桓振

桓振（かん しん）

桓振（生没年不詳）は、東晋末期の軍人であり、字は道全。譙国竜亢県（現在の安徽省一帯）の出身です。父は東晋の冠軍将軍であった桓石虔であり、桓楚の指導者として知られています。

生涯

桓振は、その武勇をもって東晋に仕えましたが、隆安4年（400年）には揚武将軍・淮南郡太守に任じられ、後に江夏相へと転じました。しかし、その凶暴な振る舞いが問題視され、官を解かれてしまいます。

元興3年（404年）4月、輔国将軍に任じられた桓振は、義陽から兵を率いて弋陽へと進軍しますが、龍驤将軍胡譁に敗れ、単騎で江陵へと退却しました。

桓楚皇帝であった桓玄が敗走した後の5月、桓振は華容浦に身を隠していました。巴陵を守っていた将軍、王稚徽が桓振に使者を送り、桓楚勢力の復権の可能性を伝えると、桓振は大いに喜び、数十人を集めて江陵を襲撃します。江陵に至るまでに兵は2百人に膨れ上がりました。叔父である桓謙も兵を集めて呼応し、江陵を攻略、荊州別駕王康産、南郡太守王騰之を殺害しました。

行宮で東晋の皇帝、司馬徳宗を見つけた桓振は、桓玄の子である桓昇の所在を問い詰めます。桓昇の死を知ると激怒し、司馬徳宗に対し、「臣らが国家のために働いたのに、これを滅ぼそうと言うのか」と詰め寄りました。琅邪王司馬徳文が弁明するも、怒りが収まらない桓振は司馬徳宗を殺害しようとしましたが、桓謙に制止されました。その後、桓玄の喪を行い、武悼皇帝と諡を送りました。

鎮西将軍・都督八州諸軍事・荊州刺史に任じられた桓振は、司馬徳宗の左右に腹心を配置し、実権を掌握しました。

桓謙は敵軍を江陵近くに誘引して戦うことを進言しましたが、桓振は普段から桓謙を軽んじていたため、この策を採用しませんでした。

鎮東将軍馮該と共に霊渓で何無忌らを破り、千余を討ち取るという戦果を挙げましたが、何無忌らは尋陽に退却しました。桓振は桓秘の子である桓蔚を雍州刺史に任じ、襄陽に鎮守させました。

巴東郡太守柳約之が桓振のもとに降伏しましたが、これは偽りであり、隙を見て桓振を襲撃しようと企てていました。しかし、計画が露見し、桓振は柳約之を殺害しました。

12月には桓放之を益州刺史に任じ、西陵に駐屯させましたが、桓放之は涪陵郡太守文処茂に敗れ、江陵に退却しました。

義熙元年（405年）1月、司馬徳宗を伴い、江津に駐屯した桓振は、冠軍将軍劉毅に使いを送り、江州・荊州の領有を交換条件として、司馬徳宗の返還を提案しますが、劉毅はこれに応じませんでした。

桓謙と馮該に江陵の留守を任せ、侵攻してきた南郡太守魯宗之を紀南で迎撃し、これを打ち破りました。敗走した魯宗之を追撃する途中、単騎で逃げる魯宗之に出くわしましたが、桓振は彼が魯宗之であることに気づかず、行き先を尋ねました。魯宗之は適当な方向を指し示し、難を逃れました。江陵が陥落したことを知ると、兵は逃散し、桓振は溳川へと逃走しました。

3月、桓振は鄖城を出て江陵を攻撃し、荊州刺史司馬休之を破り、襄陽へ敗走させました。桓振は自ら荊州刺史を称しましたが、建威将軍劉懐粛が雲杜から兵を率いて桓振と沙橋で戦い、劉毅が広武将軍唐興を援軍に向かわせたことで、桓振は輔国将軍桓珍と共に討ち取られ、江陵は再び攻略されました。

人物・逸話

桓振は、果断で気性が荒く、品行が悪かったと伝えられています。

Hvan玄は桓振の粗暴さを嫌い、重用しませんでした。桓振は後に「公（桓玄）は我を用いなかった。その結果が此度の敗戦である。我を前鋒に用いていれば、天下を定めることもできた」と嘆いたとされています。

酒食に溺れ、自分勝手に誅殺を行ったり、各所で暴虐無道な行為を繰り返したとされています。

桓振が淮南にいたとき、夜に寝台で寝ていると声が聞こえるという奇妙な出来事が起こりました。桓振がその声のする方へ向かい、火で照らして見ると、そこには夥しいほどの血溜まりがあったと伝えられています。

家系

父: 桓石虔
兄弟: 桓洪、桓誕
* 妹: 桓氏

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