桂氏

桂氏について

桂氏（かつらし）は、日本の歴史に登場する複数の氏族です。大きく分けて、大江姓桂氏、島津流桂氏、児玉党桂氏の三つが存在します。本稿では、特に歴史に名を残す大江姓桂氏と島津流桂氏について詳しく解説します。

大江姓桂氏

大江姓桂氏は、毛利氏の重臣として知られる一族です。その出自は、毛利氏の分家である坂氏に遡ります。室町時代、毛利氏が内紛で弱体化する中、坂氏は福原氏とともに毛利氏を支えました。しかし、毛利氏の勢力が回復すると、坂氏は次第に毛利氏と対立するようになります。

戦国時代初期、坂広明の子である広澄は、嫡男でありながら桂村に分家し、桂氏を興しました。広澄は毛利氏に忠実に仕えましたが、坂氏本家が尼子氏と通じて謀反を企てた事件に連座し、責任を取って自害しました。しかし、広澄は無実であったため、一族に累が及ぶことはなく、桂氏は存続を許されました。

広澄の子、元澄は毛利元就に信任され、安芸国西部の要衝である桜尾城を任されるなど、宿老として活躍しました。また、元澄の弟である元忠は五奉行を務め、桂氏は毛利氏の重臣として代々仕えました。長州藩が成立すると、桂一族は寄組2家、大組14家と繁栄を極めます。長府藩の毛利元義の家老にも「桂縫殿」の名が見られます。

幕末・明治時代には、桂小五郎（木戸孝允）や桂太郎といった著名な人物を輩出しています。特に桂太郎は、明治後期から大正初期にかけて内閣総理大臣を長く務め、子爵から公爵まで陞爵しました。

大江姓桂氏の系図

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毛利親衡
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坂匡時　 毛利元春
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匡家(匡時と同一人物?)
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　広秋　　　貞景
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　広明　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　広時　　光永秀時　志道元良
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桂広澄 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　広秀　　　元方　　　広良　　　　　口羽通良
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　元澄　　　　　　　　　　　　　　　　　　　元忠　就延　保和　元貞　元祐　　　　　広長 　坂元貞 広通　春良
　 ┣━━┳━━┳━━┳━━┳━━┓　　　　　｜　　　　　　　　　　　　　　　　　　┣━━━┓　　　　
　元延　元貞　元親　景信　広繁　元盛　　　　就宣　　　　　　　　　　　　　　　　　元保　　良泰
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　元重　　　　就宣　　　　鎮繁　繁次　包政　元綱　　　　　　　　　　　　　　　　　元規　椙杜元縁
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　元相　　　　　　　　　　包忠　　　　　　　元忠　　　　
　 　　　　　　　　　　　　┃　　　　　　　　┣━━┳━━┓
　　　　　　　　　　　　　直澄 　　　　　　 就正　隆正　就忠
　 　　　　　　　　　　　　┃　　　　　　　　　　　┃　　｜
　　　　　　　　　　　　　直繁 　　　　　　　　　 賢恒　広利
　 　　　　　　　　　　　　┃　　　　　　　　　　　　　　┃
　　　　　　　　　　　　　直良 　　　　　　　　　　　　 元堅
　 　　　　　　　　　　　　┃
　　　　　　　　　　　　　繁世
　 　　　　　　　　　　　　┃
　　　　　　　　　　　　　信繁
　　　　　　　　　　　　　 ┃
　　　　　　　　　　　　　清澄（太郎）

島津流桂氏

島津流桂氏は、島津氏の分家です。島津忠国の四男である勝久が、日向国志布志の月野を領有したことに始まります。「月」の異称が「桂」であることから、月野にちなんで勝久の曾孫である忠俊が、永禄2年（1559年）に島津姓を改め、桂姓を名乗り始めました。

島津氏家臣として仕え、江戸時代に薩摩藩が成立すると、薩摩藩士として活動しました。桂宗家は一所持とされ、5代忠詮の子である忠増の系統は「外記家」として寄合衆、宗家と外記家以外の系統は小番家の家格とされました。

藩主の島津家久や島津光久の子が養子となったことで、島津流桂氏は直別支流とされました。そのため、士分以下の者や他家の奉公人は桂姓を名乗ることを許されず、もし名乗っていた場合は改姓を命じられました。また、偏諱については、正徳年間以降、宗家と外記家の嫡男は「久」の字、それ以外は「勝」の字を使用することとされました。

島津流桂氏の歴代当主

1. 島津勝久（島津忠国の四男）
2. 島津忠次
3. 島津忠利
4. 桂忠俊（この代より桂を号する。）
5. 桂忠詮（1558年 - 1587年、別名は忠昉）
6. 桂忠次（1578年 - 1598年、忠治とも）
7. 桂忠秀（1582年 - 1646年、忠詮の次男。兄の跡を継ぐ）
8. 桂忠能（1602年 - 1627年、別名は久盛）
9. 桂忠心（養子、島津忠恒の十二男。別名は忠知。後に日置島津家を継ぎ島津忠朝と称す）
10. 桂忠康（1645年 - 1664年、養子、島津忠弘の子）
11. 桂久澄（養子、島津久良の子）
12. 桂久祐（養子、島津光久の十四男）

島津流桂氏の略系図

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[島津忠国]
　 ┃
　勝久
　 ┃
　忠次
　┃
忠利
　┃
忠俊
　┃
忠詮
　┣━━━┓
忠次　　忠秀
　　　　 ┃
　　　忠能
　　　┃
　　　忠心
　　　 ┃
　　　忠康
　　　 ┃
　　　久澄
　　　 ┃
　　　久祐

まとめ

桂氏は、異なる系統を持つ複数の氏族が存在するものの、特に大江姓桂氏と島津流桂氏が歴史的に重要な役割を果たしました。大江姓桂氏は毛利氏の重臣として、島津流桂氏は薩摩藩士として、それぞれの地でその名を刻みました。両氏族ともに、幕末・明治維新期に重要な人物を輩出し、日本の近代化に貢献したことは特筆すべき点でしょう。

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