柵原鉱山

柵原鉱山について

柵原鉱山（やなはらこうざん）は、岡山県久米郡柵原町に位置し、黄鉄鉱を主とする硫化鉄鉱を中心に多様な鉱物が採掘された歴史ある鉱山です。特に、古生代ペルム紀中期に形成された火山性の硫化物鉱床は日本国内で最も規模が大きく、総埋蔵量は3700万トンを超えると推定されています。柵原鉱山の地質学的な特徴、採掘した鉱物の種類、経営の歴史とともに、鉱山の閉山後の利用についても触れていきます。

地質学的特徴

柵原鉱山の硫化鉄鉱は、主に吉井川沿いに分布する柵原本鉱床に集中しています。この鉱床は、最大で厚さ100メートル、幅400メートル、そして長さは2000メートルに達し、1～4つの鉱体が連なっています。特に第一鉱体は540万トン、第二鉱体は310万トン、第三鉱体は780万トン、下部鉱体に至っては1890万トンもの鉱石が埋蔵されていました。近くでは接触変成作用を受けたことも影響し、変成作用が進んで磁土や磁鉄鉱も多く含まれています。

鉱山の歴史

柵原鉱山は、慶長年間に地元で見つけられた褐鉄鉱の露頭を発見したことから始まり、その後明治時代から本格的な採掘がスタートしました。1882年には硫化鉄鉱の採掘を開始し、最初は塗料や緑礬の原料として利用されていましたが、経営状態は厳しくなり、所有者が変わることが続きました。1884年には、地質学者による調査が行われ、柵原本鉱床の開発が本格化し、1900年からは八幡製鉄所向けの褐鉄鉱が送られるようになりました。

1912年には下柵原鉱山と合併し、さらに1915年には藤田組に買収され、経営が行われるようになりました。そこでの採掘技術の向上や、鉱床内の環境整備が進み、順調に鉱山の生産性が向上しました。しかし、1918年の大豪雨では、周囲が冠水し鉱道の排水作業が長引いたため、生産は困難を極めました。

経営と技術の進化

藤田組の経営には、高い品質の鉱石の生産と効率的な輸送手段の確保が新たな課題となりました。特に、1923年に片上鉄道が開通し、その後の鉱石の効率的な輸送に大きく寄与しました。1931年には、柵原鉱山からの鉱石輸送が飛躍的に向上し、輸送力が増大しました。さらに、1936年には硫化鉄鉱の年生産高が最高の50万トンに達しました。

戦後とその後の変化

戦後、柵原鉱山は硫化鉄鉱の需要が多様化し、また化学肥料の原料としての需要が急増しました。しかし、戦争の影響や他競合鉱山の存在によって、1980年代に入ると生産量は減少し、最終的に1991年に閉山されました。

閉山後の地域活性化

柵原鉱山の閉山以降、周辺地域では坑道農業が始まり、温度管理された環境を利用して黄ニラや茸類の栽培が行われています。また、鉱水処理施設も同和鉱業によって稼働し、地域活性化に向けた取り組みが進められています。さらに、坑道を利用したトレーニング施設や見学会も企画され、鉱山の歴史や地域の魅力を発信する場となっています。

柵原鉱山は、単なる鉱山に留まらず、地域社会に多くの影響を与え、その歴史と現代の取り組みがあいまって今もなお語り継がれています。

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