桂彦良

桂彦良（けい げんりょう）

桂彦良は、生年不詳ながら、洪武20年12月25日（1388年2月3日）に没した、元末明初の儒学者であり、官僚としても活躍した人物です。名は徳称、字を彦良といい、字をもって広く知られています。本貫は明州慈渓県にありました。

生涯

元の時代には、郷貢から進士となり、平江路学教授を務めましたが、後に罷免され帰郷します。その後、張士誠や方国珍といった有力者から召し出しを受けましたが、官職には就きませんでした。

洪武6年（1373年）、明の洪武帝にその才能を認められ、召し出されます。公車で都に赴き、太子正字に任じられました。洪武11年（1378年）3月には、晋王府右傅に転じ、晋王朱棡の教育係となります。着任後、彼は『格心図』を作成し、晋王に献上しました。洪武13年（1380年）に王府の官制が変更されると、桂彦良は晋王府左長史に転じ、王府の要職を担いました。

洪武15年（1382年）9月には、南京に入朝し、太平治要十二策を上書しました。これは、当時の政治状況を分析し、国家を安定させるための12の提言であり、洪武帝から高く評価されました。洪武18年（1385年）には退官を願い出て故郷に帰り、洪武20年（1388年）12月25日に生涯を閉じました。

没後の崇禎17年（1644年）には、その功績を称えられ、敬裕と追諡されました。

人物・逸話

桂彦良は、その実直さと学識の高さから、洪武帝に深く信頼されていました。

朗誦: 洪武帝が自ら作った詩文を発表した際、桂彦良がその場で朗誦したところ、その声が殿外にまで響き渡り、周囲を驚かせました。洪武帝は彼の朴直さを称賛しました。
教育: 国子生の蔣学らが給事中に、挙人の張唯らが翰林院編修に選ばれた際、桂彦良は宋濂、孔克仁とともに彼らの師を務めました。これは、桂彦良の学識と指導力が朝廷から高く評価されていたことを示しています。
進言: 洪武帝からの諮問には、常に落ち着いて対応し、的確な答えを返していました。その発言は常に正しいとされ、洪武帝は彼の言葉を書き記して便殿に掲示したほどでした。
冬至の祝文: 洪武7年（1374年）の冬至、詞臣が南郊の祝文を撰述した際に、「予」と「我」の字を用いたことがありました。洪武帝はこれを不敬とみなしましたが、桂彦良は「殷の成湯が上帝を祭る時に『予小子履』といい、周の武王が文王を祀る詩に『我将我享』とある。古来よりその例がある」と述べました。洪武帝はこれを聞き、「正字の言は正しい」と認め、御史台の獄にあった詞臣たちを再審させ、桂彦良の意見によって数十人が釈放されました。
江南の大儒: 桂彦良が晋王府へ赴任する際、洪武帝は自ら作った文章を彼に与えました。桂彦良が謝意を述べると、洪武帝は「江南の大儒は、卿ただ一人だ」と言いました。桂彦良は宋濂や劉基には及ばないと謙遜しましたが、洪武帝は「宋濂は文人であるだけだ。劉基は性格が厳しく狭量であり、卿には及ばない」と桂彦良を高く評価しました。
太平十二策: 桂彦良が太平十二策を上書した際、洪武帝は「彦良の述べるところは、時局に通じており、統治に裨益がある。世に言う儒者は古代に拘泥して今に通じていないが、彦良のような者は通儒というべきだ」と評しました。

これらの逸話から、桂彦良が単なる学者ではなく、時代を見据え、現実的な視点を持った人物であったことがわかります。彼の進言は、しばしば政治に良い影響を与え、多くの人々を救済しました。

参考文献

* 『明史』巻137 列伝第25

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