寄合衆

寄合衆（よりあいしゅう）とは

寄合衆とは、武家社会における合議組織である寄合の構成員を指しますが、特に鎌倉幕府においては、北条氏得宗を中心とした少人数による最高意思決定機関としての役割を担いました。この組織は、単なる合議体にとどまらず、幕府政治の中枢として重要な役割を果たしました。

寄合衆の成立と変遷

寄合衆の起源は、北条経時時代に遡るとされています。『吾妻鏡』には、北条氏得宗による私的な会議「深秘御沙汰」が記されており、これが寄合衆の原型と考えられています。宮騒動、宝治合戦、元寇といった政治的緊張が高まる中で、得宗専制体制が確立し、寄合が持つ政治的意味は次第に重みを増していきました。

寛元年間には、北条時頼のもとで、北条政村、金沢実時、安達義景、三浦泰村などが寄合を構成していました。その後、宝治合戦を経て、構成員は北条政村、金沢実時、安達泰盛、諏訪盛重らに変わります。元寇期には、北条時宗のもとで安達泰盛、太田康有、佐藤業連、諏訪盛経、平頼綱などが寄合を構成しました。このように、時代ごとに構成員は変化しましたが、常に幕府の重鎮たちが集まり、重要な決定に関わっていたことがわかります。

弘安7年（1284年）に北条貞時が14歳で得宗家の家督を継ぐと、若年の貞時に代わり、連署の普恩寺業時、外戚の安達泰盛、内管領の平頼綱らが中心となって政治を進めました。この頃から「寄合衆」という名称が使われるようになり、弘安8年の霜月騒動で安達泰盛が討たれると、平頼綱が権勢を振るうようになります。正応2年（1289年）には、北条時村が寄合衆に「補任」されたとする記事が『鎌倉年代記』に残されており、寄合が幕府の公的機関として確立し、それまで最高決定機関であった評定衆よりも権威を持つようになったことがわかります。

延慶2年（1309年）に評定衆から寄合衆に転じた金沢貞顕は、「面目の至り、申す計りなく候」という書状を記しており、寄合衆が幕府内でいかに重要な地位を占めていたかが窺えます。

寄合衆の構成員

寄合衆は、北条氏一門だけでなく、大江広元を祖とする長井氏（大江氏）、幕府政所・問注所の世襲高級官僚である二階堂氏（政所執事を世襲）、太田氏（三善氏、問注所執事を世襲）なども構成員に名を連ねており、彼らも幕府政治に一定の影響力を持ち続けました。これらの家系は、鎌倉幕府の滅亡までその影響力を保ち続けました。

寄合衆による政治運営

嘉元2年（1304年）の嘉元の乱以降、北条貞時が政務を放棄すると、幕府は寄合衆の合議制で運営されるようになり、得宗の地位は形式的なものとなっていきました。貞時の息子である北条高時が得宗となると、幕府は寄合衆の長崎円喜や安達時顕らによって運営され、高時自身は象徴的な存在に過ぎなくなりました。このように、末期の鎌倉幕府では、得宗家の当主すら形骸化し、特権的な支配層である寄合衆が政治を主導するようになりました。そして、元弘の乱で幕府が滅亡するまで、寄合衆による政治運営が続いたのです。

鎌倉幕府滅亡後の寄合衆

鎌倉幕府が滅亡した後も、武家の当主を中心とした寄合の構成員を「寄合衆」と呼ぶ例が見られます。南北朝時代には、菊地武重が記した「寄合衆内談の事」という起請文が存在しており、この時期にも寄合という組織が存在していたことがわかります。

江戸幕府における寄合衆

なお、江戸幕府にも「寄合衆」という言葉がありますが、これは3000石以上の旗本のうち無役の者を指す「寄合席」の集団を意味するもので、鎌倉幕府の寄合衆のような合議体としての職掌はありませんでした。

まとめ

鎌倉幕府における寄合衆は、北条氏得宗を中心とした幕府の最高意思決定機関であり、その成立から滅亡まで、幕府政治において非常に重要な役割を果たしました。特に幕府末期には、得宗に代わって政治を主導し、幕府の運営を担いました。寄合衆の存在は、鎌倉幕府の政治構造を理解する上で欠かせない要素であると言えるでしょう。

参考文献

川添昭二「寄合衆」（『国史大辞典 14』吉川弘文館、1993年）
山家浩樹「寄合衆」（『日本史大事典 6』平凡社、1994年）
細川重男「鎌倉幕府の滅亡」（吉川弘文館、2011年）

関連項目

交代寄合

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