を示す一環として、松平姓から大給姓に改姓しました。同年3月25日には、恭順の意思を示すべく上洛を果たしますが、謹慎を命じられてしまいます。中川久昭らの仲介により謝罪を行い、同年5月13日に謹慎を解かれました。そして、同年7月10日になってようやく帰藩が認められました。

明治維新後の明治2年（1869年）6月、版籍奉還が実施されると、府内藩知事に任じられます。しかし、明治4年（1871年）7月の廃藩置県により、知事職を解かれました。同年10月10日、家督を養子である大給近道に譲り、隠居します。この養子近道は、府内藩士族の増沢近篤の実子であり、8代藩主松平近訓の孫にあたる人物でした。

その後、明治19年（1886年）に死去しました。享年58歳でした。

系譜

父母

実父：松平 定永
養父：松平 近信

正室、継室

正室：松平 乗全 の娘
継室：太田 資師 の娘

養子

大給 近道 - 増沢 近篤 の子

外部リンク

豊後府内藩船之図 - 文化遺産オンライン

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