桂小南 (3代目)

三代目 桂 小南（さんだいめ かつら こなん）

1961年10月20日、埼玉県春日部市に山崎徳美として生を受ける。落語芸術協会に所属し、同協会の理事を務める重鎮の一人。出囃子は『野崎』を使用している。

異色の出自と落語家への道

実家は落語界ではなく、紙切り師の家系である。父は当代随一として知られた二代目林家正楽、弟も同じく紙切り師の林家二楽という、まさに紙切り芸のサラブレッドとして育った。弟である二楽師匠の談によれば、本来は長男として父・正楽師匠の後を継ぐべく、幼い頃から紙切りの技を学んでいたという。また、父の指示により、寄席の独特な雰囲気に慣れる目的で頻繁に出入りしていた。しかし、この経験が後の人生を大きく変えることになる。寄席に通ううちに、次第に紙切りよりも落語の魅力に引き込まれていったのだ。父が期待した紙切り師の跡継ぎではなく、自身の心惹かれるままに落語家を目指すという、家族の伝統とは異なる道を選んだ。

芸歴と名前の変遷

落語への強い思いを胸に、1980年4月、二代目桂小南に入門し、前座として「南らく」の名で修行を開始する。約4年間の前座修業を経て、1984年8月には二ツ目に昇進。これを機に名前を「南楽」と改めた。二ツ目として約9年間研鑽を積み、1993年5月には真打に昇進。この時、三代目桂小文治、春風亭柳桜と同時に昇進を果たしている。真打昇進と同時に、名前を「小南治」と改めた。そして、師匠である二代目桂小南の名跡を継承することとなり、2017年9月、「三代目 桂小南」を襲名。この襲名に際しては、定席での披露興行に先立ち、京王プラザホテルにて盛大な襲名披露パーティーが催された。

受賞と人物像

長年の芸に対する評価として、2010年には文化庁が主催する第65回芸術祭において優秀賞を受賞している。これは当時の名前である桂小南治としての受賞である。

人物像としては、落語芸術協会の俳句愛好家が集まる「駄句だく会」のメンバーとして、句作を楽しんでいる一面もある。また、意外な繋がりとして、同じ落語芸術協会に所属する三遊亭五九楽師匠とは、出身地である春日部市立武里小学校時代の同級生であるという。

高座と演目

高座では、主に古典落語を中心に演じる。師匠である二代目桂小南から受け継いだネタが多く、その芸風を継承している。また、上方落語の『鼻ねじ』のような、比較的演じられる機会の少ない珍しいネタにも取り組み、落語の多様性を高座で示している。

著作・メディア作品

作家としても活動しており、2000年にはうなぎ書房より『父ちゃんは2代目紙切り正楽』を上梓した。これは弟である林家二楽師匠との共著であり、紙切り師として名を馳せた父・二代目正楽師匠について綴った一冊である。

自身の高座はCDやDVDとしてもリリースされている。2012年には、第65回芸術祭賞優秀賞受賞を記念して、テイチクエンタテインメントより『桂小南治』が発売され、『そば清』『甲府い』が収録された。また、三代目桂小南襲名を記念したCDもテイチクエンタテインメントから2018年にリリースされており、こちらには『菜刀息子』『ハワイの雪』が収められている。

弟子

落語家として後進の育成にも力を入れており、門下からは桂南楽、桂南馬、桂南海（なんしー）といった二ツ目の弟子が育っている。

紙切り師という特別な家庭環境に育ちながら、自身の意志で落語の道を選び、師匠の名跡を継承した三代目桂小南師匠。落語芸術協会の理事としても協会の運営に関わるなど、多方面で活躍を続けている。

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