柳澤愼一

柳澤愼一：多才なエンターテイナー、その生涯と足跡

柳澤愼一（やなぎさわ しんいち）は、1932年12月19日に東京で生まれ、2022年3月24日に89歳で亡くなった、昭和・平成期の日本の芸能界を彩った人物です。ジャズ歌手、俳優、声優、福祉活動家など、多岐にわたる分野で才能を発揮しました。

生い立ちと初期の活動

柳澤は、料理研究家・江上トミの息子として生まれました。戦時中は空襲を避けて新潟県長岡市へ疎開。東京都立豊多摩高等学校から青山学院高等部へ転校し、青山学院大学文学部英米文学科を中退しています。高校時代には教会で社会奉仕に目覚め、聖歌隊で歌い始めました。1950年には、戦災孤児や障害者の慰問費用を捻出するため、進駐軍クラブでジャズを歌い始め、これがきっかけで1952年にジャズ歌手としてデビュー。学生歌手第一号として人気を集めました。

ジャズ歌手、俳優、声優としての活躍

1953年から1955年にかけては、日劇に500日間連続出演という記録を打ち立てました。当時は、日劇のドアが閉まらないほどの観客が押し寄せたと言われています。キング、コロムビア、ビクターの3つのレコード会社から誘いを受けましたが、「1社選ぶのは不公平だ」として全て断ったというエピソードも残っています。また、喜劇御三家（エノケン、ロッパ、金語楼）から可愛がられ、特に榎本健一からは後継者として期待されていました。

俳優としては、主演・助演合わせて150本以上の映画に出演。テレビドラマにも数多く出演しました。声優としては、『奥さまは魔女』のダーリン役の吹き替えで知られています。ボブ・ホープ、ジーン・ケリー、ダニー・ケイなど、海外スターの吹き替えも多数担当しました。

結婚と離婚、そして再婚

1957年には女優の池内淳子と結婚しましたが、約3ヶ月で離婚。1960年には、日劇ミュージックホールのヌードダンサーだった瞳はるよと再婚しました。

福祉活動への献身

柳澤は、長年にわたり福祉活動に尽力しました。自らも腰椎と頚椎のヘルニアや股関節脱臼に苦しみながら、障害者支援に情熱を注ぎました。1981年には、国際障害者年にちなみ総理大臣表彰を受けています。福祉活動のために家屋敷を売却したこともあり、その活動は広く知られていませんでした。

晩年と死去

2000年には自伝『明治・大正スクラッチノイズ』を刊行し、健在ぶりを示しました。2010年には、テレビドラマ『無法松の一生』の再放送に際し、明治・大正の時代背景などを解説する「雑学王」として出演し、元気な姿を見せました。2022年3月24日、骨髄異形成症候群のため89歳で死去。その事実は、翌年6月28日に公表されました。

主な出演作品

柳澤愼一は、数多くのテレビドラマ、映画に出演しました。

テレビドラマ

無法松の一生（1964年 - 1965年）
銭形平次
フジ三太郎
からくり儀右衛門（ナレーション）
素浪人 花山大吉
大岡越前
水戸黄門
必殺仕掛人
ご存知金さん捕物帳
鬼平犯科帳
遠山の金さん
はみだし刑事情熱系
BOSS 2ndシーズン

映画

西銀座駅前（1956年）
お転婆三人姉妹 踊る太陽（1957年）
東京のバスガール（1958年）
ひばりの佐渡情話（1962年）
五瓣の椿（1964年）
雪国（1965年）
宇宙大怪獣ギララ（1967年）
メゾン・ド・ヒミコ（2005年）
ザ・マジックアワー（2008年）

吹き替え

柳澤は、数多くの海外映画やテレビドラマの吹き替えを担当しました。ボブ・ホープ、ジーン・ケリー、ダニー・ケイなどの人気スターの声優を務め、そのコミカルな演技で多くのファンを魅了しました。また、海外ドラマ『奥さまは魔女』のダーリン役は、彼の代表的な吹き替え作品として知られています。

多岐にわたる才能と人柄

柳澤愼一は、ジャズ歌手、俳優、声優としてだけでなく、福祉活動家としても社会に貢献しました。その多岐にわたる才能と、洒脱で温かい人柄は、多くの人々に愛されました。彼の功績は、これからも語り継がれていくことでしょう。

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