島津忠国

島津忠国：室町時代の激動を生き抜いた武将

島津忠国（しまづ ただくに）は、室町時代に活躍した武将であり、守護大名です。島津氏の第9代当主として、薩摩、大隅、日向の三国を治めました。彼の生涯は、島津氏の勢力拡大と、それに伴う内紛や国衆との戦いに彩られています。

生い立ちと家督相続

応永10年（1403年）、忠国は日向国穆佐院高城（現在の宮崎県）で誕生しました。幼名は虎寿丸、初めは貴久と名乗りました。父は島津氏第8代当主の島津久豊、母は伊東祐安の娘です。応永32年（1425年）に父が亡くなると、22歳で家督を継承し、島津氏の当主となりました。

島津氏統一への道

家督を継いだ忠国は、まず島津氏の統一に乗り出します。応永34年（1427年）には、日向の伊東祐立と和睦し、永享2年（1430年）には総州家の島津久林を討ち取り、島津氏の統一を成し遂げました。これにより、忠国は島津氏の勢力を拡大させ、守護大名としての地位を確立しました。

国一揆と兄弟の内紛

しかし、忠国の治世は決して平穏ではありませんでした。永享4年（1432年）には、伊東祐立との和睦が破綻し、再び日向に侵攻。その最中、領国内では渋谷氏や伊集院氏といった国衆を中心とした国一揆が発生し、領国支配は危機に瀕しました。一揆の鎮圧のため、弟の島津持久（用久）を守護代に任じますが、これが後に兄弟間の争いの火種となります。

近年の研究では、この国一揆の際に忠国が一時的に隠居し、持久に家督を譲ったという説も提唱されています。一揆鎮圧に失敗した忠国が隠居し、持久が家督を継いだものの、忠国が家督復帰を望み、実子に家督を譲ろうとしたことが、兄弟間の内紛につながったとされています。

永享7年（1435年）頃には、樺山孝久、北郷知久、新納忠臣らが忠国を擁して一揆を結成し、これに対抗して伊作教久や山田忠尚らが持久を支持する一揆を結成し、対立は激化しました。

幕府の介入と和睦

忠国と持久の争いは、将軍足利義教の弟である大覚寺義昭が幕府に反抗し、島津氏に匿われた事件をきっかけに、幕府の介入を招きます。嘉吉元年（1441年）に幕府は忠国に持久討伐を命じ、忠国は再び挙兵します。しかし、家中の実力者である樺山孝久が裏切り、忠国は持久派からの総攻撃を受けることになります。幕府は再度持久討伐の御教書を発給するも、新納忠臣らの奔走により樺山孝久が復帰し、文安5年（1448年）には、忠国が持久を薩摩国谷山に追い詰めました。この状況を憂慮した新納忠臣らの仲介により、両者は和睦し、家督は再び忠国に戻りました。和解後、持久には分家として薩州家を立てさせました。

強権政治と追放

和睦後、忠国は次第に家中に対して強権的な態度を取るようになり、かつて自身を支持した重臣や国衆との対立を深めます。長禄2年（1458年）には、再び忠国排斥の動きが高まり、長禄3年（1459年）には嫡男の島津立久と新納忠治、樺山長久らによって事実上のクーデターが起こり、忠国は薩摩南部の加世田に追放され、蟄居を余儀なくされます。これにより、忠国は当主の座を追われることになりました。

晩年と死

時期は不明ですが、忠国は琉球王に「太平書」を送り、琉球からは返礼として緞子が贈られました。文明2年（1470年）に忠国は68歳で亡くなりました。その墓は、鹿児島市の福昌寺と南さつま市の坊津にあります。死後、家督は立久が継ぎ、3ヶ国の守護となりました。

忠国は、島津氏の勢力拡大に大きく貢献しましたが、その治世は内紛や国衆との戦いに明け暮れ、晩年は家督を奪われるという、波乱に満ちた生涯でした。しかし、彼の時代に島津氏の基礎が築かれたことは間違いありません。

子孫

忠国には多くの子がおり、その子孫は島津氏の各家を形成しました。長男の島津友久は相州家、三男の島津久逸は伊作氏、四男の島津勝久は常州家、五男の島津忠経は予州家、七男の島津忠弘は摂州家の祖となりました。このうち、友久の孫である島津忠良が相州家と伊作氏を兼ね、その系統が近世の島津氏へと繋がっていきます。

まとめ

島津忠国は、室町時代の激動期を生き抜いた武将であり、島津氏の勢力拡大に大きく貢献しました。彼の生涯は、島津氏の隆盛と、それに伴う内紛や対立といった、戦国時代への移行期における地方豪族の姿を象徴的に表しています。

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