松田昇 (検察官)

松田昇

松田昇（まつだ のぼる、1933年12月13日 - ）は、日本の検察官であり、元東京地検特捜部部長として知られています。

生い立ちと経歴

北海道函館市出身。北海道函館工業高等学校電気科を卒業後、苦学の末に1957年中央大学法学部を卒業。会社勤務と並行して司法試験に挑戦し続け、1963年に検事任官を果たしました。検事としては、山本清二郎の下で日通事件に関わったほか、ロッキード事件では児玉誉士夫の取り調べを担当しました。特に、1976年7月27日には、東京地検特捜部の事務官らと共に田中角栄邸に赴き、田中角栄を逮捕し、東京地検への同行を求めるという重要な役割を担いました。

1985年には東京高検特別公判部長（政治家被告人のための公判担当）に就任し、1987年8月には東京地検特捜部長、1989年には最高検検事に昇任。その後、1990年に大津地検検事正、1991年に最高検検事、同年には水戸地検検事正を経て、1993年7月に法務省矯正局長に就任しました。1994年7月からは最高検刑事部長を務め、1996年6月に検察官を退官しました。

東京地検特捜部長時代には、リクルート事件の捜査を指揮しました。

預金保険機構理事長

1996年6月には預金保険機構理事長に就任。通常、この役職は日本銀行副総裁が兼務するのが慣例でしたが、バブル崩壊後の金融危機という状況下で、検察出身の松田昇が理事長に指名されました。理事長在任中には、三洋証券、北海道拓殖銀行、山一證券、日本長期信用銀行、日本債券信用銀行などが相次いで経営破綻し、20世紀末から21世紀初頭にかけての戦後最大の金融危機に対応。異例の4期8年という長期にわたり理事長を務めました。

退官後の活動

2004年6月に預金保険機構顧問に就任。同年同月には三菱自動車工業株式会社企業倫理委員会委員長、同年8月には金融庁金融機能強化審査会会長に就任しました。同年9月には弁護士登録を行い、2006年6月には日本無線株式会社取締役、2007年4月には三菱UFJニコス株式会社取締役に就任。

2005年1月には株式会社博報堂社外監査役、2015年6月には株式会社博報堂DYホールディングス社外取締役に就任しました。

2015年11月24日には、読売ジャイアンツ所属選手による野球賭博問題に関する紀律委員会の会合に、球団の特別法律顧問として参加。2016年3月11日には、読売ジャイアンツの臨時株主総会・臨時取締役会にて社外取締役に選任され、球団オーナー代行に就任しました。

エピソード

東京地検検事時代には、前年まで首相を務めていた田中角栄をロッキード事件容疑で逮捕。同僚検事の堀田力らと共に取り調べを担当しました。

ロッキード事件で逮捕した田中角栄を取り調べていた際、トイレで偶然一緒になった際のエピソードが残っています。手を洗った後、田中角栄が濡れた手をティッシュで拭いているのを見た松田は、ハンカチを差し出しました。後日、田中角栄からクリーニングされたハンカチと礼状が届き、検事と被告という立場を超えた人間関係を示すエピソードとして知られています。

信条

「おごらず、気負わず、そしてひるまず」を信条としています。

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