柴山典

柴山典（しばやま てん）とは

柴山典は、文政5年（1822年）に生まれ、明治17年（1884年）10月11日に没した、幕末から明治初期にかけての地方官です。久留米藩出身であり、初代宮谷県知事を務めました。通称は文平、名ははじめ富典、号は屏山と称しました。

生涯

尊皇攘夷運動から戊辰戦争へ

柴山は、久留米藩の儒者・池尻葛覃の高弟として学び、真木保臣と共に久留米藩の尊皇攘夷運動の中心人物として活動しました。しかし、文久3年（1863年）以降、藩内の内紛により三度にわたる謹慎処分を受けます。戊辰戦争では、東北地方の戦役で活躍し、その後の明治政府において、その能力を認められることになります。

宮谷県知事として

明治元年（1868年）7月、柴山は安房上総監察兼知県事に任じられ、上総国・安房国の天領・旗本領の接収にあたります。その後、同地域を管轄する宮谷県の初代権知事となり、明治4年5月17日には正式な知事に昇進し、従五位に叙せられました。

柴山は「一新確策」を掲げ、水害に苦しむ農民の救済、貯穀法の実施、利根川の治水工事、県学校の開設、祭政一致政策などを推進しました。しかし、これらの政策は、中央集権型の官僚国家を目指す明治政府の方針と対立することになります。特に、柴山ら尊王攘夷運動家系の知事たちの儒学・国学色が強い「仁政」政策は、政府の方針と相容れないものでした。

宮谷騒動と失脚

柴山は、政府の方針に忠実な官吏との対立を深め、県庁内でも対立が生じます。宮谷県では、県令、大参事、小参事、大属という序列があり、大属は柴山と同じ久留米藩出身であったため、柴山から信任を得ていました。しかし、大属は新しい戸長の人選を大小参事に許可を得ずに決定したため、大小参事が上京して民部卿に直接辞表を提出し、庁内は柴山・大属派と参事派に分裂しました。

このため、柴山は知事昇任からわずか2か月後に知事を更迭され、大属を含む他の3人も同時に更迭されました。さらに、翌年には、一連の政策が政府の許可を得ずに行われたものであること、そこに税金を投じた行為が公金横領と専横の罪にあたるとして、官職剥奪と30日の謹慎が命じられました（宮谷騒動）。

その後

その後、罪を許された柴山は、明治8年（1875年）から2年間司法官を務め、明治13年（1880年）には宮内省から東伏見宮家付きとなり、明治15年（1882年）に再度従六位に叙せられました。

柴山の死後、特旨により従五位に復され、その功績が改めて認められました。墓は谷中墓地にあります。

履歴

慶応4年（1868年）
5月12日 - 軍監、上野国派遣（6月27日まで）
7月2日 - 上総房州監察（7月19日まで）兼知県事
明治2年（1869年）
正月晦日 - 徴士・知県事
7月20日 - 宮谷県権知事
明治4年（1871年）
5月17日 - 宮谷県知事
7月27日 - 非職
明治5年（1872年）
11月2日 - 位記返上
明治8年（1875年）
5月9日 - 七等判事
5月12日 - 大阪上等裁判所
明治10年（1877年）
6月28日 - 廃官
明治13年（1880年）
10月1日 - 宮内省御用掛（準奏任）、東伏見宮御附

参考文献

篠原正一『久留米人物誌』（久留米人物誌刊行委員会、1981年）

関連項目

小河一敏：豊後国岡藩出身の初代堺県県知事。柴山と同様の理由で解任された。

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